恋愛の測りまちがい

@akaharatamori

第1話

 ぼくが教室で昼飯を食べていると、「おーい」という声がしたので入口の方に目をやった。そこにいたのは、隣の隣のクラスの女子。ミカンさんだった。

 一応補足しておくが、“ミカンさん”というのはあだ名だ。

 ぼくと目が合ったミカンさんはニッとして、ちょいちょいと手招きをした。なにかの用があるらしい。まだ食事の途中なのだが……まぁいいや。ぼくは箸を置いてミカンさんに近づいていった。

「どうしたのミカンさん。なにか用?」

「あ、食事中だった? ごめんね」

「いや、別にいいけど」

「ちょっとキミに話したいことがあったんだ。それで、ちょっと部室まで来てもらえないかなって。長くなるかもしれないし、弁当も持ってきてよ。どうせなら一緒に部室で食べよう」

「話を聞くくらいはもちろんいいんだけど。あの……部室って、心霊現象研究部の?」

「そうそう。私の部室」

 ちょっと嫌な予感がしてきた……が、それでミカンさんの誘いを断るようなことはしなかった。友達の頼みだし。


 ぼくはミカンさんに数歩遅れて歩いていた。目指す先は心霊現象研究部の部室。確か部室棟の2階にあり、一度この校舎から外に出る必要がある。

「今日の弁当なにが入ってた?」

「適当に冷凍食品を入れてきた。え、欲しいの?」

「冷凍食品ならいいや。もらうのはまた今度ということで」

 ぼくらは部室の前に到着した。

「ここが部室。結構キレイでしょ」

 なぜか誇らしげに紹介するミカンさん。

 でもぼくには一般的な空き教室の一つにしか見えなかった。

 部室の中を覗いてみても、その感想は変わらず。

 普通の空き教室だコレ。

「心霊現象研究部っぽい物とか置いてないんだね。呪いの仮面とか人形とか、そういう怪しげなものとかさ」

 平机にパイプ椅子が6つ。あるのはそれくらいだ。ほんとにこれ部室なのか?

 パイプ椅子の一つに腰掛けると、ミカンさんは隣の椅子に座った。自分の弁当を広げつつミカンさんは言った。

「一応、ここ使うにはルールがあってね。私物を置くの禁止!って言われてるんだよ。本とか雑誌ならいいですか?って訊いたのにそれもダメだって」

「ふうん。じゃあ、活動っていうとここで適当にだべってるだけなのかな。なんとなく想像してたけどここって相当ユルい部活だね……」

「そうなの。私的にはちょっと物足りないけど。私以外の人もあんまりやる気ないみたいだし。まぁ仕方ないかなって」

 ミカンさんはもう弁当を食べ始めている。

 僕も同じくそうすることにした。

「……ん。そうだ。ミカンさんの用って結局何なの? 話したいことがあるって言ってたけど」

「あ、そうだそうだ。それがあった。重要なことなのに忘れちゃってた。えっとね、実はキミにお願いがあるんだ」

 ミカンさんは食事を中断して箸を置いた。

 ミカンさんにしては妙に改まった態度だった。

 そして、ぼくにこう告げた。

「私と一緒に戦ってほしい」

「…………誰と?」

「“敵”」

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