俺と赤点と神崎さん
何イベントと言ったものは無く、普段通り毎日が過ぎていった結果、夏休み前の一週間になってしまった。
考査期間も終わり、答案用紙を返却されてクラスの中は阿鼻叫喚で包まれていた。
俺はその騒いでいるところから少し離れた場所で、赤色のペンで書かれている数字の結果に目を落としていた。
結果は英語と数学が赤点だった。
夏休みは補習確定のよう。
想像していた夏休みとは一味違う感じで過ごせそうだとしみじみしていたところに、神崎が近寄ってくる。
「ねぇねぇ、瀬良君はどうだった? やっぱ全部赤点?」
「それは馬鹿にしすぎだろ」
かなり神崎も素直……というか、慣れてきたみたいで最近は俺にあたりがいい。
「俺はそんなに頭なんてよくもないし、英語と数学が赤点だけど」
「ふーん。赤点あるのかぁ。せっかく夏休み……ねぇ」
「最近の神崎、俺にあたりいいよな。心境でも変わったのか」
「べ、別に? 何もないけど?」
目線を横に逸らし、あからさまに何かあったと言っているような行動をしていた。
「俺に何があったとか関係が無いから、深く突っ込むつもりは無いが」
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「ところでさ」
そう言って机の上に腰を掛ける。
短いスカートから白い太ももが覗く。目の前にくるものだから思わず目を逸らしてしまう。
「おまえ……一体何があったんだ? つか、本当に神崎なのか……」
「……全く関係ないけど放課後って時間ある? ちょっと聞いてほしいことがあって」
「まあ、今日は特に用事無いからいいけど」
「放課後、よろしくね? 忘れたら承知しないから」
「分かってるって。何度も言わせるな……何度も言ってないが」
口約束をしてしまった。
そもそも帰ったところで赤点のテストを抱えて後悔しながらダラダラするだけだ。
机から離れていく後ろ姿を目で追うと、いつも喋っている仲のいいグループへと入っていった。
「ほんと何なんだ」
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