#17 水族館
「着いたぞ!」
今日は水族館に来た。
普段のテンションはそんなに高くないお父さんだが、今日は誰がどう見てもわかるぐらいにはテンションが高く、かなり張り切っているみたいだ。
「お父さん、そんなにはしゃいでるとすぐ疲れちゃうわよ。」
「あっ、ああ、うん。そうだな、うん、うん……。」
お母さんに呆れるように指摘されて、ついさっきMAXまで上がったテンションがみるみると下がってゆく。
「
「うん!」
チケットを購入し入場した僕は、ちーちゃんに手を引かれて先へ進む。
するとすぐに右側の壁に伝う水槽が目に入った。身長より少し高いくらいで、とても長くて、まるで川のようになっており、中には小さな魚がたくさん泳いでいる。
「えーっと……、これ何……?」
振り向くとちーちゃんが何かを指差しながら、声を震わせていた。不安げに見つめる先、水槽の中には、黒い大きなモノがいくつか固まっていて、それらは折り重なりあっており、時折うにょうにょと動いている。
「オオサンショウウオだって。」
「えー……、気持ち悪いよ……。」
「そうだ、ちーちゃん!このオオサンショウウオ達が何て言ってるか聞いてみようよ!」
「えー……、オオサンショウウオにするの……?」
僕に同意しつつも、明らかに嫌そうな雰囲気を出しているちーちゃんを横目に、僕は言葉を唱える。
「自然よ、私に力をお貸しください。」
教えてもらった通り、まわりの音を聞かないようにし、意識をオオサンショウウオに向けた。すると、
「グー……。グー……。グォッ。」
と、声とは思えない音のようなものが聞こえた。それもたくさん重なったように。
これはまるで……
「「いびき……」」
後ろで一緒に魔法を試していたお母さんと声が重なる。
「それとも、両生類には使えないのかしら。」
「へー、オオサンショウウオって両生類だったんだ。」
そんな調子でその後も水族館全体をゆっくりと回った。
何度か魔法を試してはみたものの、大水槽では魚の数が多く1匹1匹が何を話しているのか分からず、また小さな水槽の魚はそもそも魚が小さいからか「声」自体が小さく、回りのお客さんの声や雑音で聞き取ることさえ困難だった。
「んー、これは詐欺に遭った気分ね。」
そうお母さんは言っていたが、今日は本当に消化不良という言葉がぴったりの一日となってしまった。
明日からはまた学校だ。頑張らないと。
そう思っていたのだが……
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「あれ?あれって
「あ、本当だ。
「って事はあれが父ちゃんってことか。あれ?奏がいねーじゃん。」
「いや、待って。あの千尋さんの隣にいる女の子、雰囲気が奏っぽくない?」
「えっ、嘘。あれ奏なん?あいつ女装してんの?まじで?えぇ……。」
「そうだよ、きっと。びっくりした……。」
「うわー。もう行こうぜ。」
「う、うん。行こっか。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます