3.ちょっと変わった神崎さん

 かといって、人の手を使ってでも聞きたいというわけでもないし、それこそ、自分でやれば達成感見たいものがあるのではないのかと。

 俺自身でも何を思っているのか分からないぐらい混乱している。


「「……瀬良君。そういうの、他の女の子には絶対にやらないでね……」か。……考えれば考えるほど分からなくなってくるんだけど……」

「お困りみたいだね。瀬良君」

「おぉ、神崎か。特に悩みなんてないぞ」

「ほぉほぉ、これは頑なに教えてくれないね?」


 なぜかは知らないが、キャラが定まってないような気がしてならない。が、そこは気にすべきところではない。

 という事。これは、俺にとっての一大事件と言っても過言ではないんじゃないのかと思うところ。


「ところでさ、さっきはなんで彩香と喋ってたの? どんな話? どんな内容? ねぇ!」

「見てたんじゃねぇか」

「見てないもん」

「なんも話してない。というか、そんなことどうでもいいだろ」

「私にとってはどうでもよくないの!」


 身を乗り出して、ずいずいと迫ってくる。

 当然、俺は避けるに決まっている。椅子の後ろ足で立つようにして。

 判断としてはそれが正しかった。


 しかし、神崎は手の位置が悪かったみたいで、机から手を滑らし、腹を打つ。


「ゔっ……」


 手が落ちた先は俺の膝だった。俺が椅子の後ろ足で立つようにしていた体勢が仇となる。

 勢いよく起き上がる神崎の額と俺の顎が勢いよくぶつかり合い、声を漏らす。


「あいだっ! っっっっっ~~~~~!」


 神崎にしては珍しく、可愛らしい仕草で痛そうに額を両手で押さえていた。


「保健室にでも行って、手当してもらえよ?」

「う、うん……」


>>>


 やっちゃったなぁ……。


 神崎七海は心の中で独り言を呟く。

 

「にしても、瀬良君も一緒に来てくれたっていいのに……」


 嬉しそうに額を触る。


「……でも、これはこれでいいのかもね」


 初めて私から声をかけて、そうして喋ること……とは言い難いけど、嬉しかったのかな……?


「はっ! だめだめ! どうしてあんな奴に嬉しいなんて思わないといけないのよ!」


 大声で発したその言葉は廊下に響き渡る。

 

 響き渡る声は瀬良和也に届いたが、神崎七海の思いは絶対に届かない。


「怪我して嬉しい奴なんてそうそういねぇだろ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る