第15話コーヒーの飲み方

ここは酒場と言ってもコーヒーも出せるので、カッフェと言っても問題は無いだろう。

コーヒーを飲みながら話し合いをする事は良くあるらしい。

コーヒーは酒場でしか飲め無かったからだ、とは言え

「まさか、本当に来るとはな」

正直な所清掃部長とやらの顔は知らないが、お付きの十代と思しき女を1人連れたこの男こそきっと清掃部長だろう。

どうしよう…。いやここは強気に行こう、ダンジョン労働者は舐められたらおしまいだ。

「呼んでおいてそれは無かろう」

男と女は自分の席の向かい側に座った。

ともあれ話し合いにはまずはコーヒーだ

「おい!コーヒーを持って来い」

人差し指と手首を2度程曲げ、5金貨ダカットをテーブルに置きウェイターを呼ぶ。

そして腕を組み目を瞑る。


コーヒーを飲むまで一切会話する気は無いというアピールだ、コーヒーを飲まずして話し合いをするやつはここの流儀マナーに反する無作法者だ下に見てやる。

酒場は朝なので閑散としていた、静寂の中コーヒーを淹れる食器の音だけが響き渡る。

コーヒーが来た。

一口サイズのカップに濃いめのコーヒーで、ここでコーヒーと言えばエスプレッソだそれしかない。

向かい側の女は熱いエスプレッソをちびちびとすすりながら飲んでいる、苦いのが苦手なのか顔が時折険しい表情をしている。

自分はこの女を下に見た、コーヒーの飲み方も知らないガキって事なのだろう。

自分と清掃部長はお互いに腕を組んだまま微動だにしない、コーヒーの温度が適温に成るまで待っているのだ、そしてそのタイミングが来た。

一気にエスプレッソを煽る、すするなんて論外だ、エスプレッソは一気飲みするのがここの常識なのだ。

そして清掃部長も優雅に一気飲みをする、流石は貴族だここの流儀マナーもご存知だ。

「要件を聞こう」

コーヒーの飲み方1つで、その人間の格が解る、この部長殿は話を聞く価値があると。

「私の名はグスタフ2世。今日から君のボスだ、以降の処理は彼女に委任している、では失礼する」

部長殿は立ち上がるとサッサと言ってしまわれた。

「総務の者です、出向手続き等の処理などの打ち合わせを・・・」

自分は手を突き出し待てというジェスチャーをした。

「その話は長く成りそうなのか?俺の服装を見ていて気付かないのか?作業着だぞ?一端着替えてくるから、そこで大人しくしていろ小娘」

自分は立ち上がり小間使いに服を用意指せるよう頼んで酒場を後にした、作業着で酒場や街を彷徨くなんて恥ずかしくてはかなわんからな。

総務の少女はただ呆然とその場でポツリと座って居たのだった。

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