第18話ダンジョン国教会

弟は社交性の無い、サブカルチャーを愛する人間だった。

良く言えば、文化的で現代的であり。

毀損的に言うなら、引きこもりのアニメ、ゲームオタクであった。


弟に転機が訪れた、家族揃っての異世界への移転で有った。

だが彼には技能や才能が何も無かったので、誰にでも出来る公務員にしか勤める所が無かった。

現実逃避先が無い日々のキツい業務で、弟のストレスは限界だった、弟は死のうと思った幸いな事にダンジョンにはいくらでも死に場があった。

いざ死のうと決心したときふと足下を見ると、小さな木箱が落ちてた。

中身を開けてみると毒々しい色をした赤色の液体であった、弟はこれが毒であると考えてその場で一気に飲んだ。

しかし待てども死にはしなかった、段々と死にたくなる気持ちが抜けていくのが解った。


弟は公務作業を続けた、そしてそのたびに死にたくなる気持ちが増えていった。


そしていざ死のうと決心すると、今度は木製の宝箱が足下に落ちていた、開けてみると毒々しい色をした青色の液体が入っていた。

今度こそ毒に違いないそう思い一気に煽った

だが、待てども死にはしなかった。


そんな事が何度も何度も起こっていた。


弟は不思議でしょうがなかった、なぜダンジョンは自分を生かそうとするのだろうかと。

弟は公務作業でごみをダンジョンに捨てていた、ごみを持ちながらダンジョン内で湧く生き物に襲いかかられる危険な業務であった。

そんな作業を何年も続けているうちに有る変化に気が付いた、ダンジョンの生き物達に全く襲われなくなったのであった。


弟は気付いた、つらい時には宝箱で励ましてもらい、今はダンジョンに襲われない自分はダンジョンの意思に受け入れられたのだと。


弟は泣いた、ただただ泣いた、こんなに優しくして貰ったのは家族以外で初めてだった。

弟は次第に、ダンジョンに取り憑かれたようにダンジョンを愛してしまった。


弟は同僚にこの出来事について語り出した。

初めは同僚達も何を馬鹿な…。と言って相手にもしなかった。

弟はきっとダンジョンには天使が居るに違いない!そう思いこんでいた。


私財を投じてダンジョンのイメージキャラクターを作り出した、白い髪、白い服の少女であった。

絵画、造型をダンジョンに奉納したり、ダンジョン内で独り言を呟くようにダンジョンと対話もしていた。

その行為を何年も続けているうちに有る変化が起こった、ダンジョンの幻聴が聞こえ、イメージキャラクターの幻覚も見えてきたのだ


弟はこの素晴らしい出来事を周りの同僚達と共有したかった。

弟は情熱的に語り出した、かつてこんなに真剣に成ったことは無く人生で初めてだった。


同僚達は弟の語りに全く共感しない訳ではなかった、確かに疲れた時には宝箱が出るし、同僚の中にはなぜかダンジョン内の生き物に襲われないやつも居たからであった。


それに弟の言う、頑張って仕事をすればダンジョンちゃんが応えてくれる、この言葉は魅力的でもあった。

公務員達は給料も安く、キツい仕事であったが、頑張ればダンジョンが認めて宝箱を出したり助けて貰える、その言葉は救いだった。

彼らは次第にダンジョンを信仰するようになった。

だがある時に意地悪い貴族がいた。

弟をペテン師扱いして、もし本当にダンジョンに意思があるなら今すぐに宝箱を出して見せよ!と公然と罵ったのであった。

普通は無視するので有ったが、弟はそれに応じてダンジョンにお願いをしてみた、すると暫くして宝箱が足下に現れたではないか!


中身は毒々しい赤色の液体であった、弟は迷わずそれを飲み干した、ダンジョンでのポーション系の未鑑定の物は飲んだら死ぬ、と言われるほどの常識で有ったにも関わらずその光景を見ていた貴族はただ驚愕し畏怖した。

公務員達がダンジョンの信仰を教え説いていき、ダンジョン労働者を中心に信仰が広まって行った。

国王はダンジョン信仰者達の教えの、

「頑張って仕事をすればダンジョンが応えてくれる。」

この教えはダンジョンでの資源産出国としては、都合の良い考え方であったために、国教会に指定した。

この瞬間ルミナス王国にダンジョン国教会は誕生し、弟はダンジョンの預言者としてその功績により、マクシミリアンとして拝命を受けたのだった。


弟マクシミリアンはダンジョンの預言者であり信奉者でもありダンジョンの婿でもあった



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