#8 かなで

かなで


それは僕が女の子として生まれた時に付けるつもりだった名前だそうだ。

そして今回魔女協会に魔女として登録することになり、その際の名前をかなでにすると言う。


ちなみに魔女協会というのは、全世界の魔女を統括する組織で、仕事の割り振りや、家系管理・保護、魔法紛争解決などの業務を行っている。登録名は原則本名だが、お母さんは日本支部の理事なのでそこは何とかなる、らしい……。


そして、僕はその後、白のワンピースを着たま寝る直前まで過ごす事になった。


お母さんはさっきからネットで僕に着せようとしている服を探しているし、お父さんは最初は僕が女の子の服を着る事に懸念していたが、今は何だかんだで嬉しそうである。


自室に戻った僕は、改めて一人で鏡の前に立ってみた。

そういえばこうやってじっくり見る機会は今日は無かったなぁ。


ちーちゃんは僕がかわいいって言ってくれたけど、でもやっぱりちょっと似合ってない気がする。

髪を伸ばしたらもう少しマシになるのかな……?


「んー、やっぱり難しいなぁ…」


少し女の子っぽい動きをしてみる。

内股にしたり、前で手を合わせたり、後ろを向いて振り返ってみたり……


"コンコン"

「入っても……いいかな……?」


ドキッとする。

はやりちーちゃんとはいえ、このような事をしているのを見られるのは恥ずかしい。


「う、うん。」


僕は慌てて鏡から離れて、服のホコリを落とすフリをして自らの体を叩いた。

ついでに落ち着くように一度頭も叩く……。


「その服、好き?」


「うん、でも正直言うとあまり似合ってないかな、とは思うんだ。けどやっぱりまた……やっぱりまた着たい。」


「そう……、じゃあその服はそうくんにあげるね……。」


「えっ!いいの!?」


何も考えずに素直に飛び上がって喜んでしまった。

我ながらとんでもない発言をしたと思う。

でもちーちゃんは何とも思っていないみたいだ。


「私のお気に入りの服だったんだけど、少し小さくなって着れなくなっちゃったの……。大事にしてね……?」


「うん、ありがとう!」


僕の初めての女の子の服。

お下がりだけど、とても嬉しかった。

でも、一つだけ気になることがある。


「でもどうしてこの紅葉の肌寒い時期にワンピースなの?」


「寒い……のかな……?あっ、もしかしたら普段無意識中の魔法で暑さや寒さが感じ難くなってるのかもしれない……。ごめんね、気がつかなかった……。」


魔女ってそんなものなのか……。


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