第3話昼休み

「いやぁ~待ってましたよ!もうヘトヘトですよ~年寄りですからねえ~」

班長は肩を揉みながら6人の団体に近付いていく。

「何言ってるのよ!まだまだ現役じゃない。今食事の準備をさせますからね」

ふくよかな体格のおばちゃんが2人の女の子に準備させる。彼女らは新人ちゃんであろう。

この6人の女性集団は昼食をサービスとして提供する傭兵屋である。ダンジョンの仕事は基本的に2K(キツい。危険。)なのだが、昼休憩時間をの60分を得るために金で彼女達を雇うのである。身体が資本のこの仕事では、飯と休憩は何よりも得難い物なのである

弁当屋は円陣を組んで防衛に当たる、彼女達の得物は火炎を放出する銃で近遠距離、両用に対応した強力なものだ。

「椅子とテーブルの用意が出来ましたどうぞお座り下さい。今お茶をお入れしますね」

生き物の焼ける匂いと、金属の焦げた臭いと、火炎で焼かれる苦悩の叫び声を背景に自分達はお昼休憩を頂く。これがダンジョン流である。

「あ?おい!なんだこりゃ!」

自分は毎日の楽しみである昼食に異物が混じっている事に気が付いた。ニンジンとグリンピースが入っていたのである。

「おい!弁当屋の娘!俺はニンジンとグリンピースが嫌いだって言ったろ!」

傭兵の弁当屋は全て個人契約であり、ダンジョンの採掘工員1人に付き1人の傭兵と契約する。弁当はあくまでサービスだとしても、サービスが悪いなら利用者として断固抗議せねば成らない。カネを払ってサービスを受けているのだから当然の権利である

「あんたね!ガキじゃ有るまいしね、いい歳したおっさんがガキみたいにゴネてんじゃないよ!黙って食いな」

火炎を放出する銃を使っているせいか汗で髪が額に張り付いており、シャツが汗で所どころ透けているこの女との付き合いは長い。かれこれ10年は契約している。

ダンジョンで仕事をしているだけあって知性の感じられない言いようである。

「おばちゃん、この煮しめ美味しいねえ腕上げたでしょ?」

班長とおばちゃんの楽しそうに会話が弾んでいる。年寄りだけあって話し好きらしい

ダンジョン内の休憩時間は限られていて60分休憩だが、5分前には準備しておかないといけないのだ。命が掛かっているだけあって5分前行動は周知徹底的である。

実質55分の休みをどうやって過ごすか各々自由である。机に突っ伏して寝る者、会話をするもの、弁当屋にセクハラするもの様々である。

「新人ちゃん達は歳はいくつなの?へぇ~ 14、15?国はどこの出身なの?」

新人ちゃんの臀部を撫でながら質問していく

異世界のダンジョンで働く人間は社会的底辺であり、男女共々セクハラという概念はない

精々過剰なスキンシップ程度の認識である。

「お?新人4と5の昼飯うまそうなだな?」

「「うまいっす」」

新人2人はニコニコしながらサンドイッチを頬張っている。

「先輩もお一ついかがっすか?色々お世話に成っているお礼っす」

それじゃあ遠慮無く。ヒョイパクと頂くと確かに美味しい、この酸味の付いたキュウリの歯応えとサワークリームの味わい、そしてその後に香るミントの爽やかさが堪らない。

「なかなか良かったよ。どうだ?俺の弁当も食べてみろ。新人4にはこのニンジンを新人5にはグリンピースを贈呈してやろう」

「「あざーす」」

新人ちゃん2人は新人4、5と契約する為にきっと頑張ってお弁当を作ったのだろう。

「おい新人4、5。この新人ちゃん2人と契約するか?顔は可愛いし料理は旨い。申し分なさそうじゃないか?俺の契約した女ゴリラよりも良物件だぞ」

「「問題無いっす!契約しまっす」」

新人ちゃん2人はきゃきゃ言いながら御礼を言っていた。

「「不束者ですがよろしくお願いします」」

おいおいこの娘ら、嫁入りじゃないんだぞ...

「おい3番!」

弁当屋の娘が自分を呼んでいる若干上擦ったような弾んだ声質だ。

「ツイてるな。ボーナスがでたぞ!」

ボーナスとはダンジョンでの仕事で最も幸運であり、このゴミのような仕事を作業員が長い間続ける理由でも有る。ボーナスとは宝箱のドロップである


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