第6話

最近よく視線を感じる。

その視線の先にいる奴を俺は知ってる。

雨の続くこの時期に、泥が跳ねるのなんて気にせずに走る俺を毎朝教室の窓から見ているあいつ。

可愛いとか綺麗とかよくわからないけど、本人が気にしている頬のそばかすが何故が綺麗に見える。

「セーフ!?」

なんていつも通り慌てた様子で教室に入ると当たり前の様に友達が寄ってきた。

「セーフセーフ いつもギリギリだよな」

「全部計算のうちだよ ばーか」

「お前制服汚ねーって!」

「やっべまた母さんに怒られる」

いつもの奴らと馬鹿みたいな会話をしている時もその視線を感じる。

チラッと見るとそばかすを微かにピンクに染めていて、灰色の空に不自然に浮かぶ桜のように綺麗に思えた。

あいつは雨と桜が似合う。

鐘が鳴り、あいつはハッとしたように自分の席に戻る。

俺の席より後ろにある席。

授業中にもたまに感じる視線がむしろ心地よい。

俺はその視線が気になって内容が頭に入ってこない。

最近成績が落ちたのは絶対にそのせいだ。

休み時間は決まってあいつの話題。

「絶対あいつお前のこと好きだろ」

「う、うるせーよ またそれかよ」

「だってほら また見てる」

仲のいい3人で静かに振り向く。

「あっ」

なんて阿呆みたいな声が出る。

目が合ってしまった。

無意識に凄い勢いで目を逸らす。

「なんだよ どうしたんだよ」

「なんでもねーよ」

「あ お前顔真っ赤だぞ」

うるせーなんてあしらいながらもう一度後ろを見る。

またピンクに染まった頬を見つけた。

その奥にある虹があいつを飾るもんだから。

気になってるだけだったこの気持ちが恋に変わった瞬間を俺は自覚した。

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