第12話家族
あちこちから歓声が聞こえてくる、ある人物はその人に握手を求めたりしている、複数人の近衛兵が酒場での客の行くて手を防ぎ、その人物達の通路を確保していた。
その人物達が近づいて此方に目配せして来たので、自分も目配せで応じた。
椅子に座った中老の男女、男は髪と髭が全て白く、深い堀と皺に鋭い眼光をしていて、女は髪は黒く実年齢よりも大分若々しく印象がしている。
男はタバコを手に取ると吸い始める。このキャベンディッシュの香りがする特徴的な銘柄はダウナー系の地獄まで堕ちろである。
男はゆっくりとタバコを吸いながら、スゥーっと吐いていく、暫くして口を開いた。
「最近顔を見せてないけど、元気にしてそうだな?」
男は鋭い眼光を自分の目に向けながら言った。
「あぁ…。どうしたんだ?こんな所に来て」
突然の訪問者で上手く対応出来ないのは、我ながら何とも情けない。
「なに、久々にかあさんとここの酒場で飲みに来ただけだ」
男は口角を一瞬ヒクリと動かした、あれで笑っているつもりなのだろうか。
暫くすると料理長が挨拶にやってきた。どうやら自分の
暫くして料理がやってきた、自分は食べてないので解らないが、男は料理の感想を言っているソースの味わいがどうのこうのとだ。
料理長は嬉しそうに手を揉んでいた、ここの連中は味の解らない人間が多いからかな。
男はワインを飲みながら言う。
「さて、ヒロトから相談を受けてな結論から言おう当家が援助をする。後はお前次第だ」
ヒロトつまりは自分の弟な訳だが、どうやら仕事帰りに実家に帰ったらしい。思わず弟に目を合わせると、弟はへへっと頬を掻いた。
「俺次第と言っても、急に仕事を休む訳にも行かないぞ」
自分はダンジョン底辺労働者である、チームで仕事をしているのだから、勝手に休むと周りの連中が迷惑を被るのだ。
男は髭を触りながら思案し回答する。
「こちらが何とかしよう。帝国の
当家とはつまりは…。
「つまりは
自分は初めてこの男の目を見た、この男…。自分の父親を。
「そうだ!
「解った。その依頼受けよう。」
その言葉と同時に父親は立ち上がって右手を差し出した。だが自分は思わず悲痛な表情をしてしまった、父親の右手はダンジョンでの作業中に食いつかれて欠損していたからだ。
人差し指から薬指にかけて親父の指は無い。
「おっとすまんな。つい癖でな、頼んだぞユウタ」
それ以来父親は左手で握手をするようになった。
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