サンドウィン内乱 04

`18/01/02

回想にてサンドウィン家が公爵となっていたのを修正。

サンドウィン家は伯爵家です。

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父は厳格な人間だった。これが王国貴族、もしくは軍人という者なのだろうと思った。けれど冷たくはなかった。

母は賢い人間だった。社交界は上手く立ち回り、大貴族と渡りをつけ、小物たちには揚げ足を取らせない。しかし家族との関わりを疎かにはしなかった。


私は四女だ。家督を継ぐ長兄は優秀かつ健康で何の心配もない。そして姉たちが有力貴族家へと嫁ぐことでサンドウィン家の足元は盤石のものとなっていた。

普通ならば四女である私は、小さな貴族家や大商人にでも嫁ぐことになっただろう。


ただ幼い頃の私は、それに納得できなかった。

何をそこまで嫌悪していたのか、今の私としてはきちんと思い出せない。

けれど私はある日、父の剣を持ち出した。

そして見つからないように、剣を振った。納得できない現実をたたき伏せようとしたのか。あるいは嫌な自分を切り払い、新しい何かに成り代わりたかったのか。

ともかく、私は振った。振り終わったあとは、凄く疲れたけど、少しだけ気が晴れたことを覚えている。

それから私は、剣を振って遊ぶようになった。

あとから考えてみれば、父には気づかれていたのかもしれない。居ぬ間に剣を持ち出していたとはいえ、同じ場所に返していたとしても、気づかぬほど阿呆ではなかったはずだ。

そして半年ほど振り続けたとき。

私はと出逢った。


剣を素振りしていて気づかなかった私は、突然声を掛けられたことにたいそう驚いた。

声をかけてきたのは見かけ30程の男だった。つくりの丈夫そうな、しかしほつれが見える灰色のローブを着ていた。目は私と同じような赤。髪は肩までかかる黒髪。ただなんか白い筋が見えていた。当時の私は父が零していたのを聴いて、それをシラガと言うのだと知っていた。


第一印象はこうだ。

まさかこれシラガが私の結婚相手か、と。

当時の私は5歳。親と共に社交界に顔を出し、本格的な婚約相手を探し始める6歳を来年に控えた私だった。

目は鋭くとがって視線が無遠慮に私を見つめている。顔もにこりともしていない。全体として神経質そうな見た目をしながら灰色のローブからほつれた毛先がくるくると巻いている。小汚いともいう。

失礼な話だった。相手にとって。

5歳のちんちくりんに勝手に結婚相手として酷評された挙句これシラガ呼ばわりされるとは。


けれどその彼と逢ったからこそ、今の私があるのだ。

魔法を習い、第二王女の近侍騎士となって〝紅蓮〟の二つ名を受け継ぎ、リモニウム伯爵家に嫁いでリリアを授かった私が。


だから私は感謝している。

彼に。そして彼と私を合わせてくれた父に。女だてらに魔法と剣を学びたいといった私を支えてくれた母に。

私にとってサンドウィンとは、そんな思い出の詰まった場所だ。


―――だからこそ、私は往こう


馬に跨ったマルグリッテ・リモニウムは右手に持った槍斧ハルバードを掲げた。

その白銀の柄から鋼鉄の刃に至るまで、紅い紋様が描かれている。蛇のようにうねりながら刻まれたその魔力触媒は、私が行う魔法発動を助ける。

私が発動したのはお決まりの[活力]。私を乗せる馬に対して、そして私自身に対して発動し、その肉体の能力を高める。魔力触媒は紅の光を放ち、私の槍は燃え上がっているかのように輝く。


そして、吼えた。

「突撃準備、前面横隊!進め!」


[活力]によって高められた身体機能は、ただの渾身の発声で大気を波打たせる。それは私に従うリモニウム家魔法騎士100人の鎧と肌を叩き、喝を叩きこむ。

気合を入れた兵たちに、槍の穂先で目標を示す。

敵魔法部隊。先ほどから味方部隊に複合タンデム魔法を降らせてくれた敵だ。彼らは150人規模で中実方陣を取っている。指揮魔法師の確実に声を届かせ、発動のタイミングを合わせるための後衛魔法師基本陣形。

連続して魔法攻撃を行っているため移動が遅れ、後衛本隊からわずかにはぐれつつあるその部隊が、我々の衝撃力を発散する目標だ。

それに対し我々は40名二列と最後尾20名の三列横隊をとる。

轡を並べ、揃える切先は槍斧ハルバード

「訓練通りだ。攻撃し、突撃し、そのまま一直線に駆け抜ける。離脱と再集合の合図だけ聞き逃すな―――いいな?」

「「応ッ!」」

100の応答が私の背中を叩く。その重みをしかと感じ取って、私は柄を握り込む。

そして息を吐いて、吐いて、吐き切って。それから吸い込んで―――マルグリッテ・リモニウムは命ずる。


「総員―――突撃!」


鐙で馬の腹を蹴り、私は駆け出した。それに続く100名の魔法騎士。彼らは鬨の声バトルクライを高らかに轟かせながら、一つの塊となって駆け出した。


§


魔法騎士は、その名の通り魔法を使い騎馬を駆る。

人馬を魔法で強化して戦場を横断し、強力な魔法で敵部隊を殲滅し、或いは魔法を乗せた切先で敵将を討ち取る。

だがそれ故、魔法騎士になれるものは選別される。


如何に体内魔力オドがヒト属全てに宿っているとはいえ。

如何にヒト種が全属性に対する魔力操作適性を持っているとはいえ。

如何に魔法の発展がオドとマナの親和性の問題を解決したとはいえ。


魔法の威力と発動速度は、各個人の資質と技量に左右されるから、魔法騎士としての行動速度についてこれないものは選別される。そうして別兵科へと回されたものも多くいる。

だからこそ、逆に言えば。

十分な素養を持った者を十分に訓練し、優秀な指揮官の下で行動させたのなら。彼らは通常部隊の追随すら許さず、部隊単独で戦場を支配してみせるだろう。


§


「右、2時方向より騎馬接近!数はおよそ80!」

右側を走る騎士が叫ぶ。

確かに見やれば砂埃を巻き上げる人馬が見える。このまま現れなければ思うさま敵陣を蹂躙できたろうが、さすがにそう都合よくはない。

けれど敵は未だ遠い。それに対して突入目標である敵魔法部隊は指呼の先。マルグリッテは一切の躊躇なく下命する。

「変更はない!一撃で敵魔法部隊を突き崩せ!」

対して、標的とされた義勇軍魔法部隊も対応を始めている。これまでは魔法兵がそれぞれに放った魔法がいくつか飛来していた。が、部隊指揮官が魔法師たちを掌握して合成魔法を用意していた。鬨の声バトルクライに慄いた様子も見せず、彼らの高い練度をうかがわせた。

それに応ずるように、マルグリッテに続く魔法騎士たちが魔法を準備する。

己の肉体に宿る魔力オドを器として通し、大気を揺蕩う魔力マナを導く。魔法によってオドに通され変質したマナはその在り様を変える。そして部隊が作り上げた変質したマナは、その外側を融かしあいながら一つになっていく。

そうして義勇軍が作り出したのは、巨大な一枚の岩の壁。火球も風槍も防ぐ万能の防壁。土属性魔法によって作り上げられた壁は、他の属性壁よりも魔力を食われるが、その分練り上げた壁は騎兵の突撃さえ防ぐ防御力を誇る。

対するリモニウム魔法騎馬隊は一つの岩塊を作り上げる。戦端が嘴のように尖ったそれは、同じく土属性で編まれた破城鎚。

土壁岩の壁に対し土球岩の鎚が叩きつけられた。

同属性の盾と矛の激突は今回、盾の方に軍配があがった。

破城鎚は壁を貫通しきることなく構成を失い、再びマナへと帰り消えて行く。とはいえ盾も無傷ではいられず、ボロボロと形を失っていく。

土の壁から覗いた義勇軍帝国兵たちの顔は嘲笑に歪んでいた。

リモニウム隊100に対し、その魔法部隊は150。動員できる魔力量オドとマナが違う。それ以外にも要素はあるが、その点でも義勇軍彼らが負ける道理はない。リモニウム魔法騎士隊は決して弱兵ではないが、大魔帝国の後継を称する帝国兵を相手に数の差を挽回できるほどではない。

そして突撃前の魔法攻撃ができなかった以上、義勇軍帝国兵たちの隊列はいささかも崩れていない。練度の高さを思わせるその隊列を見れば、騎兵が突入したところで大損害を被ると解るだろう。

だから義勇軍帝国兵たちは槍や魔法を手に、嘲笑を浮かべて敵が来るのを待っていた。

けれど彼らが迎えたのは魔法騎士の絶望した顔でもなければ突撃でもなかった。


紅。


それは岩のような物質ではない。質量をもった確固たる存在でもない。蜃気楼のような不確かなものに近いかもしれない。ただの現象であるという点で。

しかし今彼らの眼前に在るそれは、確かな存在感をもってそこにあった。

娼婦のように蠱惑に踊り。

星のように輝きを放ち。

そして生命のように熱く滾って。

〝炎〟と呼ばれるそれは、彼らの全てを呑み込んだ。


§


魔法師としての格を計る点は三つある。

まず一つは魔力オド操作に対する適性。

二つ目が保有魔力オド量。

三つめは魔力親和性―――マナに対するオドの馴染み具合だ。


それぞれ遺伝に影響されるものもあるし、ヒト属の中の各種族に異なるものもある。もしくは育ちによって変わるものもある。


けれど稀に、その種族や血族、育ちから隔絶したほどの才を有した者が現れる。それが何故なのか、解明されてはいない。

ただその1人が、〝紅蓮〟。

原人種ヒトに生まれながら、窟人種ドワーフに匹敵するほどの火属性への親和性を持ち、森人種エルフに並ぶほど魔力操作に秀で、そしてヒト属の範疇をはみ出すほどの魔力量を持つ人間。

今たった1人で火魔法を放ち、敵魔法部隊の前衛20人ほどを消し炭に変えた女傑―――それがマルグリッテ・リモニウムだ。


とはいえ彼女一人で、150人の帝国魔法師が作り上げた土壁を突破できるほどではない。だからこそ魔法騎士隊が放った土球破城鎚は、あくまで敵の防壁を叩き割ることを目的としていた。

そしてマルグリッテの炎により前衛を焼かれた義勇軍部隊へと、彼女が率いる騎馬隊が突入する。彼らは槍斧を振るい敵を斬り倒し、あるいは馬の蹄で踏みにじりながら敵陣を貫いていく。混乱した義勇軍には、それに抵抗することができなかった。

敵部隊に突入して蹂躙した騎馬たちは速度を緩めず陣を貫通し、反対側へと抜ける。

彼らは集合ラッパを吹く副官を目印に離脱に移る。集合と離脱を副官本来の隊長に任せたマルグリッテは、三列目の騎兵が落馬した負傷兵を回収しつつ敵陣を抜け出してきたのを確認して、再度火魔法を放った。

巨大な炎が魔法部隊を呑み込もうと迫る。突撃を受け陣形も崩れ、更には指揮官も討たれた魔法部隊にそれを防ぐ術はなかった。


けれど放たれた炎は、着弾する前に霧消した。


「―――っ!?」


防御魔法によって防がれたのではない。

同等の魔法によって迎撃されたわけでもない。

かといって、自分マルグリッテが魔法の発動を失敗したわけでもない。

しかし現実に魔法は制御を失い、その内包したマナを霧散させ掻き消えた。


そしてそれ以上考察の時間はマルグリッテには与えられなかった。


彼女を呑み込むかのように、巨大な炎が迫っていた。


回避しようと思えばできた。けれど彼女の後方、魔法の射線上にはリモニウム家の魔法騎馬隊が居る。

だからマルグリッテは回避を捨てた。馬の腹を蹴ると、彼女が手ずから育て調練した馬は、その紅と灼熱を恐れずに前進した。

「――隊長!」

隊から離れ、迫りくる魔法の炎に向かって進んでいくマルグリットに副長が叫ぶ。

残念ながら、彼女に応える余裕はない。

有りっ丈のオドでマナに呼びかける。求めるは最速の構築、最速の行使。多少のオドの損耗は度外視。

そして最速の魔法に威力を足すための補助言語スペルを彼女は叫ぶ。


「〈火熔咆ラヴァ・ハウル〉!」


マルグリットが掲げた掌に生まれた火種は、成長と凝縮を一瞬のうちに完了した。そして補助言語と共に解放されたそれは、槍のような鋭さをもって一方向へと放たれた。

迫る炎の瀑布を、放たれた炎の奔流が食い破る。ぶつかり合い干渉し、お互いの制御を崩しあった二つの魔法は掻き消える。

それでも完全に消え去る前の火の粉が、マルグリッテの籠手で踊り焦げ目を作る。

その火の粉を振り払い、彼女は叫ぶ。

「――副長、部隊を任せる。接近する魔法騎馬隊に対処しろ!」

マルグリッテを案じてか接近していた副長に命じる。先ほどから接近を確認していた新手の魔法騎馬隊は、もはや指呼の位置にある。離脱するにせよ交戦するにせよ対応を迫られる。その判断を、傍目から見れば無責任に副官に任せた。

けれどマルグリッテの顔にも命じられた副官にも、動揺の色は見えない。

だ、私が相手をする!」

「――了解!、ご武運を!」

何故なら事前に示し合わせていたことだから。副長もマルグリッテの指揮下に収まりながら、即座に指揮を掌握できるよう戦場と部隊の把握を続けていた。だからこそ指揮権は滑らかに副長本来の隊長に戻された。リモニウム領魔法騎馬隊はその指示の下、馬を急かし加速を始める。

彼らから離れたマルグリッテは、魔力を滾らせながら前進を続ける。

新たに迫る、複数の巨大な火球へと。

マルグリッテはそれをすり抜けるように躱す。後方へと飛びぬけた火球は誰も居ない草原に着弾し灼熱を撒き散らす。

二発、三発と躱していく、がやがて直撃の軌道を取る火球が迫ってきた。

それを彼女は再びの〈火熔咆〉で迎撃する。迫る[火球]を[火槍]が貫く。

けれど火球は消え去らなかった。突き破られた火球は一瞬膨れたかと思えば、次の瞬間には弾けて、無数の小さな火球へと姿を変えてマルグリッテへと降り注いだ。


それ自体はマルグリッテの脅威にはならない。頭を庇った籠手や部分鎧の表面で焦げ目を増やしただけだ。

けれど馬は違う。防御魔法で防護されてはいるとはいえ、連続して降り注ぐ小さな火球はその防護の容量を突破し、その脚を焼いた。

馬が嘶き脚を振り上げ、その背に乗っていたマルグリッテは振り落とされた。しかしマルグリッテは斧槍の重量を使い、空中で姿勢を立て直して危なげなく草原に降り立った。

けれど加速中に体勢を崩した馬はそのまま横倒しになる。火傷自体はそこまでではないが、馬は立ち上がることはできない。先ほどの崩れ方と衝撃を考えれば骨折している可能性もあった。

「っ、〈七辣熔咆ナナ・ハウレス〉!」

腹いせのように、彼女は魔法を行使する。標的は先ほど突撃した魔法部隊の残存兵。彼らはなんとか部隊を纏めて味方の居る方向へと後退を試みていた。

決して八つ当たりではない。数は減ったとはいえ味方部隊への脅威は依然として残っている。こちらの機動力が失われたため、遠距離魔法による撃滅の可能性を求めた。独断専行までして求めた目的を果たすために。

彼女が呼び出したのは七つの炎の奔流。一本一本が〈火熔咆〉と同等の熱量を滾らせている。たとえ迎撃があったとしても、それを一本でも潜り抜ければ残存部隊程度焼き尽くせる。

けれどその炎は部隊に届くことはなかった。迎撃も防御もなかったのに、再び掻き消えるように七本全ての火炎の奔流が消滅した。

予想はしていたとはいえ、舌打ちをしたくなるくらい綺麗に消滅した。

そして私は視線を向ける。おそらく私の魔法を二度も掻き消した男に。

その男は乗馬したまま私の方へとゆっくりと近づいていた。彼とともに行動していた敵騎馬隊は、リモニウム家魔法騎士隊の機動に応じながら魔法の応酬をしている。

つまり彼は、ただ独りで私の前に来ていた。剣は帯びているとはいえ大した鎧もつけず、平服に灰色のほつれたローブを纏って。

おそらくは、私と同じ考えを抱いて。

「申し訳ないが、彼らをやらせるわけにはいかないんですよ。本当に不本意なのだけど」

声が届くギリギリの位置で馬を止め、ため息交じりに彼はそう言った。

その懐かしい声が、私の耳朶を叩く。

「……どうやったのか皆目解りませんが、あなたならば納得できます」

「いい炎だった、それは間違いないです。流石ですよ

「お褒め頂きありがとうございます」

私は素直に感謝しながら斧槍を手放した。地面に減り込むそれをしり目に、腰に差していた剣に手を掛ける。

「……何故引退したはずの師匠せんせいがこんなところに居るのか、二度も私の魔法を掻き消した技の正体とか、色々訊きたいことはあるのですが……」

鞘に手を添え、柄を握って剣を引き抜く。刃渡り80cmほどの片手剣ショートソードが陽光を反射し煌いた。

「ともかく今は、そこをどいて頂きたい」

「それはできません。してあげたいのはやまやまなんですが」

再びの否定。言葉遣いだけは柔らかいが、その音色は明確な拒絶を示していた。

「それはそれとして、いつまでも話してばかりだと都合が悪いでしょう。

彼が掲げて見せた右の掌に火球が生まれる。

とても小さな炎。けれどかなりのマナが籠められ、膨大な熱量を封じた[火球]。

その熱波は彼の黒髪を揺らした。出会った時からだいぶ白い筋シラガを生やした肩までかかるその髪を。

齢は54。私より23の年上。庶民の出自ながら魔法の扱いに優れ、その実力から〝魔導士〟の称号と爵位を王国から贈られた男。

そして私の師にして、引退とともにを譲った魔法師。


先代〝紅蓮〟―――アッシェ・ゼトランス


彼はその紅い瞳で私を見ながら言った。

「君がいてくれて正直助かりました、今代」

「私は最悪の気分ですよ、先代」

心底本気の声音で言った彼に、私は応える。

敵は強大。私と同等の威力の魔法を連発しながら、私の魔法を容易く掻き消す正体不明の技を放ってくる。

それでも私は、師匠に剣を向けた。

サンドウィンが故郷である以上、顔見知りが敵に廻ることは考えていた。かつての友か、その家族か。行きつけの商店や料理屋の店主か、その女将の息子か。私の魔法が焼いた黒焦げの死体が、そのうちのいづれかかもしれない。

その上で私は決めたのだ。

私を育ててくれた領だから。

今の私を作り上げてくれた人たちだから。


だからこそ。


それを残酷だと批判する者も居るだろう。恨みを抱くものも居るだろう。

けれど私は、流さねばならぬ血ならば私が流そう。

だからたとえ強大な敵であろうとも、大恩ある師であろうとも―――


―――だからこそ、私は往こう


そうしてマルグリッテ・リモニウムは前へと踏み出した。

剣が煌き魔法は踊り、血飛沫が彩る紅の戦場へと。


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