第6話恋記念日
学校が開校記念日でお休みだったから、今日は別々に出かけたのに!!
「あっ···」
「げっ!!」同じショッピングセンターで偶然にも李杏と長谷部を目撃!他にもいたけど。
「やぁ!」手を上げ、にこやかに近づく長谷部だったが、遼太の後ろに敦を見かけると、急に顔をそむけ李杏達と一緒に何処かへいってしまった。
「なぁ、お前らあれからなんかあったのか?」遼太が、敦に問う。
「あっ?まぁ、あれだ。1発ぶん殴った」困ったような感じで笑う敦に、遼太は足を止め、
「マジ?」マジマジと敦の顔を見た。
「お前も、好きな女盗られんように気をつけな」
少し離れた場所から、一緒に来ていた恭也と航平が、手招きしていた。
「な、あれ···」と指差す方向にいたのは、
「はぁーーーっ?!何かんが···」遼太の驚いた声が聞こえたのか、李杏が思わず立ち上がり、椅子が倒れた。
『寄りにもよって、なんであんな奴と!カップル飲みしてんだよ!!』怒りを隠せない遼太ではあったが、敦らに拉致られ、書店へ入っていった。
「ムカつく!」
「李杏らって、付き合って···」
「ねーよ!!」
『李杏は、僕の女だ!』とも言うに言えず···
「何もなきゃいいけどな。」
「李杏ちゃん、押しに弱そうだし」あったがらの言葉は、時折遼太の胸をえぐる。
「あいつ、振られてんのにな。しつこい奴」
「そうなんだ」そこらは、李杏から聞いてる遼太だが、すっとぼける事にした。
書店の中をウロウロしてると···
『あっ···』大人の男が読むえっちな雑誌が置いてあるコーナーへ来たものの、敦に連れ戻され笑われた。
「欲しいなら、やろーか?未開封のあるし」ニヤッと笑った敦の言葉に飛び乗った遼太。
「夜、持ってくわ。借りてた漫画も返さないと···」
「お、おう。」同様を隠せない遼太。敦は、
「俺がいま見てんのこれ」と一冊のえっちな本を見せてくれたが···
『お、お前は······もう読んでるのか?こ、こんなえっち過ぎる本を!!』それは、遼太が隠れて読んでるのより過激な写真がズバズバと表紙に出ていた。
皆でマックで軽く食べ、駅近くの広場で解散したものの、遼太はドキドキとムズムズが止まらなかった。
が!!!
「だから、違うんだって!」
「じゃ、なんだよ。あのカップル飲みは···」李杏の顔を見ると長谷部とのシーンが、甦ってくる。
「私が、自分のをこぼしちゃったから、一緒に飲む?みたいな話になっただけなの!」
「じゃ、なんで毎回毎回あいつがお前の側にいるんだよっ!!」
「そう言われても。友達だし···」言葉を濁す李杏に、
「お前、ほんとはあいつのこと好きなんだろっ!」と強く出て、結局···
「もぉ、知らないっ!遼太のバカッ!バカッ!バカーーーーッ!!」と泣かしてしまう。
床に伏せ泣きじゃくる李杏を見下し、騒ぎを聞きつけ真澄が、部屋に入り遼太を叱る。
「ったく。どうしてそんな喧嘩ばっかするのぉ?」
「······」いや、そうしてないと思うけど······
「あんたは、下に行ってなさい!」と真澄が遼太を下に追いやろうとすると、
「だめっ!いかないでっ!」と涙でグショグショになった李杏が止める。
「私が悪いんだもん。私が、ちゃんと言わないから···。だから、お兄ちゃん······」
下の方で、電話の音がし真澄が、
「ちゃんと仲直りしなさいよぉ!」少し笑いを込めた口調で言い、階段を降りていった。
「ごめん···。言い過ぎた、かも···」自分の負けを認めたくない遼太だったが、
「私、月曜日ちゃんと言っておくから。好きな人、いるからって!」
「うん。えっ?!」遼太は、ある意味鈍感なのかも知れない。李杏が、何度も遼太を見て好きな人、と言ってるのに、それに気付かないでいる上に、
「誰だよ。その好きな男って···」そう言われると李杏も李杏で、言っていいのか悩む。
『いつか遼太に好きだって言われたい』そう思っているから。
「言われたい」のであって、自分から「言う」のではない。そんな想いがあるから、余計言葉に詰まる。
「遼太は、いないの?好きな人···」逆に聞かれると遼太も言葉に詰まる。
『僕は、お前が好きだ。李杏』何度言いかけては、喉奥で詰まらせる。
お互い「好き」なのに、上手く言えない。寧ろ、言ったらギクシャクすると思ってる。兄妹だから···
「いいー?入るわよー?」の真澄の声に驚き、返事を返す。
「お母さん、ちょっと依子姉さんとこ行ってくるから、ちょっとお留守番してて」それだけ言って、また階段を慌てて降りていく。依子姉さんってのは、真澄の姐であり、遼太達には叔母にあたる。
「うん···」心なしか不安げに返す李杏だったが、真澄が出掛けると段々と落ち着いてきて、本を読んだり音楽を聴き始めた。そうさっきまで、何事もなかったのかのように。
「女って、わかんねー」と呟きつつも、半ば泣き止んでくれた事に若干安心を覚える遼太。
「いつか、言おう···」その呟きは李杏には聞こえていなかったが、そう言わざるを得ない状況になったのは、少し後の話。
「ふーん。じゃ、今夜戻ってこねーな」遼太達から話を聞き、母親が今日中に帰って来ないと察した謙悟は残念がった。
「なんで?」
「お前ら、先に寝てて知らんかっただろーけど、母さんが叔母さんちに行くと、毎回止まってくるんだよ。叔母さん、身体弱いから···」
確かにたまにしか合わないが、依子はいつも青白い顔をし、身体付きも細かった。
「なっ、俺ちょっと出かけてくるわ。」
「でも、もう8時だよ?」
「怒られるよ?ママに」
「いいんだ。俺は、もう高校生だから!」
「電話来たら、言っとく?」
「寝てる、と言っとけ。」幾つになっても親は怖いらしい。
謙悟は、電話を済ませてから素早く支度をすると、出かけていき後に残されたのは···
「暇だね···」
「うん。宿題も終わってるし。見たいテレビないし」で、何故かふたりであっち向いてホイ!を始め···
「······。」
「わぁーい!3回連続で勝ったーーーーい!!」嬉しそうにはしゃぐ李杏。
「負けた。おかしい、じゃんけんに弱い筈のお前に負けた」相当ショックでもあり、負けん気の強い遼太。
「じゃ、次は···」
「まだ、やんの?いい加減風呂入ろーよ」と言うが無視をされ、
「告白ゲーム!」
「へっ?なにそれ」聞いたことがない。
「目の前にいる相手に嘘の告白をするの。で、相手が照れたら勝ち!」
訳がわからぬまま、そのゲームをする事になった遼太だったが···
「なぁ、このシチュって必要なのか?」壁に手を付きながら、李杏を見下ろす遼太。
「うん」
で、恥ずかしくもやり始めるが、これがまた難しい。言ってる方が、妙に照れるのである。
何度目かの失敗のあと、
「俺、お前の事ずっと好きだ」そう耳元で、小さな声で、囁くように言ったら李杏がヘナヘナと腰を抜かした。
「どうかした?」
「なんか、本気で言われてるみたいで···」
「本気だ···。僕は、ほんとに李杏···お前が好きだ」
「えっ?」
自然と顔が近づいていき、李杏の唇に自分のを押し付けた。キスは、何度かしているが···
「兄妹でも、好きに変わりはないだろ?本当に好きなんだ。お前を誰にも取られたくない」そう言いまたキスをしていく···
「遼···太。あり···がと。私もずっと···好きだった」
今度は、さっきよりも長く長くキスをして、舌を入れてみたら、嫌がるでもなく李杏の舌が僕の舌に当たって···ブチュブチュと音を立てながら遊んだ。
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