#2 初めての女装

「えっ……?」


ちーちゃんが困惑した表情で僕を見ている。

そして僕は気づいた。


「しまった……!心の声が……!」


それを聞いたちーちゃんは苦く笑い、少し考えるようにしてから立ち上がる。

そして僕の目を一度見てから、少し恥ずかしがるように逸してこう言った。


「姿だけでも……女の子になってみる……?」


今度は僕の方が混乱する。

女の子の姿……?

いやいや、そんな事をしても魔法は使えるようにはならないだろうし……

あれ?でももしかしたら使えるようになるのかもしれない……?


でも……!

でも……!!

でも……!!!


だんだん僕の顔が火照ってきて、そんな状況に耐えられなくなった僕は、思わず断ってしまった。

やっぱり女の子の格好になるなんて恥ずかしいし、そんな事を家族や友達に知られたらきっと笑われてしまう。


「本当に……いいの……?」


ちーちゃんのこういう時の押しは強い。

僕ももう一度考え直さざるを得なくなる。


「じゃあ、ちょっとだけ……試しに……」


もう僕の頭の中は真っ白だった。

ちなみに言うと多分顔は真っ赤であったと思う。


その言葉を聞いて、ちーちゃんはニコッと笑ってから、自分の洋服棚をあさり始めた。

その後ろ姿はとても楽しそうで、子犬だったら尻尾を大きく振っていただろう。

僕はそれを見るだけで何だか嬉しくなった。


そして、

「一度だけなら大丈夫だろう」

そう思い、改めて女の子の姿になる事を決意した。


「これとか……どうかな……?私が小学生の頃に着てたものなんだけど……」


ちーちゃんが手に持っていたのは、スカート部分にフリフリが付いているノースリーブの白いワンピースだった。

見覚えがある。何年か前にちーちゃんが僕の家に遊びに来た時に着ていたような気がする。


「じゃあ、着替えてくるね。」


そう言って僕は逃げるように自室に向かおうとし、ドアノブに手を回したところで、突然反対側の手を掴まれた。


「着替えてるところは……見ないから……ここで着替えて……いいよ……」


「えっ……!?」


その後に色々と話をしたような気がするが、結局ちーちゃんの部屋で着替える事になった。もう僕の頭は完全に思考を停止している。


服を脱ぐ。ズボンも脱ぐ……。

パッと振り向くとちーちゃんはこっちを見ていた。


見ないって言ってたよね……?

そう視線で訴えたが、笑って誤魔化された。


僕は羞恥心を捨て、ワンピースに体と袖を通す。が、やはり上手く着る事ができない。

僕が手こずっているのを見て、ちーちゃんが手伝ってくれた。


「いいよ……」


僕は恐る恐る半目開きで鏡の前に進んだ。

自分の姿への興味半分、恐怖半分……


そうくん、かわいい……」


鏡に映っていたのは、当然自分だ。

自分ではあまりかわいいとは思えない。

僕の髪の毛が短いためか、やはり"男感"が抜けずに残っている。

しかし、普段の自分とは少し違って見えた。


何というか、ずっと魔法が使いたくて、ずっと女の子になりたいと心の中で思っていた。

魔法はまだ試せてないけど、今その願いが少し叶ったような気がする。


完全な女の子にはなっていないけど、

僕は今、女の子なんだ――

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