カップ焼きそばの怪

「カップ焼きそばは法律に違反してると思うのよ。」


彼女が唐突に話出した。またか…。


「罪名は何だい?」


「景品表示法違反よ。」


「詳しく聞こうじゃないか。」


「よろしい。まず、『カップ』の部分ね。カップ焼きそばの器は果たして『カップ』なのかしら?」


「カップの定義の話だな?丸い容器と四角い容器の二種類があるが…。」


「『カップ』とは取っ手の付いた洋風の器っていうのが第一の意味だけど、この場合の『カップ』はカップラーメンに準じていると考えると、紙、プラスチック等でできた小さな器っていうのが近いわね。」


「うんうん。」


「その定義から考えると丸い器の方は『カップ』ではなく『ボウル』が正しいと思うのよ。」


「確かに…。四角い方は?」


「………。」


「四角い方は?」


「え~と…。おじゅう?」


「鰻重とかのお重?」


「一番似てるんじゃないかな?」


「カップ、ボウルと洋風できてたのに急に和風だな。」


「じゃあ、トレイでも何でも良いわよ。とにかく、『カップ』ではない事は明らかでしょ?」


「そうかもしれないけど、『器』でなく『杯』と考えれば『カップ』でも構わないと思うけどな~。」


「まぁ、五百歩譲ってそれはいいわ。」


「いいのかよ!!」


「ふふ…。次が言い逃れようのない決定的な景品表示法違反なのよ。」


「凄い自信だな。」


「貴方はカップ焼きそばどうやって作る?」


「?そりゃ乾燥した具を入れてお湯入れてお湯切って、ソースと薬味入れて混ぜて完成…こんな感じだろ?」


「そうね。でも、名前は『焼きそば』よ?」


「…うん。」


「焼いてないじゃない?」


「!!!!…た…確かに…。」


「これは明らかな景品表示法違反だわ。」


「違反かどうかはともかく、今までの君の指摘の中では一番のヒットである事は認めるよ。」


「敬いなさい。」


「敬いません。…なら何て呼ぶのがふさわしいと君は思うんだい?」


「う~ん。カップは有りにしたから…『カップふやかしそば』とか?」


「全く食欲がわかない名前だな。なんだかんだ言ってソース味の麺だから味は焼きそばに似てるんじゃないかな?」


「じゃあ、『カップ焼きそば風ふやかしそば』?」


「ふやかしは止めようよ。」


「ふやかしてるのに?」


「ふやかしててもだ。そばが二回も出てくるのもしつこい感じがするな。」


「そうか~。なら『カップ焼きそば風』?」


「焼きそば風の何かが分からないだろ?」


「そうだね…。いっそ風を取って『カップ焼きそば』!!」


「うん。一番しっくりくる。」

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