第11話
四月
講義の選び方や単位についての長い長い説明会がようやく終わり、学食へ向かう一団を横目にして私は校内にあるカフェテリアへ足を向ける。
途中、Nの話を教えてくれた名も学部も知らない二回生の先輩に声をかけられた。漫画研究会をサークルから部活に昇格するため、ぜひとも君の力をとかなんとかと言いながら、下手くそとしか形容のしようがないイラストの入ったチラシを握らされそうになり、困惑しながらも断る。全く興味がない旨を伝えると、残念そうにしながら離れていった。
カフェ専用の券売機の行列に並びながら、きっとあの先輩がNにした相談はサークルのことだったんだろうな、と思う。いやもしかすると、あのどこから何をどう言って良いのかわからない、あの、自作のマンガを持っていって、感想を求めたのかもしれない。
なんだかおかしな気分になってくる。
私はしかしNなんて知らないし、村田だったか田村だったか、いや、後藤だったかもしれない名前の先輩が描いたマンガだって読んだことはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます