第11話

四月


 講義の選び方や単位についての長い長い説明会がようやく終わり、学食へ向かう一団を横目にして私は校内にあるカフェテリアへ足を向ける。

 途中、Nの話を教えてくれた名も学部も知らない二回生の先輩に声をかけられた。漫画研究会をサークルから部活に昇格するため、ぜひとも君の力をとかなんとかと言いながら、下手くそとしか形容のしようがないイラストの入ったチラシを握らされそうになり、困惑しながらも断る。全く興味がない旨を伝えると、残念そうにしながら離れていった。

 カフェ専用の券売機の行列に並びながら、きっとあの先輩がNにした相談はサークルのことだったんだろうな、と思う。いやもしかすると、あのどこから何をどう言って良いのかわからない、あの、自作のマンガを持っていって、感想を求めたのかもしれない。

 なんだかおかしな気分になってくる。


 私はしかしNなんて知らないし、村田だったか田村だったか、いや、後藤だったかもしれない名前の先輩が描いたマンガだって読んだことはない。


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