第4章 宗教とアニメの親和性
特定のアニメ作品群と特定宗派を比較してきたが、
そもそもアニメ(漫画)と宗教は紙一重である。
宗教における布教と弾圧同様にアニメにも布教と弾圧の歴史があった。
戦後、手塚治虫を筆頭に漫画文化が花開き、
テレビ放送の開始に伴いそれはTVアニメという形でお茶の間に広がっていった。
娯楽が少ない時代、週刊漫画誌やTVアニメの子どもに与える影響力は
現在とは比べ物にもならないほどに大きいものだった。
それ以前は「黄金バット」などの紙芝居がその地位におり、
占領中のGHQがわざわざ検閲するほどであったが、
週刊誌やテレビ放送の情報拡散力はそれを遥かに上回る
こうした中で子供への悪影響に懸念を持ったPTAなどを中心に
50年代半ばから悪書追放運動が行われ、
それはまさに魔女狩り、宗教弾圧の如く校庭で焚書されることもあった。
残酷描写の多い劇画作品のみならず、「鉄腕アトム」でさえ焚書の対象になった。
今の価値観で見ると過剰に思える漫画バッシングだが、
手塚治虫の「鉄腕アトム」はASIMOなどロボット工学や戦後の科学立国に、
白土三平の「サスケ」や「カムイ伝」は学生運動に影響を与えたように
良し悪しに関わらず、戦後日本に強い影響を与えた事は歴史的事実である。
漫画は子供の読み物と言われていたが、
戦後漫画を読んで育った団塊世代の子供たちは、
「右手にジャーナル、左手にマガジン」と呼ばれるように大学生になっても漫画を手放さなくなった。
よど号ハイジャック事件の実行犯は「我々は明日のジョーである」という声明を出した。
その後学生運動は沈静化し、漫画は70年代には生まれた時からあるごく有り触れた存在となった。
そうした環境下で育った子供たちは漫画を自己表現のツールとして使い、
コミケなどで交流を行うオタク文化が花開く一方で
80年代には連続少女誘拐殺人事件の宮崎勤、
90年代には数々のオウム事件を起こした麻原彰晃など
オタク的趣味を持った人物が歴史的事件を引き起こし続けた事もあり、
国や地方自治体において潜在的な漫画アニメ批判が存在する。
00年代には小林よしのりが「戦争論」など、
漫画で政治批評を行いネット右翼を生むなど漫画の影響力は衰えていない。
出版全般の売り上げが落ち込んでいるとはいえ、
発行部数によると三冊に一冊は漫画という漫画大国である。
こうした漫画アニメの特性を利用してきたのが新興宗教である。
終末論を描いた角川アニメ映画「幻魔大戦」の成功から、
オウム真理教はわざわざアニメ制作会社を作って勧誘ビデオを制作し、
幸福の科学も20年以上も前から劇場アニメを約三年おきに作っている。
アニメにすることで教義を抽象化し
単なる説法よりも遥かに啓蒙に使える事を理解したのだろう。
このように宗教と漫画アニメの親和性は非常に高いと言える。
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