次の僕との物語

白餡

一人の僕と僕の一人

 僕は孤独だった。

 ゴキブリが湧きそうなレベルでゴミで散らかったとても汚い部屋の中でそう思う。こうなったのはいつからだろうか。最近そう考えるようになった。

 新しいおかしの袋を開けながら考える。小学生の頃に交通事故に巻き込まれ両親が死んでからか。それとも親戚にたらいまわしにされた時か。それとも中校生のころに事件に巻き込まれ、何もしていないのに停学にされたからか。

 時計の針の音だけが響く部屋。時計の針は10時を回っている。

 ついさっき見たときから1時間以上経っており、腕時計の時間が早くなっていることに気がついた。父の形見の時計であり、長年愛用しているためにたまに時間がずれるのだ。

 あれから3年が経つ。僕はあれから殆ど外に出ていない。

 将来に不安はない。お金は両親の遺産がある。最悪バイトで食いつなげばいい。

 毎日がつまらない。近所で楽しそうに登校する小学生や中学生がいる通学路。外を見ればいつもカップルがいるような雰囲気の良い公園。最低限の食事をとり、後はネットで注文した小説を読んだりゲームをしたりする毎日だ。つまらなくはないが楽しくはない。

 つまらない。人生が全てつまらない。そういう毎日だ。

 そう考えているとスマホからあまり聞きなれないメロディーが流れてきた。通知が来たのだ。

 中学生の頃に友人に押され、流されるように登録したスマホだ。その時にクラスメイトととあるSNSで連絡先を交換したが、不登校になった後から一切連絡が来ない。どうせその程度の関係だったと思いこちらからも連絡をしない。

 何だと思い通知を確認すると見たことのないサイトからメールが届いていた。

「今を満足できていないあなたに!あなたは当選されました!是非お買い求めください!」

 とても怪しい。めちゃくちゃ怪しい。

 しかし人間というのはここまで突き抜ければ騙されてしまうものだろうか。サイトに飛んでしまった。

「ふぇ…ふぇる?・・・まあいっか」

 そういえば僕は英語が苦手だったんだった。

「ご注文ありがとうございます!商品は数日後にお届けします!」

 注文してしまった。まあお金には余裕はあるし良いだろう。

 やることのなくなった僕は寝ることにした。ニートの特権である。


 ピンポーン。というチャイムの音と共に目覚めた。

 時計を見ると15時を過ぎていた。まだ昼の時間だ。

 ネットの通販サイトで今は注文をしていない…いやさっきした怪しげな商品がある。そもそもどんな商品か見てすらいなかった。僕は馬鹿なのか。

 そう思うとあのサイトに腹が立ってきた。配達員には悪いが無視して帰ってもらおう。

 そこまで考えると頭が覚醒してきた。まずはスマホを取ってくクーリングオフはできるのだろうか。

 チャイムの音がなみやまない。くどい配達員だ。

 スマホを取ってみると充電が切れていた。もしかしなくても電源をつけっぱなしで寝てしまったのだろうか。

「すみませーん。いますよねー?」

 ドアを叩く音と共に聞こえてくる。いない。もしくは出たくないとわからないのか?。

 スマホを充電器にさし、パソコンを立ち上げる。

「おーい!出てこーい!」

 敬語を使わなくなってきた。もしかしてこの荷物はとても大切な、もしくは危ないものだろうか。

 改めて聞くと声の主はとても若く感じる。高校生ぐらいだろうか。この時間帯から学校に行っていないということはよっぽど貧乏なのだろうか。

 となるとお金に困っている少年が手っ取り早く稼ぐために怪しい仕事をしているということになるのだろうか。いや、考え過ぎか。

「でてこい!でてこないと鍵を空けるぞ!」

 少年の声は考えこんでいる僕の耳には入らない。

 さっきのサイト。本当に今更だったがめちゃくちゃ怪しかった。もしかしなくてもヤクザとかの裏社会関係のではないだろうか…。もしかして僕はこの怪しい薬、もしかしたらコカインとかの危ない薬によって人生が壊されてしまうのだろうか…。いや、それもよいかもしれない。今のゴミのような人生を続けるよりかは一瞬でも楽しく行きたい。

 深く考えている僕には鍵を空ける音が聞こえなかった。そして人が入ってきたことにも気がついていなかった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の僕との物語 白餡 @argon1680

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る