サンドウィン内乱 02
`18/01/02
一部を【
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―――マルグリッテ・リモニウム
大森林辺縁にて〝異形〟――おそらくは
その後王家から沙汰があり、私の処遇が告げられた。
結論から言えば、懸念していた即座の処刑はなかった。……あくまで〝保留〟ではあったが。
私の手紙や他の複数のルートから、サンドウィン家が王国に弓引く内乱を引き起こしたことは疑いようのない事実。そのことからサンドウィン家に連なる血筋のものを拘束することも議題に上ったそうだ。
しかしその必要のないことを、兄と弟が示した。
彼らは東方辺境伯の部隊の一部と子爵家の騎士、およそ120でサンドウィン領の関所と簡易砦を破壊。領外への出兵を困難にさせた。
加えて私が行ったサンドウィン領への単騎駆けも、機密の『偵察』という扱いで落ち着いた。勿論王都公爵家当主のとりなしがあったからである。
ただ幸いなことに、アラオザル大森林にて潰れた騎士たち――あの集団の遺留品を確認したところ、サンドウィン家の中でも精鋭と呼ばれる魔法騎士隊だったそうだ。
また、その中には一人だけ装備の違う騎士が居たそうだ。追撃の際に〝副長〟と呼ばれていた騎士だったと思う。帝国兵ではないか、と疑われている。
そのことも私の功績とされて、私たちの保身となってくれた。
……マルグリッテは〝異形〟の姿を思い出して複雑な感情を抱いたが。
ともかく王家と王国は、マルグリッテとその兄弟の功績を認めた。
これによりサンドウィン家によって引き起こされた騒乱、それがマルグリッテ・リモニウムたちを処刑台へと送ることは当面なくなった。
しかしマルグリッテの娘、リリアーナの扱いは宙に浮いたままとなってしまった。
東部に限らず、王国全土で小規模な内乱や継承権争いが頻発したこともあって、リリアーナを含めサンドウィン家に連なる者たちへ、各貴族たちは警戒心を強めた。中にはリリアーナやマルグリッテたちを悪し様に罵るものも居たという。
王国建国千年を祝う祭事もあって各貴族家とその子どもたちが繋がりを深めていく中、リリアーナは貴族として繋がりを作る機会も与えられず、孤立を深めていくこととなった。
§
そして、1,001年初夏。
春の農作業である種蒔きはとっくに終わり、暑さが少しずつ強さをます頃。
ようやくサンドウィン内乱の元凶を仕留める機会が巡ってきた。
王国北部及び西部の小規模な内乱を鎮圧した王国は、今回の騒動に完全な終止符を打つため〝サンドウィン領〟の叛徒討伐を決定。
王国から進発した王国正規軍とリモニウム家を含めた貴族軍から構成される王国連合軍は、サンドウィン領西部の平野から領内に侵入を試みた。
それに相対し、行く手を阻むのはサンドウィン貴族軍に〝義勇軍〟を合わせた反乱軍。数はつかみで2,000弱。
両軍合わせて四千を超える兵力が若葉や夏花を踏みつけ、平時であれば穏やかな草原に集った。
なお、王国連合軍は全軍をこの戦場に投入しているわけではない。
王国東端の国境沿いでは東部辺境伯が東部貴族を纏め、帝国軍の侵攻部隊に対して厳重警戒を行っている。密偵によって、帝国軍領での大規模な軍の移動が報告されている。国境沿いでは小規模な偶発的戦闘が、或いは非正規戦が繰り広げられている。王国正規軍の大部分はそれを援護し、また本格的な侵攻に備えるため東部に派遣されている。
反乱軍に多数の〝義勇兵〟を送り込んでいる帝国の意図としては、東部の戦力を少しでも減らしたいと考えているはずだ。だからこそ王国は、反乱軍を討伐するに十分だと考える最低限の兵力だけを展開した。
さらに言えば、サンドウィン領に対してあたるのはこの2,500の兵力だけではない。
そもそも今回のサンドウィン領の反乱は、その領主貴族のみの暴走だ。領民とその兵たちは領主に義務として従っているだけで、進んで王国に反旗を翻しているわけではない。
だから今回の王国側の出兵は、サンドウィン領主と、その領主を誘導した〝
そして今この場に居る2,500の兵力に求められていることはシンプルだ。
ひとつ、焦土作戦を許さず〝
ふたつ、敵集団を突破しサンドウィン領へと進軍すること。
みっつ、以上のことを東部国境に影響を与えぬよう可及的速やかに完遂すること。
つまり、この一戦で完膚なきまでに反乱軍を叩きのめすこと。
マルグリッテ含めた王国連合軍の指揮官級の人間はその理解を共有していた。
そして両軍事前の取り決め通りの13時。
太陽が空高く登り、蒼穹から空高く見下ろす草原にて。
2,500と1,800の猛る戦意と迸る魔力が、青く茂る草原にて激突した。
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