#4 紅い絨毯

「どうして……?」


僕は膝から崩れ落ちた。

耐えられず泣いてしまった。

一瞬だったけど、確かに手の中は熱くなったのに。


どうして、どうして……


「ダメ……だったね……。ごめんね……。変な期待をさせちゃって……。」


ちーちゃんはとても寂しそうな顔をして必死に謝ってきた。


僕はちーちゃんのそんな顔は見たくない。

ちーちゃんは何も悪くない。

涙があふれる中、声を絞り出す。


「僕の方こそ、せっかく協力してくれたのに。さっき、手の中が一瞬熱くなったんだ。だから成功したと思ったから、余計に悲しくなっちゃって。」


「手の中……熱くなったの……?それもしかしたら……。もう一回……やってみよ……?今度は……桜の花びらじゃなくて……んーっと……そう!紅葉の葉っぱで!」


「もみじ?」


「そう……、桜は今は時期じゃないから……、奏くんの魔法力じゃ桜を出すのには足りないのかもしれない……。」


なるほど。

僕はちーちゃんに借りたハンカチで涙を拭き、もう一度魔法を試してみる。

今度は紅葉もみじを想像して……


「自然よ、わたくしに力をお貸し下さい!」


するとさっきよりも手が熱くなり、またその時間はさっきよりも長くなった。


収まるのを待ってから、恐る恐る手を開く……


「わぁ……!!やった!!ちーちゃん!やったよ!!」


それからの事はあまり覚えていない。

魔法が使えたのがもう嬉しくて嬉しくて。


気がつくと部屋の床には紅葉の絨毯が敷かれており、ちーちゃんと一緒にお腹を抱えて笑った。


ひとしきり笑った後、また泣いてしまった。

今度は嬉しくてだけど……。


その後しばらくして、お母さんが帰宅した。

早く僕が魔法を使う所を見せたかったが、お母さんの前にワンピースで行くのは流石に恥ずかったので、自分の服に着替えた。


「お母さん、お母さん!僕、やったよ!魔法を使えるようになったよ!!」


お母さんはとても驚いた顔をしていたが、僕が真面目な顔で、僕が知らないはずの魔法の言葉を唱え始めたので、真剣に見てくれた。


しかし、また魔法が使えなくなっていた。

手の中が暖かくなることは少しもなかった。

僕は走って自分の部屋へ駆け込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る