番外編(使う必要が無くなったけど、ちょっとした短編集)

手を引く神崎さん(仮)

「ねぇ、ちょっといい?」

「俺はな、暇ではないんだ。お前を相手するからな」

「要するに暇ってことね。こっち来なさい」


 返事をする間もなく、勝手に手を引っ張られてこの場を離れる。

 その手の小ささに驚くこともない。少し前……とは言っても、数週間前のことだ。ここで話すことの内容でもないし、誰に対して話すんだとは思う。

 この前にいる神崎に対して話すとなったら、絶対に暴力を振うに決まっている。


「……で、どこに行くつもりなんだ。もう日が暮れるぞ。屋上でも行って天体観測でもするのか?」

「うるさいから黙ってて」


 神崎は手に力を込めて、手のひらを握ってくる。


「い、痛いって。まず、引っ張んな」

「だったら、ちゃんと歩いてよね」

「りょーかい」


 俺は、体勢を正して隣を歩く。


「神崎、お前……」

「何よ」

「小さいな」


 隣を歩くとなると、身長がはっきりと分かる。今までそういう事が無かった。

 あったとしても、どっちかが座っているか、立っているかのどちらかだ。


 神崎は黙ったまま、見上げてくる。

 その可愛らしい顔立ちと綺麗な瞳に吸い込まれそうになってしまうほどに。


「……変態」

「いや、待て。意味が分からん」

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