新暦40年9月23日

サク。やっぱりソフィーは嘘をついていた。どうも僕は無事に僕と君の仇討ちを果たすことができたらしい。いや、正確には無事に、ではないか。とにかくそんな大事なニュースを隠していたなんていくら友達だと言っても酷いことだと思わないか?確かに僕の方にも少しくらい非はあるかもしれない。だから、二人で約束をした。彼女は僕に嘘をついたり、僕が望まぬ酷いことを決してしない。僕は、今よりもう少しだけ、僕の命を大事にする。

僕の命。僕の命はなんだと思うかい、サク。もしもNEにさえも命なんてものが本当にあるとして、それが僕や君みたいなものに宿るとしたら。僕を生きる僕の命はこれで三つ目だ。あの世には二つの僕の命がある計算になる。なんともおかしな話だ。普通の人は一人一つ。それはソフィーだって根は変わらないはずだ。いや、彼女も二つあることになる、か。やっぱりおかしな話だ。NE。僕らNEは人の理に背いている。それこそが人が偽神ぎしんたる証だと言われるかもしれないが、おかしなものはおかしい。もしも僕が真実死ぬ時が来たら、あの世は僕を受け入れてくれるだろうか。それとも、僕の分はもう満杯だと言って断るだろうか。断るとして、今の僕は果たして本当に白雪文成ぼくなのだろうか、仮定の話にしか過ぎないから終わりにしよう。

ところで、全く話が全く変わるのだけれど、僕は今度引っ越すことになった。今よりも君の近くになる。僕は探偵をやることに決めてね。そのための家に引っ越すのさ。未来視を人のために役立てるには、探偵はうってつけの仕事だと思ったんだ。引っ越してからも君のところには来るようにするよ。仕事が忙しい時にはそうもいかないかもしれないけれど。

ああそうだ。早速探偵として引き受けた困ったニュースがあってね。残雪派の用心棒の一人、名前をコニー=Bと言うらしいんだが、このコニーがこの前の義体メンテ以来消息不明だって言うんだ。更には時期を同じくして、残雪派ばかり狙った空き巣事件まで頻発しているときた。犯人の目星は立っていない。少し興味が出てきただろうか?

よし、じゃあ明日は引越しで来れないだろうから、明後日。また来るよ。それじゃあね。

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