あんこのこ

「私が思いますに…。」


彼女が唐突に話出した。


「あんこってあるじゃない?」


「つぶあんとかこしあんとかの?」


「そう。…でさ、さっき貴方が言ったように『あん』とも言うでしょ?」


「そうだね。」


「じゃあ、あんこの『こ』って何よ?」


「あんこが正式で『こ』が略されているんじゃないのか?」


「なら、辞書で『あん』を引いた時にあんこの略って書いてあってもよくない?そもそも、3文字を2文字に略すってどんなにめんどくさがりなのよ。ごはんを『ごは』とか言わないでしょ?『こ』くらい言えばいいじゃない。」


「君が何に怒っているのかよく分からんが…。例えば、あんかけ焼きそばとかあるだろ?」


「うん。」


「揚げ出し豆腐とかにもとろみのついた『あん』をかけたりするよな?」


「そうだね。」


「その『あん』には『こ』はつかないじゃないか。

 俺が思うに、『こ』のつく『あん』は甘い…。つまり『こ』は甘さの象徴なのではなかろうか?」


「ほ~。じゃあ『チョコ』の『コ』も…。」


「それは違う。」


「…。」


「『こ』ってつけると可愛らしいイメージになるから甘い物にはうってつけだったんじゃないかな~。」


「何か最もらしくて腹立つわ~。腹立つからこれから全ての『あん』に『こ』をつけて呼んでやるわ。」


「そうか。がんばれ。試しに言ってみたら?」


「つぶあんこ、こしあんこ、しろあんこ、ごまあんこ、あんこぅくけ焼きそば…。」


「どうした?」


「言いづらい…。」


「うん。知ってる。」




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