第2話 黒い箱

 最初はこんな世紀末のようなところにろくなものは残ってないと思ってた。けど、近くにあったコンビニに入ってみると、以外にもほとんどの物が残ってた。でも、一番驚いたのが、電気が通っていたことだった。思えば、部屋の水も出ていた。余りにも、部屋と外の光景が違ったせいで、気にもしなかったが、こんな荒廃してるのに水も電気も通っているのはおかしい。

 カップ麺や飲み物をリュックに詰め込みながら、一度高いビルにでも登って街の様子でも確かめてみようかと、考える。そうすれば、何かしらの発見があるかもしれない。

でも、まずは食料が何よりも大事。その後に街を出る足を探そう。

 リュック一杯に食糧を入れ終え、重くなったリュックを背負い、外に出ると熱気が体全体を襲い、一瞬目眩がしてしまった。飲み物を取っている間、飲み物を冷やしていた冷気に当たって涼んでいたせいで、足元がふらつき、倒れそうになったが、なんとか踏ん張る。だが、こんな日差しのなか、歩き回ると思うと、気が滅入ってしまう。

 さっきは、ただ一心に人を探していたから、1時間も歩けたけど、今は冷静になっているせいか、楽をしたいと思ってしまってる。

 気を引き締めようと、頬を叩こうとしたが、また痛くて後悔するのは嫌だから、さっきリュックに入れた水を取りだし、暑さを紛らす為に、頭から水を被る。

 暑さも和らいだところで、一度リュックの中身を軽くしようとマンションに戻ることにした。

 車の一台も通らない道路の真ん中を歩いていると、ふと、辺りを大きな影が落ちる。大きな雲かな、と空を見上げると、そこには雲と一緒に漂う黒い箱が見えた。

 無意識的に私はカメラを構えその箱をシャッターに収めていた。

 私は自分の行動に驚くことなく、ただ、黒い箱を見えなくなるまで、暑さを忘れ、ずっと見続けていた。

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