第34話 アン・リトホルム公女殿下!

 謁見の間の中は思ったより質素なあつらえではあったがひとつひとつの部材は其れはもうそう簡単には手に入らないような素材で作られておりベッレルモ公国生い立ちからの長い年月の重みを感じさせる重厚感を備えていた。そんな中でひときわ高い位置に鎮座した重々しい玉座の上にちょこんと其れは場違いな程、可愛らしい少女が座っていた。その方こそ誰在ろうアン・リトホルム公女殿下その人であった。そのアン公女殿下は這入ってきた俺達を見据えると柔やかな微笑みを浮かべながら優雅に玉座から立ち上がり俺達の方へと自ら歩み出してきていた。

「アン公女殿下?」

 公女殿下の不可思議な行動を訝しむ様に傍に使えていた役人達がざわざと騒ぎ始める。

「殿下、この者達は下僕の者につき殿下自らがそのような振る舞いをなされるのは分不相応に御座いますぞ」

 お役人の中の一際ひときわ古株そうな老人が大声でアン公女殿下をいさめようとしていたが其れにも動じずに逆にその役人に向き直ったかと思うとその御仁を叱咤してきた。

「爺っ! うるさい! この者達に対してはわらわの好きにさせろ」

 外見は可愛げな様相の幼気いたいけな女のにしか見えない公女殿下だったがその発し溢れるオーラは王族の其れだった。凜と張った神々しい一声にその場の空気がピンと張り詰めたものに変わったのがわかった。

 イカルガ伯爵も俺もサギも頭を垂れてその場にひざまずいた。そんな俺達に改めて向き直したアン公女殿下は慈愛を込めた笑顔に換えて俺達に話しかけてきた。

「イカルガ伯爵にはご苦労ばかりをおかけしてますねで、そのお方がこの間お話のあったラリー・M・ウッド様なのですね。初めましてわたくしアン・リトホルムと申します。是非ともお見知りおき下さいね」

「ははっ!」

 俺達はと言えば唯々その場で平伏するばかりだった。

 アン公女殿下が自ら俺達の方まで出向いてわざわざその手を取った上で立ち上がらせるなど公国の君主と下僕である俺達の上下関係からすればあり得ないことだったが公女殿下のオーラはその周りに控えていた公国の重鎮達の諫めようとする思惑さえ一気に霧散させる程の威力を放っていた。そんな中でも俺とサギの二人の醸し出す雰囲気は公女殿下にとっても今までの経験の中で異質なものだった様で直ぐにその場の雰囲気を別のものとする話し方で俺達に語りかけてきた。まあ端的に言えばタメ口ぽいのだが……。

「あ~らぁ、そちらにいらっしゃるお綺麗なお嬢様は誰なのかしら? ラリーさん? 私が貴方様あなたさまの許嫁って言う事はご承知なのでしょう?」

「『えっ!』」

 俺もサギも思わず顔を上げて公女殿下の顔を凝視しながらビックリした声色で言葉を発した。

「――ラリーっ? 其れってどういうこと? 公女殿下と許嫁って? 聞いてないし、私は?」

 血相を変えてサギが俺に食って掛かる。

「いやいや、サギっ! まてまて落ち着け俺だって初耳だ! 本当に自分の事なのか?」

 サギが俺の方を睨み付けながら驚愕の表情のまま食って掛かる様に詰問してくるが其れに呼応する俺の方もまったくもって知らない事だった。と、傍でアン公女殿下がクスクスと笑い始めていた。

「サギさんって仰るのですね貴女様あなたさまは、先ほどは失礼しました。……冗談ですよ、そんなに目くじら立ててラリー様を責めないで下さい。まあ、此であなた達の関係が良くわかりましたが……でもね」

「『……冗談? って、公女殿下……でも?』」

 一気に俺とサギの間の緊張のボルテージが急降下したが、あまりにも高位の存在からの唐突な冗談にしては――まったくどうしていつもこうなるのだろうか。

「――アン公女殿下申し遅れました。わたくしサギーナ・ノーリと申す一介の宮廷魔術師で御座います。尚、ラリー様の配下にあるメンバーのひとりでもあります、どうかお見知りおき下さい。其れとひとつ言わせて頂ければ先ほどの冗談はちょっと過ぎる冗談ですわ。何せラリー様……いえ、ラリーはそう言う点では女性の心を引きつけて放さない御仁なので、何せあの魔女王ですらそうなのですから」

 と、サギはさっきの公女殿下に言葉に一歩も引かずにズィと文句にも似た発言を前に押し出してくる。

「あらっ、そうなのですか? 魔女王まで……なら、やはり私もきっちりと立候補して於いた方が良いみたいですわね、うふふっ」

「は~ぁ」

 公女殿下とサギの言葉の遣り取りに俺はポカ~ンとした表情のまま唯々惚けていた。おいおい、一体どうなっているんだか?

「まあ、それはそれとして後でじっくりと会話させて頂くとしてひとまずはラリー様のお話を伺いましょう」

 話しの流れで切り替えられたのかそれとも単に一時しのぎにしかなっていないのか解らないままに俺の当初の拝謁はいえつの目的に振られたが――まあ此処は其れに従うしか無かった。


 兎にも角にも俺達は今までの経緯いきさつやらステファン卿とウギのゴタゴタの件を交えてペルピナル神魔殿まで出向いて直にその目で事実を捉えてくるつもりであることを伝えた、只エンマ魔女王の魔界の込み入った事情についてはサギとも事前に擦り合わせてまだベッレルモ公国へ話すのは早いだろうと言う事で今回の報告内容からは省いて置いた。

「そうですかステファン卿叔父上がその様な事を――本当ならとても許しがたいことですわね」

 アン公女殿下がひと言そう仰った。まあ事実として確たる証拠があるわけでは無いので今は憶測の域を出ないことには変わりない。

「アン公女殿下、今の話しが事実とすればイェルハルド・リトホルム公爵殿を早急にお助けする為にも我が国としても軍隊を派遣致しましょうか?」

 傍で俺達の話を一緒に聞いていたお役人の中の一人がそう申し立ててきたのに対して俺はひと言具申させて貰った。

「大勢の軍隊を引き連れては相手に気取られることになります。此処は少人数での事実確認を俺達に任せていただけませんか? その後に其方そちらに必要とあらば全面委任致します」

「うむっ、確かに大公様が人質とあらば事を荒立てるのも今は早計か」

 軍隊の派遣を告げてきた武人と思われる役人の人もその様に言葉を返して俺の意見に同調してくる。

「此処はラリー様達に全てを委ねるとしてわらわ達はその後の対応を考えて於きましょう。ラリー様もその様な事で宜しいでしょうか? 公国への忠義をお願いする事になって誠に遺憾ではありますが……」

 アン公女殿下が申し訳なさそうにそう俺達に告げるとその場の皆がスウッと下を向いて相槌を打っていた。

「其れではラリー様、これを――」

 そう言うと俺の目の前に歩み出てきたアン公女殿下は彼女が胸に付けていた大きなブローチを外してその場で俺の左胸に付け始めた。

「えっ、公女殿下? 是は?」

これはリトホルム公爵家に伝わる宝玉のひとつですよベッレルモ公国の継承者の証となりますから」

 俺の胸にそのブローチを付け終わるとフッと微笑みを返しながら俺にそう言ってきた。

「こ、公女殿下――その様な大切な物を俺如きが預かるわけにはいきません」

 ビックリすると共に俺は直ぐさまにその宝玉を外そうとしたが……外れなかった。

「ラリー様其れはリトホルム公爵家の者でしか扱えない代物ですから、お外しになろうとしても無駄ですよ。其れが今回のあなた様達の加護をしてくれると私は信じておりますからお持ち下さい、是非とも」

 アン公女殿下は踵を返して玉座に戻りながら顔だけ俺の方を向いてそう話しかけてきた、そして玉座に座り直すと朗々と告げた。

「我が国と父の事をよろしくお願いします、ラリー様」

「ははっ!」

 俺とサギはその場に再び頭を垂れて跪いた。


 玉座からアン公女殿下が静かに立ち上がるとその場の皆が跪いて公女殿下の退座を粛然と見送っていたが、アン公女殿下が謁見の間を立ち去られた途端に一同ざわついた雰囲気となりその場に居た者達が何やら右往左往し始めた、其れを見ていたイカルガ伯爵は嘆息しながら俺達にひと言告げてきた。

「ラリー君、悪いが是から私は皆と今後のベッレルモ公国としての振る舞いを話し合わなければならない。先に二人で帰って貰ってもいいかな」

 確かに伯爵の後ろにはぞろぞろとその場に居たみんなが集まり始めていた。

「わかりました、俺達も戻ってみんなとペルピナル神魔殿へ赴くつもりです」

「そうか、ではよろしく頼むよラリー君」

「はい!」

 そう答えた俺がおもむろに振り返るとその場に居た皆が一斉に俺に向かって跪くのが見えた。

「えっ!」

 ビックリして思わず声を上げた俺に向かってイカルガ伯爵はひと言告げてくる。

「君の胸に輝く宝玉がもう効果を発揮してきた様だね――ではくれぐれも気を付けて」

 そう言いながら伯爵は踵を返し部屋を出て行くと、跪いていた皆も立ち上がってその彼の後ろを追いかけるように付いていった。

「まったくラリーったら公女殿下までは落としてしまったの? 女子とあらば見境無いんだから」

 俺の隣で頬をプクッと膨らましてうめくようにぼやいてくるサギに目をやるとゲンナリとした顔つきで俺に半眼をくれてきた。

「そう言われましてもサギさん――俺の所為せい?」

「仕方ないとは言えね~ぇ、ラリー気を付けましょう……せいぜい夜道にはね」

 サギがそう言うが早いか俺の脇腹を思いっ切り抓ってきた。「痛いっ!」という言葉はグッと飲み込んで俺はサギに仕方なく頭を垂れていた――俺かぁ?

 そんな謁見の間での出来事の後、サギと二人だけでその場を後に宮殿の長い廊下をトボトボと来た時と同じ道筋を戻って行った、と廊下の途中で聖女のころもの装束を身に纏い深めに被ったフードで目元から上は隠れているが口元が幼顔の少女が此方を見てニコニコしながら待っているのが遙か先に見えてきた。誰だろう? とサギと顔を見合わせてこの先に待っているそのの行いをじっと見ていた。

 矢庭やにわに弓を射る動作をそのがしてきた、無論彼女の手には矢も弓も持ってはいなかったがまるで聖女が神殿にて矢を奉納するような優雅な振る舞い方に目を奪われて、狙われているのは自分たちの事ながら只呆然とその一挙一動を眺めていた。

 その彼女がヒューっと矢を放った――いや、実際には矢は無かったのだがまさに矢を射った様に見えたと、その見えない矢なるものが俺の眼の前に来ると光を放ちだして本当の光の矢の姿を現したのだった。

「馬鹿なっ! ぐっ!」

 俺の顔の左横をすり抜けようとしていた光の矢を瞬間俺は左逆手で掴み取る。その矢の先はサギの眼前すんでの所で俺に捕まった。

「えっ! な、何っ? や、矢っ? あっラリー……ありがとう」

 サギは目と鼻の先のやじりと俺の手との間で視線をキョロキョロと行き返させて、あんぐりと開いた口のままで語尾を噛みながらそんな言葉を口にしていた。

 唐突な行いに憤怒のオーラを発して俺はそのに怒鳴った。

「おいっ! 一体何のまねだ」

 その言葉にサギもやっと状況が飲み込めてきたのかビクッと身体を震わせて彼女を凝視する。

「えっ! 彼女の仕業なの?」

 と、俺の手の中にあったはずの光の矢が突如として――消え去った。なにっ!

「流石じゃ、わらわの光の矢を素手で掴まえたのはお主が初めてじゃぞラリー、まあそんなに怒るでは無いちょっとした戯れ言ぞ――その矢がもし彼女に当たったとしても何の事は無いから」

「当たっても何の事も無いなんて――なんなんだ是は?」

 俺は目の前まで歩んできたそのに掴み掛からんとする勢いのまま前のめりになって怒鳴った。

「おおっ怖っ! 優男と言われるラリーと言えどもサギに手を出すと魔物如きの驍将ぎょうしょうに変わるのう」

 そう言いながら彼女が自ら深めのフードを剥ぎ取ってその顔の全貌を俺達の前にさらけ出してきた。

「あっ! アン公女殿下?」

 サギが掌で口を覆いながらそう叫んだ。

「そう言われる時もある――今は聖女アン・リトホルムじゃよ」

 と彼女? アン公女殿下では無く聖女アンと名乗るそのが俺とサギの手を取って踵を返しながら宮殿廊下を歩き始め顔だけ振り返りながらひと言告げてきた。

「さっ! 行こうではないかペルピナル神魔殿へ」

「えっ! 公女殿下?」

「ちょっ……ちょっと待った!」

 サギのつぶやきと俺の焦った問い掛けが宮殿廊下に木魂していた。

 矢庭やにわに俺達を先導して歩き始めようとするそのを後ろから羽交い締めにして持ち上げて制止させた。たしか公女殿下は御年十八歳って言っていたよな、其れにしては幼すぎると……思うけど? 別人か?

「ラリーお主、いま良からぬ事を思わなかったか?」

 自称聖女アンなるそのが俺に羽交い締めで持ち上げられながら此方の方を振り返ってそうつぶやいてきた。そしてその俺の所行にサギが焦ったように声を掛けてきた。

「ラリーそのを……アン公女殿下を降ろして頂戴っ! 君主様への愚行になるわよ!」

「あっ! そうか――失礼致しました。え~っと……誰って言えばいいの?」

「だからわらわは聖女アン・リトホルムじゃと言っておるではないか」

 サギに言われてそのを静かに降ろすと彼女は振り返って俺にビシッと指を指しながらそう言ってきた。いやいやそうは言われましても――ねっ!

「で、どうするやね~ぇサギさん?」

「どうするって言われてもラリーっ?」

 その場で二人して俺達を振り回しているそのを凝視してはお互い見つめ合って溜息を付いていた。


 兎にも角にもその自称聖女アン・リトホルムと名乗る――多分アン公女殿下であろうと思われるそのを引き連れて宮廷の中心部を後にすべく馬車へと乗り込んだ。何故に聖女アン嬢を連れてきているかと言えばその曰くペルピナル神魔殿に行くのであれば聖女たる自分を連れて行かなければ立ち行かないとまで言われて渋々同意してしまった次第だった。

 アン公女殿下が突如不在となれば再び宮廷内は蜂の巣を突いたような騒ぎになるのは目に見えているので来訪時にサギに声を掛けてきた宮廷魔術師のメイさんなるお友達に事の顛末を伝えてイカルガ伯爵を連れて来て貰った。が、その場で伯爵は何を考えているのか俺にペルピナル神魔殿まで共に聖女アン嬢を連れて行ってくれるようにと言うではないか。と言うことでそのが今も俺達と一緒に馬車に乗っているという始末だった。まあ、サギ曰く。

「この世界で女性にとってラリーの横に居るほど安全な場所は無いでしょうからね」

 其れってどういう意味ですか? サギさん。


わらわ俯仰ふぎょう天地にじずじゃぞ」

「いやいやアン公女殿下がそう思われましても俺達からすれば――騒動を持ち込まれたと言うしかないのですが、あっ聖女アン様」

 その猪口才ちょこざいな言い口に思わず素直にそう返答して置く。

「アンでよいのじゃ、なっラリー」

「そう言うわけにはいきませんから公女殿下っ!」

 サギも君主に対する礼として流石に呼び捨てタメ口は出来ないと申し出たが……。

わらわの事は一介の聖女アンと言うことで他の仲間にも突き通して欲しい、其れが今回お主達にわらわが同行することへの約束とお願いじゃよ」

 そう言って聖女アン嬢は俺達に頭を下げてきた。

「ちょっ……ちょっと待って下さい頭をお上げ下さい公女殿下」

 サギが聖女アン嬢のその行動に顔を真っ青にして止めさせようと必死に頼み込む姿に思わず俺は笑いを堪えきれず噴いた。と、聖女アン嬢はそんな俺の態度にはお構いなしに下げた頭の位置のままで顔だけ横に向けてサギの事を睨み返してきながら更に注意を促すように告げてきた。

「何度も言わすなサギっ! わらわはアンじゃ――ただのアンじゃよ」

「……そ、そう言われましても……」

 流石にサギも其れには『はい、そうですか』とは言えない立場ゆえ――何時までも決着が付きそうになかったので、俺として指示することにした。

「サギ、良いじゃないか彼女が其れを望んでいるんだし、是からみんなに紹介する事も考えると此処にはアン公女殿下なんぞいないと言う方がいいよ、そうしよう」

「ほら、ラリーもそう言うておるではないか、わらわはアンじゃアン!」

「は~ぁ」

 サギは俺に押し切られる形で渋々と聖女アン嬢を認めた、まあ大きく嘆息吐いて頭を振っていたけどね。

「ところでアン、君が同行しないとペルピナル神魔殿へ行くのに立ち行かないという意味は何なんだ?」

 俺は早速彼女をアンと呼び、今の疑問の再頂点を投げて回答を貰うことにした。

「おうそれか、何じゃな――魔殿ならお主達でも辿り着けるが其れに神殿の意味を加味して神魔殿と呼んでおるのじゃぞ可笑しいと思わないか?」

「其れって単なる呼び名って言うわけではないのか、そう言う言い方からすると……」

「そうじゃぞ――魔殿なら魔力で対応出来るが神殿の部分は聖女の力が必要なのじゃ所謂いわゆる法力ほうりき』じゃな」

「『法力ほうりき』っ!」

 俺とサギはその言葉を聞いてお互いに顔を見合わせて思わず叫んでいた。

 そんな話しをしてきたアンの方はどうじゃとばかりにその辛うじてささやかな膨らみを作っている胸を思いっ切り張って自慢してきた。が、目の前のサギの撓わな胸元と自分の其れを瞬間見比べるとがっくりと項垂れてスッ~うと身を引いてしまっていた。

「サギよ~ぉ、お主は羨ましいの……」

「は~ぁ?」

 そんな事を言われたサギの方は何の事かわからない素振りで聞き返していた。

「そんな事より――法力が必要な神魔殿の内部ってどういう所なんですか?」

 俺は話しを進める為彼女に詰め寄ったが……。

「――そんな事? そんな事って言ったな、そう言うが女娘おなごに取って其れはどういう重みか解って言っているのか? お主だって好きじゃろう……撓わな方がサギのように」

 アンがプリプリと頬を膨らませ怒りながら食って掛かってきた、名指しを受けたサギと言えばハッとして自分の胸を両腕で隠すように覆って顔をあからめていたわ。このと話しをしていると話しが進まないことこの上ないわで、大きく溜息を俺は付いていたよ。

「……は~ぁ」


 馬車の中でそんな事を喋っている内に何時の間にか大部屋宿舎前に着いていた。

 三人で大部屋まで歩きながらガヤガヤと話しの続きをする。

「アンさんは聖女って言われましたが其れって公爵家の世襲なんですか?」

 サギがアンにそう言って聖女の関わりについて質問していた。

「そうじゃ、わらわのリトホルム公爵家の女子にのみ一子相伝で伝わる『法力ほうりき』じゃよ――普通はまつりごとの神事に関する事を行うのみだがのう魔力の様に派手では無いものそれなりの力はあるぞ、そうさっきの光の矢がそのひとつじゃよ」

「あっ、あれってもしもそのまま私に当たっていたらどうなるのですか?」

 そうだそう言えば、さっきアンはとんでもないことをしでかそうとしていたんだった。思いだしたようにサギが問い掛けてきた。

「あれか見た目は派手に見えたかも知れないが魔族には矢として物理攻撃になるが、だが人には心理攻撃にしか為らないのでのうサギには危害はないぞ、まあわらわに惚れるくらいかのう――よう言うでは無いか『キューピットの矢』ってな」

「え~っ! じゃあ間違えてラリーに当たってでもいたなら……」

 サギがそう告げるとアンも『えっ、あっ!』てなことで俺を二人して見惚けると赧然たんぜんとしていた。

「その手があったか……わらわも気づかなんだ」

 アンの方はその後、心底悔しそうにそうぼやいていた……まあ、俺としては一生気づかんでいて欲しかったわ、ほんと。


 思いっ切りうるさい性格が暴露された聖女アン・リトホルム嬢を引き連れて俺とサギはみんなが待つ大部屋の扉を叩いていた。

「みんな居るかい、俺だラリーだ」

「「『おかえり~ぃ』」」

 部屋の中からそんな和やかな返事のハーモニーが聞こえてきた。

 俺が扉を開けると当然如くウギが飛びつくように抱きついてくる。相変わらずその豊満な二つの膨らみを無意識ながらも俺の身体に押し付けるようにして……。

「どうじゃったのぅラリー、宮廷の方はわらわの事は言ってくれたのか? あのエロ爺に鉄拳制裁を喰らわすことを了解して貰えたのかのぉ、んっ? サギ、その隣のおなごは誰なのじゃ?」

 俺の首筋に顔を巻き付けるようにして俺の肩越しからサギを認めるとその隣に一緒に立っていたアンを見つけてウギが問うてきた。

「ウギったら! またそうやってラリーに引っ付いて――ん~ぅもう、こら~っ!」

 サギはウギの問いかけには応じずに俺に抱きついてきているウギに目くじらを立てて怒っている。

「おう~っ、此処が聞きしのラリーのハーレム寮かのう……んっ?」

 話題の主のアン自身も俺に絡み付いているウギの問いを無視しその当人の横を擦り抜けて部屋の中へと風のように這入っていくと、半眼になりながら部屋に居たみんなの胸元の凄艶な渓谷をズイ~ッと見渡して、ひと言俺に向かって愚痴を言ってきた。

「うっ――の~ぅラリー様、お主の女友達になるのにはバストは少なくともDカップ以上で有ることが必須なのか?」

「……(んなわけあるか!)」俺も半眼になりながら声なき反論をアンに送った。

 その間もずっと抱きついたまま離れないウギを軽く抱き締めて耳元でそっと囁く。

「ほらウギ、そのを紹介するからね」

「うん、わかったのじゃ」

 そう言ってウギは俺から静かに離れてくれた。そのまま俺はアンの真横に立つと彼女の背をスッと前に押し出してみんなの前で紹介し始めた。

「みんなに紹介しておこう、公女殿下からの推薦にて今回のペルピナル神魔殿へ同行してくれる聖女アン嬢だ。公女殿下が神魔殿の内部に詳しい彼女を案内人に推してくれた」

 そう言ってみんなにアン嬢を紹介したが……。

「アン嬢? 姓は?」

 そう言ってマギがいきなりえぐるような疑問を投げかけてきた。

「うっ! ……それはのう……リト……ル……じゃ」

「アン・リトル?」(それじゃ見た目ままんじゃないか――おい!)とマギを含めみんなが突っ込む気持ちを抑えているのが俺にもわかったよ。

「そうリトルじゃ――其れで良いのじゃ」

 彼女を見る眼が異様な雰囲気を漂わせている中、アン嬢は引き攣った笑みを浮かべながらそうマギに応えたが……。

「ふ~ん、そうなんだリト(ほ)ル(む)ね」

 マギは言葉の途中で声を発することなくそのまま口の形を作ってオウム返しでコンタクトしてきた。しっかりばれているのがありありと解る。

「まあ、いいわ聖女様なのね――此方こそよろしく私は魔導師のマギル・ビンチよマギと呼んで」

わらわは魔法剣士のウギ・シャットンなるぞ、ウギでいいのぉ」

「あたしはヴァル・イラディエル……ヴァルでいいわよアン」

 そう言ってみんなが自己紹介をし終わると――最後に控えていたひとりが直立不動でその場で自分の顔を指さしてアワアワしていた。そして一生懸命サギに目顔めがおで何か言いたげにしているのが目に映る。

「わ、わたしも自己紹介するの?……そうね、んっ。えっ~とサギと同じ宮廷魔術師のロミルダ・ヴェルトマンと申します、公女でん――あっ、アンさま」

 そうだ此処ここにも居たよ身元がお互いバレバレの――関係者がね。そんな挨拶をロミルダ嬢がしながらアン嬢と二人お互いに目配せするような仕草をしていたのをみんなが見ていた。

「「『ふふ~ん』」」

 そんな彼女達を温かい眼で見ている我がチームメンバー。まあ、いいっか! で、俺はアン嬢の役割と宮廷での公女殿下との(ここにその本人が居るんだが……)謁見の結果をみんなに話し始めた。


 一通りの話しを終えて俺はみんなの顔を一瞥いちべつする。それぞれの顔には疑問と納得と不服の入り交じった微妙な表情が読みとれていた。そんな中で遠慮というものが全くと言って無いウギが早々に声を上げてきた。

「ラリーのぅ、わらわはお主の判断に口を挟む気はさらさら無いがのぉ。そのなんだな、アン公女殿下はお主の許嫁なのか?」

 おい、疑問は其処そこかよ、其処なのか?

「そうじゃぞ、わらわの……あっ!」

 まさに地雷を踏みかかってアン嬢が咄嗟に言葉を止めた。そんな彼女を俺は自らの顔を手で覆いながら天を仰ぎ見て、覆った指の間から半眼の目でアン嬢を睨みつける。

「すまんラリー、わらわの口がつい滑ったのじゃ」

 そう謝るとアン嬢はその小さい身体をさらに縮込ませてその場にシュンとなっていた。

「あん? アンはアンであろうに? 今は公女殿下の事を話しておるのじゃぞ? お主は関係なかろうにのぉ」

 相変わらずウギの方は疑うことを知らないと言うか空気が読めないというか――よく言えば純朴だった。そんなウギの事を他のメンバーは憐れみの目で黙視する。まあ此は此でアンとウギは結構良いコンビになるかもとふっと俺は思っていた。


 アン嬢を交えて此からの予定を皆と話し合うことにした。兎にも角にも大公様であるイェルハルド・リトホルム公爵が人質になっている可能性があるので事を急ぐ必要があったがそうは言っても無理をして相手に気取けどられては全てが水泡に帰す。

「はてさて如何いかがしたものか、わらわたちの素性を勘ぐられずにどうやって神魔殿の内部で大公様を探すかじゃのう」

 アン嬢が溜息をつきながらそう懸念を吐き出してきた。その事は確かに最終目的に繋がる大事な事だったがその前に俺はひとつ確認しておきたい事象があった。

「ところでウギ、ステファン卿が近づいてきた時に『黒い闇のような気配』を感じたんだったよな」

 俺はウギがセクハラに在った時の話しの中で記憶の中で引っかかっていた事を聞いてみた。

「そうじゃ、あのエロ爺は見た時から何か気配がおかしかったぞ。それでわらわが奴に後ろを取られた事に気付かずにお尻を触られたのじゃぞ、このわらわがのぅ」

 ウギはそう言いながらその時の事を思い出したのか頬を膨らましてプンプンし始めている。ウギは『黒い闇のような気配に一瞬捕らわれた』と言っていた其れはどういうことなんだろう?

「マギもステファン卿を一瞬見失ったんだよなぁ?」

「そうそうウギから少し離れた所に私は居たんだけど、ステファン卿が現れてウギに近づいて行く所までは見えていたのよ……一瞬見失って気が付いた時には奴はウギの真後ろにもう居たわ、私もその時はビックリして見たわよ奴の事を、なんか筒闇つつやみの中からす~ぅと現れたみたいで現実とはなんか掛け離れた違和感があったわ」

「で、黒魔術って思ったと……」

 俺はさっきマギが語った言葉を発した。

「うん、その時は単純にそう思ったんだけど黒魔術って、でももしかしたら呪術――ううん、邪術かもね」

 黒魔術は『黒気』の魔術レベルがあれば得てして可能な魔術だかその闇に捕らわれすぎると呪術の方に『気』が傾く、読んで字の如く『呪い』を主体に働く、呪いにはそれ相応の対価を必要とするため呪術者が何らかの生け贄に為ることや物を提供する事になる。此処までは対価を払い終われば元に戻れるが……そうしてその先が邪術だ、此処まで深みに嵌まると本人にはそこから抜け出す自我が無くなっているはずだ。ステファン卿の其れが黒魔術レベルならウギやしてや魔導師のマギが術に捕らわれることは無いはずだ、とするとやはり……。そんな事に思案を巡らしているといつの間にかサギが俺の傍に寄り添っていて俺の耳元でそっとささやいてきた。

「ほらっラリーったらまたひとりで……悪い癖よ! ちゃんと話してみせてよね」

「あっ! わるい!」

 サギからの指摘に俺は頭を掻きながら謝っておく、そうして今考えていた事を順を追って口に出していた。


「やはりラリーもそう思うのね、あたしもそう思ったわ」

 最初に口火を開いたのはヴァルだった。その後に続けてエンマから貰った情報を喋り出してきた。

「姉さんの事を魔女王から引き下ろそうとしている反体制派の一角に邪術の一団が居るらしいの、まだ確かなことは言えないらしいけど――そうすると辻褄つじつまが合うわよね」

「やはりな、魔族が絡んでくると信憑性が上がるな」

「でもラリー、其処に魔族側の得るものは何なのかしら?」

 サギがひとつ疑問を投げてきた。其れもそうだ単にステファン卿を取り込んだとしてもエンマ魔女王をその座から引き下ろす目的にはほど遠い。いかんせん人間をひとり引き入れて何の得があるんだろう?

「ひとつ話しをしても良いでしょうか?」

 此処でロミルダ嬢が話しに加わってきた。彼女の話によると何でもイェルハルド・リトホルム公爵から俺達の事を聞いていたらしい。

「大公様の思惑ではエンマ魔女王に頼まれた人間界の強力な魔力の発生の根源を探ってみてラリー様達の事であることはベッレルモ公国側でも掴んでいたらしいのです、がこの事をそのままエンマ魔女王に話すかどうかで悩んでいたみたいなんですよ」

「えっ! 其れってどういう意味?」

「エンマ魔女王の狙いがいまいち掴めてなかったんですよ、其れもあって大公様はステファン卿から魔族の情報を貰えると言う話に乗ったらしいんです」

 ロミルダ嬢は俯きながら何か悩んでいる様な仕草で話しを続けてきた。

「これから先の話は大公様が私だけに話しをしてくれた内容です。他言無用と言われてましたが……場合が場合なのでみなさんにお話し致します」

 そんな前振りにみんなが息をのんでゴクッと喉を鳴らしていた。が、ひとりウギだけがぼそっとうなるように言葉を継いでしまっていた。

「それって枕詞まくらことばって言うのじゃろう……」

「「『……?』」」

 一瞬その場が空気が凍り付いたが。

「……其れを言うなら寝物語じゃぞ、ウギ様よ」

 自分の父の情事に関わる事なのだが? アン嬢がそれでもそう言って事も無げに話しを終わらせてくれたことで何とかその場の空気をそれ以上カチカチに凍らせること無く終わった。

 俺はその場ですぐにウギの口を手で押さえたが既に放たれたその言葉にロミルダ嬢が真っ赤な顔になりながら俯いていたその頭を更に下げる事に為っていったのは言うまでも無い。

「んんっ! ウギっ、こらっ。――で、サギは聞いていたのその事?」

 取り敢えず仕切り直しもかねてサギに話しを振って於く。

「えっ、私! あっ――ねえ、ロミったらその話しの続きは? 私も聞いてないわよね」

 と、サギが俺の意を酌んでロミルダ嬢に話しの続きを促してくれた。

「……わかったわ。それじゃ話しをするわ――何処まで話したっけ?」

 ロミルダ嬢の話しの内容は掻い摘まんで要旨をまとめるとこうだった。


 エンマ魔女王からの依頼をそのまま彼女に返すと俺と俺を取り巻くみんなの魔力が魔界にまで影響していたことが発覚する。俺達のどでか過ぎた魔力の発覚で魔界勢力争いそのものが大きく揺れている状況だとエンマも言っていたし……。

 そしてそれはその元凶となっている俺を魔界の誰が取り込むかで魔界の中の勢力図に大きく影響しそうだとのことがステファン卿から大公様の耳に入ったらしい。まあ、ステファン卿は既に魔族の邪術に取り込まれているようだから本当の話しは他にありそうだが、それでも大公様の立場としては迷うところだろう。大公様としては人間界の勢力争いの方が心配種となるのでギルド連合との関係から俺自身の情報を魔界に売ることになるのは避けたい話しだったらしい。

 その為、大公様としてはステファン卿の進言に乗って魔族側の貴重な情報を得る為に魔族への接触を試みたとみるべきだがそれにしても大公様として密会じみたやり方で従順に相手を信じてひとりで出掛けることにしたのはステファン卿への弟愛か? それともステファン卿に何らかの呪術を掛けられたとみるべきか?

「私もひとりでお出かけするのは危険ですと何度も進言したのですが、『ステファン卿と一緒だから……』と言って聞き入れては頂けなかったのです……」

 ロミルダ嬢が項垂うなだれながらもそう告げてきた。

「しかし大公様がひとりで出掛ける危険を推してまで欲しかった魔界の情報とは一体何だったんだ?」

 ひとり俺は自分の中で引っ掛かっている疑問を口に出していた。

「……其れについては私にも教えては下さらなかった。大公様としては私も信じるに値していない対象だったのでしょう……」

 そう今にも消えそうな小声でロミルダ嬢がうめいていた。

「其れは違うんでは無いかの、お主に話してその事が魔族にわかったらお主の命も狙われかねないからのう。わらわはそう思うぞ」

 アン嬢がロミルダ嬢の肩をそっといたわるようにさすりながらそう話しかけてきた。そんな仕草にロミルダ嬢もその大きな瞳に目一杯涙を溜めながらアン嬢にすがり付いていった。

「あっ……アン様っ」

 何かお互い思うことが在りそうなそんな二人の間に容赦なく割り込んでいく我が女性陣。

「お取り込み中悪いけど、アン? 聖女様だか何だか解りませんがラリーと一緒にって言う事は何か出来るんでしょうか? ペルピナル神魔殿の案内だけでは無いでしょうね」

 早速マギがアンの能力を確認しに来た。さてと何て言おうか? と、俺があ~でもないこうでも無いと回答を思案している合間に…。

わらわか――そうじゃのう。何にも出来ンぞ、お主が期待している場面ではのう」

 と、聖女様自ら破綻の回答を既に宣言していた。

「は~ぁ? 何にもって、それじゃただの足手まといって言う事なのですか?」

 いや、だからさ~ぁ言葉はちゃんと選んで喋らないとほらこうなる訳で……俺は自分の掌で顔を覆い天を仰いでしょげるしか手が無かった。

「ラリーっ! 此はどういう訳なのかちゃんと説明して貰えるんでしょうね!」

 早速さっそくいきり立つ様にマギが今度は俺に憤然と詰め寄ってくる。

「まあまあ、マギの言い分はごもっともだが此処は姉御として器量のあるところを見せて於かないとね~ぇ」

 鼻先がくっつく程に顔を突き合わせる様なマギの迫り方に――いつもの如く俺はひらりとかわしながら彼女の耳元でそう囁いた。

「あっ~ん! こらっラリーったらこう言う時だけ……まあ、いいわ」

 ぷりぷりした調子で頬を膨らませながらもその裏側でほんのり頬を赤らめてそうマギが返してくる。何とか凌いだぞ――と。でも、まだアンの事では俺もわからないことが多そうだった。そうこうしているとウギが痺れを切らしたように話し始める。

「ラリーそろそろ出掛けるなら行かないと――時間が迫って居るぞ」

「あっ、そうだな。兎に角表向きはウギが呼び出された事を利用しての拝謁だからな」

 俺達は取り敢えず各々の役割を再確認して、ウギの従者としてペルピナル神魔殿に赴くことにした。無論、同行するのは俺とサギ、ウギ、マギとアンである。ロミルダ嬢は宮殿内での情報収集の為、そしてヴァルはもしもの時の後方支援として宮殿にて待機として貰った。其処でも擦った揉んだが在ったが……。

「ラリーどうしてあたしは留守番役なの?」

 ヴァルが涙目で俺に懇願してくる。そう言うことになるとは思っていたが此処は心を鬼にしてヴァルに納得して貰わねばならない。

「ヴァルの力は良く知っているだからこそ、ひとりになるが宮殿でのもしもの時に対応する勢力として期待してのことだ。みんなで此処を空けて行っては其れこそ魔族側の思惑通りになってしまうこともあるだろう」

「其れはそうだけど……それがあたしなの?」

「そうだよ、ヴァルにしか頼めないことだからね」

「うん――じゃあ帰ってきたらね、あたしの頼みを絶対に聞いて貰うから!」

「……ああ、わかった」

 何となく心重い約束のような気がするが此処はヴァルの意を汲んで二つ返事で返しておくことにする。

 そんな風に何とかペルピナル神魔殿へのメンバーを決めると遅ればせながらも馬車に乗り込み目的地に向かう事とした。

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