第8話改稿 ウギさんヨル爺の関係は!
ラリーはコテージでの警護に戻ってから、ヨル爺に元男爵家の姫様の話をもう一度聞いてみることにした。
「なあ、ヨル爺。爺の知り合いの姫様ってどんな
「なんだラリー藪から棒に、ああ、儂の姫様のことか? 88の59の86じゃったぞ、しかもFカップじゃぞ! 興味を持ったかの、お主も
――やっぱり、その数値か! ……ふ~ん、あの感触がFカップか! と、言うか俺はどちらかと言うと腰派? なのか……いや待て待て、尻派かな?
ラリーは自分の触感からなんやら確信した様ではあったが――――思考が逸れる前に、それ以外の視覚情報が欲しかった。
「他に何か特徴は無いのか? そう、例えば髪の毛の色とか。目鼻立ちとか。あるだろう、他にも……」
「う~ん、どうじゃったかの~ぅ? 髪の毛の色かのぅ? 下の毛はのぅ綺麗な銀色じゃったの、確かそうじゃ」
――おいおい、ヨル爺、姫様のすっぽんぽんの話しは三歳って言ってなかったけ? 下の毛って、爺はいつ見たんだよう? それって、それで何で髪の毛の色は覚えていないのか俺にようにはわからん! それじゃ、ただのスケベ爺じゃん! (俺も人のことは言えない今宵だがな……反省)
「オイ、爺?! 下ネタじゃ無くて、髪の毛の色だぞ?」
「ラリー悪いのぅ。寄る年波には勝てぬのぅ、興味が無いことはてんで物忘れが早くなってのぅ」
「ぅ~っ。爺! それって歳のせいじゃない! いっぺん死んでこい! ってか、さっさと地獄に落ちやがれ!」
何故か爺のスケベ心に異常にむかつくラリーだった。まあそんなこんなで結局、ヨル爺とはバカな話にしかなりゃしない事に今更ながら気が付くのであった。
――まあ、ここまでは前置きだ本題はこれからだ。
「ヨル爺、爺の
「そうかのぅ、自分では解らんもんじゃて、まあ、仕えた男爵家は皆が皆こんなもんじゃったから特段気にしたことは無かったからの。
「皆が皆って言うことは姫様もなのか? 女の
「う~ん、どうじゃったかの?」
「……頼むよ、爺、思い出してくれ」
「うぅ……んむっのぅ」
「お~ぃ」
「うぅ……んむっのぅ」
「……はあっ?」
「おう? っんのぅ! そうじゃ、そうじゃ、儂の
――姫様の言葉遣いは、ヨル爺譲りか! 決定的だな、これは! 明日が楽しみだ。
ラリーは取り敢えず確信めいた状況を感じ取れたので、最後に聞いておきたいことをヨル爺に訊ねる事にした。
「もしもだよ、ヨル爺? 姫様がもし見つかったらどうするんだ?」
「そうだの~ぅ、……解らんじゃのぅ? 取り敢えずその後は仕えさせて貰いたいかのぉ? まあ、此ばかりはそうなってみない事には解らんじゃのぅ」
――え~っ、やっぱり姫様に付いて行く気かよぉ。それはそれで色々と面倒な事になるわな。ぅ~っん。まあ、今考えても解らない事で悩むのは止めておこう。時間の無駄だ。それにしても、明日のウギ達の事はどういう風に話しておこうか? ヨル爺には少ない味方のひとりには、なっていて貰わないとその後がしんどくなりそうだからな。
「しかしの戻って来るなりどうしたのじゃ? さてはて見回りの時に何かあったのかぇ? 変じゃぞのぅ? ラリーよ!」
と、ヨル爺の指摘に思わず引きつり顔で答えを探すラリーだったが。
――爺、鋭すぎるだろう。この話の筋から何か感じられるのか? その年の功、なかなか侮れないな。ヨル爺!
ラリーはヨル爺の評価を若干だがプラス査定しておくことにしながらも、差し障りの無い返答を探す。
「いや、特に何も無かった。人の気配が感じられたので確認しに行っただけさ。まあ、冒険者がグルムを連れて野宿していただけだったよ。」
「ほう、そうであったかの。だいぶ時間が掛かっていたようであるがのぅ」
「いやまあ、その冒険者と色々と話し込んでしまったかな」
――今は、ヨル爺には冒険者の性別は言わない方がいいだろう。
「その中で、ヨル爺の言っていた男爵家の話に似た内容を聞いたんだ。確か、
「えっ! そうじゃったのか、もしかして姫様かも知れぬじゃて。
勢い、ヨル爺が色めき立ってきて話を続けてくるが、ここでその対応は今は出来はしない為、話しを逸らす事に努める。
「
「おう、そうかそうか、それは良き配慮じゃの、有り難きことよ」
「だからヨル爺も、近衛師団長の説得に力を貸して欲しいのだけれども良いかな」
「あい、解ったぞ。儂もラリーの後押しに是非とも協力するぞよ」
「助かる! ヨル爺、恩に着る」
「いやいや、そんな事、造作も無い事よのぅ。儂こそ、もしかしたら姫様の安否が解るかも知れぬからのぅ、此方こそじゃ」
――ふ~うっ、と。
ラリーは何とか真相を隠しながらも、ヨル爺の協力を得られた事に安堵して、大きく溜息を付いた。
――まあ、姫様の安否情報どころじゃ無くなるわな、明日は……きっと。
明日のヨル爺の様相をひとり想像して含み笑いを押し殺すのに苦労していたラリーであった。
――まったく明日が楽しみなことで。
まるで夢物語のような出来事が全て昨夜の事であったとは、ラリーの中では今も色々な思いが渦巻いていて、とても過ぎ去った時間とは思え無いでいた。それでも時間は流れ、二人の徹夜の警護明けの朝が訪れようとしていた。
「ふぅぁ~っ、昨夜は何事ものうて、良かったじゃの……眠いのぅ、やはり夜間の警護は爺にはキツイってのぅ」
目に薄く隈を作りながら、大きな
「ヨル爺、部屋に戻って少し仮眠しよう、このままじゃ、この後の任務に支障をきたすからね」
ヨル爺も、この提案には異存が無さそうで、二人揃ってコテージから引き上げる事にした。
ラリーもウギ達が
部屋に戻ったラリーは取り敢えず倒れ込むようにしてベッドの上に寝転がった。流石にフランとガーリアの二人の姿はもうそこには無かった。昨晩の警護の交代をドタキャンした都合上、多分早朝からの代替え警護要員にでもさせられているのであろう。身から出た
まあ、今となっては彼のこの眠気状態から言えば、誰も居ないと言う環境はすごく有難かった。これで、
そんなことを考えながらも、睡魔はあっという間にラリーの意識を奪い去っていった。
――おゃっ! サギさんにウギ? ふたりとも
ラリーは夢の中でふたりに出会っていた。
「ラリー様! この
「ラリー、お主はこのおばさんといい仲なのかのぅ?」
「う~っ、あなたねぇ! おばさんとは誰の事ですか? お・ば・さ・ん~てぇ!」
――いきなり二人して自分に突っかかってきたけれど、いったいどうしたんだ?
「
「えっ、わ……わたしは……十七よ!」
「それじゃのう、
「はぁ~っ? いっこしか違わないじゃ無いの!」
「んっ、いっこでも、十こでも年上は年上じゃろう? じゃぁ、やはり、おばさんじゃろうにのぅ」
「んまぁ! もう一回言ってみなさい! 仕舞いには怒るわよ!」
「なあに、気にしなければいいだけのことじゃろうにのぉ? 小さき胸の……
――いやいや、サギさんだって胸は大きい方だと思うよ、ウギが巨乳系なだけだろう。
と、サギを擁護する訳では無いが……そんな事を思うラリーであったが――――争いは続く。
「――――自分がちょっとばかり……む、胸が大きいからって~ぇ、ふん!」
――あ~ぁ、サギさんほんと怒っちゃったよ。どうするんだ? これ!
「
「え~ぇっ、それは……」
――ほらっ、サギさんの見目麗しい顔が、刻々と険しくなってきたよ、拙いよ、これは!
「あ~らぁ、ラリー様っ、この小娘の言う事は誠なのですか? まさか嘘ですよわよね」
「あ~あ~ぇっと――――う~ぅ――――サギさんっ~」
「……ぇ、まさか……ラリー様が?」
「ふん! どうじゃ、
「
と、ラリーは一瞬大きく身を構えて、防御の姿勢を取った――――っぬぬ!
ドッドン――――と、ラリーはベットから落ちたところで目が覚めた。
「ゆ……夢か! ふ~っ!」
全身びっしょりと脂汗をラリーはかいていた。
――いやぁ、笑い事じゃ無いぞこれは! 良かったよホント夢で……いや、よくないぞ、これはもしかして正夢か?
ラリーはまだ、混乱している思考回路の中でこの先に起きるであろう出来事の予兆として今の夢の物語を
――ウギの発言はもしかしたら爆弾になるかも知れないな。昨夜のことはサギさんには知られるわけにはいかないな。これはウギに口止めをしておかないと流石に拙いな。
そんなことをツラツラと考えているうちにウギ達が遣ってくる時が迫ってきていた。
「ふ~っ、全く仮眠落ちが良かったのか悪かったのか、此では解らないな!」
軽く睡って疲れを取ろうとしたことが、逆にげっそりすることになってしまった為、ラリーは自虐的思考に陥っていたのだった。
――まあ、早めにこのことに気づいたことを良しとしておこうか。
自分にそう言い聞かせてウギ達のことを近衛師団長に申し出る為、ラリーは部屋を後にした。
途中、ウギ達の護衛師団への参加許可の申し出を後押しして貰う為に、ヨル爺の部屋を訪れた。
「ヨル爺、入るよ? 起きてる?」
部屋のドアをノックしてラリーはヨル爺の部屋に入っていった。
果たして、ヨル爺はそこに居た。ベットから上体を起こして丁度、今起きたところのようである。
「おはよう、ヨル爺。寝起きの所、恐縮だがこれから近衛師団長の所へ行く。一緒についてきて貰えないか? 昨夜、ヨル爺に相談した件を頼みに行くんだ。ヨル爺にも近衛師団長の説得の為に助言をお願いしたいが、良いかい?」
「……んっ、ああっ、おはようのぅ、ラリー……ぉお……わかっておるぞ、大丈夫だのぅ」
寝ぼけ
――大丈夫かな? ちょっと不安だな? 本当に大丈夫かな? この爺さん。
心の中でラリーはそう呟く。
ヨル爺の支度は程なく終わり、二人して部屋を後にした。
「なあ、ヨル爺?」
「んっ、なんじゃのぅ?」
今一度、ラリーはヨル爺には聞いておきたい事があったようだ。
「ヨル爺にとって、その姫様の存在ってなんなんだ?」
「そうよのぅ、なんと表現すればいいじゃろう。まあ、幼い頃から仕えし姫様じゃからのう、普通は愛娘のようなとでも言うんじゃろうがのぅ。それとも、ちと違うでのぉ」
ヨル爺はそんな風に喋りながら遙か遠くの方を見ている風だった。
「まあ、
――此はまた大きく出てきたぞ。それでは希望の星が見つかったら離れられなくなるって事だろうが。
「ヨル爺、なんかすごい想いに見えるよ」
「んっ、老いぼれの戯れ言よのぅ、気にするでは無いぞ――まあ、姫様をもう一度この手でおもいっきり抱き締めたいと言うのもあるがのぅ、なにせ88の59の86じゃぞ、しかもFカップ!」
――おいっ! ヨル爺、最後はそこか! やっぱりエロ爺生命力のエロエネルギーの為か?俺の感動を返してくれ!
そんな馬鹿な話をしながら歩いているうちに、いつの間にか昨夜の警護区域だったコテージへと
「ニコラス師団長殿、少しの間お時間をお貸し頂けませんか? 警護メンバーの人員についてご相談したい事があります。護衛師団にとっても決して悪いお話では無いと思います」
ラリーはニコラス師団長に対して単刀直入に話しを切り出した。
「君は確か、ラリー君だったね。どうしたんだ藪から棒に、今は出発前の慌ただしさの中だ、余り時間が取れないので手短に頼むよ」
「ありがとうございます。ニコラス師団長殿、今回の警護メンバーの人員構成について自分は魔術師系のメンバーが不足していると感じていますが
「ふむ、ラリー君の見立ては確かなんだが魔術師は
ニコラス師団長は
「ニコラス師団長殿そこでなんなんですが、昨晩、コテージ警護の巡回の折にいい人物に出会いまして、自分から是非とも今日からの警護を手伝ってくれないか頼んだみたのですが快く引き受けてくれると言うので師団長殿の許可を頂きたく、この様に早朝から不躾ではありますが参った所存です」
ニコラス師団長はビックリした顔つきに変わってなにやら思案を始めた。
――これはもう一押しだな。
ラリーはそう考えて最後の切り札を出す事にした。
「師団長殿、その相手はやり手の魔法剣士とお見受けした次第です。しかも、そのお方が戦ってねじ伏せた
「なにっ、聖魔獣ガルムを使役しているとな、それは誠か?」
「はい、本当の事で御座います。そして、そのお方はここに居りますヨルガルマ殿のお知り合いのようなのです、依って素性も確かなお方であります」
いきなりの無茶ぶりにヨル爺は目を点にして驚いている。まあ、それもこれも真実を知れば言っている意味が間違いでは無い事に気づくはずだからラリーは気にしないで話しを続けた。
「ヨルガルマ殿の知り合いとな、それは本当なのか?」
ニコラス師団長はヨル爺の方に向き直って問いかける。
「……たぶん、そのようじゃのぅ。……ラリー君の話によるとのぅ、師団長どのぉ」
「――――ヨルガルマよ、
「ありがとう御座います。ニコラス師団長殿」
「それでは私はこれで失礼するよ、後の事は小隊長と調整してくれ、それでは頼んだぞ」
「はい、ご配慮、感謝いたします」
ラリーとヨル爺は敬礼をしてニコラス師団長の後ろ姿を見送った。
師団長が去った後、直ぐさまヨル爺が文句を言いにラリーに詰め寄ってきた。
「のぅ! ラリー、無茶ぶりにも程があるぞのぉ。儂の知らん相手の事を聞かれてものぅ、儂は頭の中も外も真っ白になったじゃて、まあ、白髪は元々じゃがのぅ」
「ヨル爺、さっきは悪かった、この通り謝る。ただ、会えばわかると思うし、ヨル爺にとっても悪くない事だと俺は思っているよ。此だけは信じて欲しい」
「いやのぅ、ラリーの事は疑ってはいないがのぉ、でも、ホント誰なんじゃのぅ?」
――まあ、ヨル爺よ、後でゆっくり度肝を抜かれてくださいって! ほんとびっくりだろうな~ぁ。
そんな事を思いながらラリーはニヤリとほくそ笑んでいた。
ラリーもウギとヴァルからの依頼を無事完遂させたので、ひとまず肩の荷が下りた気分のようだ。
ヨル爺と二人して、出発の準備に取りかかる為に持ち場に戻る事にして、ラリーだけが持ち場に戻る前にウギとヴァルを迎えに出かけた。
「さてと、ウギは喜んでくれるかな?」
温泉宿の庭先では到着時の時のようにリッチモンド家のメイドさんやら使用人の方達がてきぱきと出発の準備をしている。護衛師団のメンバーも今日は魔獣が俳諧している場所を通り抜ける事から、昨日より念を入れて武具の準備をしていたようだ。そんな中で、ひときわ男どもが集まり騒いでいる場所があった事にラリーは気付いた。無論と言うかお決まりのように、その中にはガアーリとフランの姿もあった。
「んっ、何かあったのかな? なんだこの人垣は?」
ラリーは何の気なしにその人垣の方へと足を向けた。
「よう、ガアーリにフラン、おはよう」
先に人垣の集団に紛れ込んでいた二人に声をかける。
――しかし
ラリーは記憶の端にあった出来事で憤慨した心を思い出してしまったが、それはサギが奴らに既に罰を与えていたので今は不問に付す事にした。しかも、奴らの髪型はまだ崩れきったアフロヘアーもどきのままだったし……と、ラリーは思わず笑いが込み上げてくるのを懸命に押さえていた。
「あっ……、ラリー……おっ……はよう……ぅ」
ふたり共、
「……昨日は……悪かったよ、ラリー」
素直にフランが謝ってきた。
――まあ、しょうがないから許す事としようか。
ラリーはそう思いフランに言葉を返す。
「まあ、いいさフラン。ふたり共、天罰は既に下っているようだしな。……それよりなんなんだ、この騒ぎは?」
ラリーの問いにふたり共、口では答えずに騒ぎの中心地を指でさした。
そこには、庭先の大きな石の上に座っている銀髪ショートカットの美少女と彼女を守るかのように周囲に
「あ――――っ!」
ラリーは思わず大声で叫んでいた。その声に驚いた人垣の目線が一気にラリーの方を向く。と同時に皆の注目の的の御仁達もラリーを見つけた。
――しまった。いや~っ、まずったわ!
「い――――たっ! やっと見つけたぞ、おっそいのじゃ!」
銀髪ショートカットの美少女はそう叫ぶと石の上から飛び降り一目散でラリーの方へ飛ぶように駆け始めた。そして、彼女の後を追うように
ラリーの前まで来た彼女はこれまた昨晩のように満面の笑顔を携えてラリーに挨拶をしてくる。
「おはようじゃ、ラリー」
「ああっ……おはようさん、ウギ」
ウギの満面の笑顔とは対照的にラリーはまったく締まらない顔で挨拶を返す事になっていた。と、ラリー自身もそう自覚していたようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます