#3 初めての魔法

初めて着る女の子の服。

初めて見る女の子の服を着た自分。

そして、初めての感情――


すべてが初めてのはずなのに、何だかとても安心する。

まるで今までもずっとこうだったみたいに。

着心地が良くて、このまんまずっと着ていたい……


そうくん……大丈夫……?」


ふと我に返る。

と同時に何故か笑みがこぼれた。


「魔法は……使える……?」


そうだった。

自分が女の子になる事に気を取られ過ぎていて、本来の目的を完全に忘れていた。


しかし、魔法の使い方がわからない。

当然、今までお母さんにも教わった事はない。


「そうだよね……魔法の使い方、わからないよね……。えっとね……?」


そう言ってちーちゃんは説明してくれた。

僕はまだ興奮熱が冷めやまぬ中、見よう見まねで魔法を使う準備を進める。


「魔法は一応初めてになるから……私が初めて使った魔法にするね……」


いよいよ今日、僕がずっと憧れていた魔法が使えるようになるかもしれない。

これで魔法が使えたらどんなに幸せなことだろう。

もう胸の中はワクワクでいっぱいだった。


そして手をおにぎりを握るような形にしてから、ちーちゃんの後に続いて言葉を唱えた。


「自然よ、わたくしに力をお貸し下さい。」


それと同時に、手の中に桜の花びらが一枚あるのを想像する。


すると手の中が一瞬だけど暖かくなった。

これは、成功したかもしれない!!


僕は自分の震える手をゆっくりと開いて確認する……


しかし、僕の手の中には何も無かった。

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