#14 受付

魔法酔いから覚めて、しばらく落ち着いた頃、時刻は朝9時、すでに魔法講習会の受付が始まっているようだった。

お母さんは講習会の運営のためにどこかへ行ってしまったらしく、僕はちーちゃんと二人で行動する事になった。


魔法講習会の会場には既に30人ほど集まっていた。今日は11月の平日なのに、そんなに多くはないが同い年位か少し上くらいの子も数人いる。

夏休みや冬休みになると子供の参加者も多くなると聞いていただけに少し驚いた。

ちなみに僕とちーちゃんはお母さんの計らいで、学校は欠席となった。


「じゃあ……、並ぼっか……。」

「うん。」


そう言って列に並ぶ。

前には僕と同い年くらいで紺色のジーンズに白いパーカーという結構地味だけどかわいい服装の女の子がお母さんと手を繋いで並んでいた。

向こうもこちらが気になっているようで、ちらちらとこちらを見て、何か言いたげな様子だったが、受付の番が来たので受付の人と話し始めた。


そして、その前の子が受付を済ませ今度は僕たちの番が回ってくる。


「「おはようございます。」」

ちーちゃんと声を合わせて挨拶。


「はい、おはようねー。名前を教えてくれるかな?」

関森せきもり千尋ちひろ……、です……。」

「はい、関森千尋ちゃんねー。」


20代前半くらいに見える受付のお姉さんはこちらを見ることもなく、名簿を真剣に見つめながら淡々と受付作業をこなしていく。


「はい、もう一人の子は?」

木柳きやなぎかっ……、かっ……、かなでです。」

「はい、木柳かなでちゃんねー。木柳……、木柳……、木柳!?!?」


受付のお姉さんは突然声を大きくして顔を上げた。


「もしかして!木柳会長の!?」

「あっ、はい……。」

「あー!そ……じゃなくて、かなでちゃんかー!大きくなったねー!」


そう言って僕の頭を少し荒めに撫でた。


「あっ!千尋ちゃん!いたの!おはよう!」

「おはようございます……。たった今、受付済ませたところですよ……。」


これには僕もちーちゃんも苦笑いしてしまった。


「ごめんねー。奏ちゃんは私のこと覚えてないかなー、さすがに。最後に会ったの奏ちゃん3歳ぐらいだったもんねー。いやー、ここでまた会えるとは思っても無かったよー。何しろ男の子で初めて魔女になったんだってー?あっ、これはあんまり言っちゃダメなんだっけ……。おっと、自己紹介を忘れていたね。私は遠藤えんどう柚子ゆずって言うの。よろしくねー。柚子でいいよー。」


何というマシンガントーク……。


「柚子……さん、よろしくお願いします。」

「よろしくねー。」


僕とちーちゃんは軽く会釈をしてから列を離れた。列の後ろに並んでいる人から少し変な目で見られていたようだが……。


「ちーちゃんは知り合い?」

「うん……、講習会の度に会うの……。裕子さんの弟子……というよりお友達って言う方があってるのかな……。よくしゃべる人で……。」


そう言ってちーちゃんは右手をグーの形にして少し緩んだ口元を隠す。


講習会開始まであと30分。

さっきの列の前にいた子がまたこっちを見ている……。

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