第3話 虎姫と元春と幻を作った過ち 上
僕は
今は最近何かとつるむようになったクラスメイトの
なんでも、彼女おすすめの店があるらしい。
これはもしかして、デートでは。
「元春~!」
あらぬ妄想でにやけそうになるところを彼女の呼び声で止まる。
「待たせたか?」
彼女は息を切らしながら言う。
僕はスマホで時間を確認する。
集合時間ちょっきしだ。
「全然、大丈夫だよ」
「そか! なら、早速行くで!」
僕は手を引っ張られ、街中を歩いて行った。
◇ ◇
「ここや!」
彼女が足を止めるとそこは少し古めかしいお店。
ウミガメレストランというのがお店の名前のようだ。
しかし、見た目からはレストランらしさが全くない。
「はよ入り!」
僕が外装を見ている間に彼女はさっさと店内に入っていってしまった。
僕も続けて入った。
『いらっしゃいませ』
店に入ると少し髭を生やしたバーのマスターと思しき人が出迎えてくれる。
内装は彼のイメージをより強くするものになっている。
ここってレストランなのか、というのが率直な感想だ。
「店長さん、どうも~! 予約してたもんや!」
虎姫さんは通いなれているのか、普通に接している。
『虎姫様と柏井様ですね、準備はできております』
「え?」
予約なんてした覚えはない。
虎姫さんがしてくれたのだろうか。
「虎姫さん、ここって……」
「あっ、説明すんの忘れてたは!」
彼女はうっかり、といった表情を見せる。
そして、大まかな説明を聞かされた。
「なるほど、僕が好きそうだから誘ってくれたわけだ」
「せや! 元春なら気に入ってくれると思てな!」
僕はミステリー好きであることを覚えていてくれたことに正直驚く。
彼女がみんなから好かれる理由が分かった気がする。
「ほな、早速始めよか!」
「うん!」
店長さんは一度頷き、何処から取り出したかわからないノートを開いて、読み上げた。
◇ ◇
『彼は自分を信じ、決断した。そして、彼は歴史に名を遺した。だが、同時に多くの敵を作ってしまったのだ。彼のしたこととは?』
◇ ◇
僕と虎姫さんは思案した。
「なあ、どういうことやと思う?」
「歴史に名を遺したけど敵を多く作った、つまり彼は悪役ってことになるのかな?」
「そうやろなぁ」
歴史、敵、この二つのワードはキーだろう。
まずは歴史から紐解いていくべきだろう。
「とりあえず僕から。これは実際の話ですか?」
僕は歴史となると史実から持ってきたのではないかと考えた。
『はい。実際にあったことです』
「おお!」
早速大きな情報を掴めて虎姫さんは驚く。
僕もあっさり有力情報がでてよかったと一安心。
でも、ここからが本番。
歴史上に悪人など腐るほどいる。
その中から一人を探すなどしらみつぶしでは今日では終わらないだろう。
さらに絞らなければ。
「この話は日本での話ですか?」
『いいえ』
こうなると日本史はではない。
だが、世界史は僕の専門外の科目だ。
虎姫さんも僕が知る限り野球以外はパッとしない。
どう乗り越えようものか。
「彼は当時、国民から嫌われていましたか?」
『……はいであり、いいえと言えるでしょう』
これは重要そうな
独裁者とかをよそうしていたけど、そうでもないのかもしれない。
でも、今の情報量じゃ無理そうだ。
仕方ない、他ので攻めよう。
「当時、銃器はありましたか?」
『はい、存在していました』
これで、日本の戦国時代くらいから先の話に絞れた。
「彼は武力を行使しましたか?」
『いいえ』
軍人ではないということになるのかな。
少しずつだけど縮まってる。
「彼は白人でしたか?」
『はい』
となると黒人を奴隷にしていたヨーロッパが怪しくなるな。
「ちょいちょい」
「ん?」
僕は指で突かれるのを感じ、横を向くと退屈そうにしている虎姫さんが。
あまりに熱中して気が向いてなかった。
「ウチにも少しやらしてーや」
ムッとした表情が否定を許さない。
「そ、そうだね! 僕も疲れてきたし休憩するよ!」
僕は既に置かれていたガラスのコップに冷えた水を灌ぐ。
一度頭を冷やすという意味を込めて飲む。
ひんやりとした涼しさが喉を駆け抜けていくのを感じる。
「よっしゃ! ウチにまかしときぃ!」
彼女は服の袖をまくる。
やる気に満ち溢れている顔だ。
「店長さん、これは野球に関係ありますか?」
「ちょっ!?」
僕はあまりにも突拍子のない質問に突っ込まずにいられなかった。
その場で立ち上がり、問い詰める。
「なんで野球っていうワードが出てくるの!?」
「いや、ウチと言ったら野球やろ?」
「今はそれとこれとは関係ないでしょ!」
「でもなぁ、野球も〈球史〉という名の歴史があんねん。もしかしたらそのことかもしれんやないか」
「いやいや! そんなことあるわけないでしょ!」
僕はオーバーに手を振って否定する。
言い過ぎたのか、虎姫さんは少ししょげてしまったのが顔で分かる。
しかし、彼女の顔はすぐに戻ることになる。
彼は答えた。
『はい』
と。
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