#12 とある夜のお話
”魔法講習会
それは月に一度、魔女協会主催で行われ、地域の魔女達が集まり魔法を共有したり、先輩魔女に未知の魔法を教わることができる講習会です。魔法界では最も歴史の長い講習会の一つでもあります。
魔法というものは、一種の「音」のようなものであり、魔女が魔法を使うと微弱な魔法力の波(「魔法の音」と一般的に言われている)が体から放出されます。それを「聞き取る」事で初めて同じ魔法を使えるようになるのです。
この講習会では、新たな魔法を習得するために、先輩魔女の「魔法の音」を聞くことを目的に開催されています。
皆様のご参加をお待ちしております。”
「って書いてあるけど……、わからないよね……。」
苦笑いしながら読み上げるちーちゃんにつられて、思わず僕も苦笑いしてしまう。
今のは、ちーちゃんも毎年夏休みや冬休みに参加している魔法講習会の案内チラシに書かれているものだけど……
「うん、全然わからないよ……」
「私もね……最初はよくわからなかったんだけど……、最近だんだんわかるようになってきたから……、奏くんもだんだんわかるようになるはず……だよ……!」
何だかフォローしてくれているのか、そうでないのか微妙ではあるけれど、そんなものなのかなと、僕はその言葉ををすんなりと受け入れた。
そもそもなぜこの様な状況になっているのか、元はと言えば、お母さんが僕に魔法講習会に参加する事を勧めた事だ。結局そのすぐ後に、
「仕事があるから!ごめんね!千尋ちゃん、あとはよろしくね!」
と言って、説明をちーちゃんに全部放り投げて出かけて行ってしまったのだ。
「奏くん……、まだ魔女になりたてだし……、不安だったら……今回は参加しなくても良いと思うよ……?でも……」
「でも?」
「うん……、魔女の友達ができたり、他の先輩の魔女と知り合えるから……、余裕があるなら行ってみるのも良いと思う……。」
正直、女の子の姿のまま外に出るのはまだとても怖い。そんな状況で他の誰かと話せる勇気や自信なんてまったく湧いてこない。
でも、このまま魔女の知り合いは家族だけ、というのも嫌だ。他の魔女の人にも会ってみたいし、話してもみたい。魔法も沢山教えて貰いたい!それにもっと魔女の世界を見てみたい!!
いきなりで大変かもしれないけど僕なら、できる……はず……!
「僕、行ってみるよ!」
「うん……!わかった……!それなら私も今月末の講習会に参加するね……!一緒に行こう……!」
そう言って僕の手を取って、両手でそっと包み込んでくれた。
ちーちゃんが一緒にいてくれるのなら、とても頼もしい。
「あと……もう一つ……良いかな……?」
「なに?」
「
僕は面と向かって
でも、何だか心が少し温かくなって、嬉しかった。
「うっ、うん!」
「じゃあ……
「うんっ!!」
今日はいい夢が見れそうだ!
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