#11 服とアレとアレ
「じゃあ……そろそろ、服……見に行こっか……!」
そう言ってちーちゃんは一度気合を入れるように腕を捲ってから、ほぼ味のしない何かの味の水を飲み干した。
「奏くんはどんな服が来てみたいの……?」
適当に店の前を歩きながら、店の中を外から覗き込んでみる。
今まで魔法が使いたくて女の子になりたいと思う事はあったけど、いざ本当になってみると服とかその他の事は全く考えていなかったな……。
「んー……、正直あんまりよくわからなくって。でも11月に入って、これからもっと寒くなるだろうから、やっぱり暖かいのがいいかな。」
「それなら……トレーナーとか……どうかな……?例えば……これとか……?」
そう言ってちーちゃんは近くにあった店に入って、服を手に取った。それは、灰色の少し分厚目で大きめなトレーナーで、男の子でも着れそうな服だった。
「んー、これで魔法を使えるのかな。もっとこう、何というか、女の子らしい服のほうがいい……と思う……」
そこまで言って、突然恥ずかしくなった。
でも欲しく思ったのは嘘ではなかった。
結局、同じようなデザインのピンク色のトレーナーを選んだ。胸元に白色の文字で何やら英語が書かれてあるけど読めない。
「買い物はこれで終わり?」
「んー……、あっそうだ……、もう一つ買っておかないといけないものがあって……。」
「なにを買うの?」
ちーちゃんは急に顔を赤らめて俯いてしまった。
そしてボソッと一言――
「し……、下着……。」
それを聞いて僕の顔も赤くなる。
その後の事はあまりの恥ずかしさであまり覚えていないが、ちーちゃんが白いキャミソール3枚に、ピンクのリボンのついた白いショーツと白とピンクのボーダーのショーツをそれぞれ2枚ずつ選んでくれた。
改めて落ち着いた時、再びフードコートの席に座っていた。
現在時刻は16時半。母には18時までには帰るように言われているけど、帰るのに多めに1時間と見ると、17時頃にここを出れば良い計算になる。
「あと……30分……あるね……、どうしようかな……。」
ちーちゃんが中学校に入学した頃から持つようになった細いかわいい腕時計を一度見てから、周りをキョロキョロと見回す。
そして、何か良いものを見つけたかの様に顔をパッと輝かせてから、もう一周周りの店を見回して、口を開いた。
「ドーナツ……とか、食べる……?」
「うん……!」
昼ごはんを食べて以降、ずっと肉体的にも精神的にも疲れていたので、甘い物は今なら何でも食べれそうだ。
「ご飯が近いから……、裕子さんには内緒にしてて……ね……?」
そのまま二人でドーナツ店の列に並んだ。
いつもこの店には迷わされる。何しろ種類が多く、すべてが美味しいのだ。
ただ今回は事情がある。それは、今回はちーちゃんがお小遣いで払ってくれるのだ。だからあんまり高いのはさすがに頼めない……。
「僕は定番のこれにするよ!」
「じゃあ……私も……それにしようかな……。」
丸い8個のボールが輪っか状にくっついたそのドーナツはもちもちで美味しいのに1つ100円で食べれるのだ。これを選ばない手はない。
会計を済ませて、もう一度席に着く。
「早く……食べないと……時間が……。」
店の混雑が想像よりも酷く、思っていたよりも時間を取られてしまった。
ゆっくり味わう事が出来なかったのは残念だったが、今日は何だかとても楽しかった。
ちーちゃんとまた買い物に行きたいな……!
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