#13 魔法講習会

今日は魔法講習会、その当日の朝8時。

今はまだ家にいて、ちーちゃんと一緒にお母さんの準備を待っている所だ。

今朝から心臓の音が大きく早く鳴っていて何だか落ち着かない……。


ちなみに今日の服は、膝より少し長いくらいの白いスカートに、この前ショッピングセンターで新しく買ったピンクのトレーナーで、いつもの髪の長いウィッグも付けている。


「OK!じゃあ千尋ちゃん、かなでちゃん、行くよ!」


準備を終えたと思われるお母さんが隣の部屋で叫んでいる。

かなでと呼ばれるのは、、最初は変な感じだったけど、最近は皆がそう呼んでくれるようになって段々と慣れてきた。


「そういえばこれからどこに行くの?」


結局「朝8時までに準備をすませるように」という事以外はあの夜から何も知らされていなかった。魔法講習会がどこで行われるかさえも。


「んーっと……、あそこは……どこなんだろう……?」


ちーちゃんも具体的な場所はわからないようで首をかしげている。


「どんなところ?」

「外なんだけど……、とても広い芝生の広場で……」

「へー!」

「瀬戸内海にある無人島よ。魔法協会が管理している島なの。」


待ちくたびれたのかお母さんが覗きにに来た。


「あっ……裕子さん……、ごめんなさい……。」

「ごめんなさい。」


そう言って廊下へ出て、隣の部屋へ移る。

その間にもやはり気になるので聞いてみる。


「瀬戸内海の無人島って、どうやって行くの?」

「魔法を使って行くのよ。」


僕はちーちゃんに小さい声で聞いていたつもりだったのだけれど、どうやらお母さんにまで聞こえていたみたいだ。


「ふふっ……。」


ちーちゃんは思わず笑ってしまい、顔を背けて、手で隠す。


「さあ、おしゃべりはここまで。じゃあ千尋ちゃんは私の右手に、かなでちゃんは左手に手をつないでね。」


普段は入れてくれないお母さんの部屋に入り、言われたとおりに横一列になってお母さんを中心に手をつなぐ。


「そうしたら、目を瞑ってね。絶対目は開いちゃダメよ。」


わかったと言いつつも、そんなことを言われたらとても気になってしまう。

一度目を瞑った後、少しだけ薄目を開けてみることにした。


お母さんは僕達が目を閉じたのを確認してから、一度深呼吸をして、僕の手を強く握った。

するとその瞬間、一瞬ふわっと体が浮いたかと思うと……

僕はそのまま気を失ってしまった。


目を覚ましたとき、僕はふかふかの芝生の上に寝転がっていた。

目を開けると、視界の隅から心配そうな顔をするちーちゃんが入り込んできた。


「大丈夫……?」

「う、うん……」


一度深呼吸してからゆっくりと起き上がり、肩や背中についた土や葉っぱを払う。


「よかった……。裕子さんも心配してたよ……。」

「何が起こったの……?」

「ちょっと難しい話になるけど……、裕子さんみたいな、自然の力を借りなくても自分の魔法力だけで魔法を使える人っていうのは魔法力がとても濃いの……。空間系の魔法、特に移動の魔法は周りにも魔法力が広がるから、それが目に入っちゃうと耐性がない人は酔っちゃうの……。」


それ、先に教えてよ!

でもお母さんは本当に凄い魔女だったんだなぁ……。

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