#7 悪夢のような食卓
「ところで……
ちーちゃんが僕の背後にあるドアに向かって語りかける。
「まっ、まさか……!」
僕は全く存在に気付く事ができなかった。
そう、一部始終をお母さんに見られていたのだ。
「
心配してくれたり、喜んでもらえるのは僕としてはとても嬉しい。
でも……!
でも……!!
でも……!!!
僕はそのまま後ろの戸にもたれかかって、無理矢理に戸を締めた。少し力が強過ぎたのか、ドンっ!と大きな音がしたが、とてもそんな事を気にできる余裕はない。
「奏、ごめんね!もうすぐ晩ごはんできるから、降りておいでね!」
そう言ってお母さんは階段を降りていった。
今にも泣き出してしまいそうな僕の顔を見て、ちーちゃんは苦笑いしている……。
しばらくしてお父さんも帰宅した。
全く食欲が沸かなかったのだが、ちーちゃんに腕を引っ張られて食卓へ向かった。
「
「お父さん……、おかえり……。」
「ああ、ただいま。」
仕事で疲れているようで、僕と同じく今日は一段と元気がなさそうだ。
僕は椅子を引いて、テーブルに着く。
今日の夕飯はお赤飯だった。とは言ってもレンジのパックご飯だったが……。
ちなみに魔女の世界には、何か記念すべき事があった時にお赤飯を食べる風習がある。
僕も何度か食べたことがあるが、当然自分の件で食べるのは初めての事だ。
「そうだ奏、魔法が使えるようになったんだってな?お母さんから聞いたよ。」
父の突然の言葉に、口に運んでいたお茶を思わず吹きそうになってしまった。
突然何を言う!
せっかく少し落ち着いてきたところだったのに!!
とはいえそんな事を言って、今から囲む食卓の空気を悪くしたくはない。
「うん……、まぁ……」
とりあえず軽く受け流しながら、誤魔化すように、吹きかけたお茶の続きを飲む。
「でもお父さん、女装をするのは良くないと思うな。」
「どうして?あなた娘が欲しいって言ってたのに……。」
食事の準備を済ませたお母さんがエプロンを外しながら鋭い槍を飛ばす。
「いっ、いやぁ、それとこれとは別問題で、やっぱりな……、これから成長するのに何か影響とかがだな……。」
「でもね、女の子になっている
そんな会話に僕もちーちゃんも入る事ができず、聞かなかったふりをしながら食事に手を伸ばした。
「そうだ奏、今着てみて来てよ!」
お母さんが無茶な事を言う。
お父さんは一生懸命食べるふりをして何も言わない。そして、ちーちゃんは苦笑いしつつ食べ続けている。
誰も僕を庇ってくれない……。
「嫌だ、恥ずかしいよ……!」
「大丈夫!大丈夫だよ!ほら!千尋ちゃん!さっきの服また借りるね!」
ちーちゃんが申し訳ないというような視線をこちらに送りながら、縦に頷いた。
そして僕はそのまま自室へ連行され、着替えさせられた。この服を着るのは今日でもう3度目だ。
女装をして食卓へ戻った僕を見て、お父さんはキラキラと目を輝かせながら、こう言った――
「
「あっ、そうね!魔女協会には
ん……?ん……??
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