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連れて来られたのはミクリさんのお店で、外見とは裏腹に中はなんだかとてもいい香りがした。フローラルともウッドとも、線香とも思えるし、なんのアロマを焚いているのかは分からないけど、どことなくリラックスできるような香りだ。
「どうぞ」
「・・・どうも」
無地だが安くはないであろうティーカップに琥珀色のドリンクが入っている。恐らくレモンティー。外は晴れだと言っても風が冷たかったから、ホットドリンクは正直嬉しい。
「いただきます」
ミクリさんに言ってから頂く。口に含むとレモンの香りと紅茶の香が鼻に抜ける。なんで俺ここで紅茶ごちそうになってるんだ? なんて思いながらもう一口。
「・・・あれ、これ塩レモン、ですか?」
「やっぱりバーテンさんだとすぐに分かるんですね」
「一応そういう職業なんで。でも塩レモンのレモンティーは初めてです。美味しい」
紅茶に塩レモン、それからハチミツと少しの生姜だろうか。これは寒い季節には良いかもしれない。
「それなら良かったです」
ミクリさんはなんだか満足そうだ。で、なんで?
「今日は花菱さんに悪いものが憑いていたから」
え。今なんて。何サラッと言ってくれてんの?
「塩は悪いものを払ってくれるから、お客さんにもこのドリンクをお出ししているんです」
「え」
いやだから、何が憑いていたの、何が。
「もう大丈夫ですよ」
ミクリさんはそれだけを言って見送ってくれた。最後まで何が“憑いて”いたのか言ってくれなかったし、訊けなかった。
別に怖くはないけど、盛り塩とかするべきなんだろうか。どうなんだろう・・・
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