秋のそらりるれと
カゲトモ
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昨日の雨が嘘のように今日は秋晴れでとてもいい天気だった。それでも台風の影響とか何とかで、今日の夜はまた雨が降るらしい。今日は花金だぞ。出来れば雨が降るのはやめてほしい。なんて。
こういう変わりやすい秋の空を女性の起伏の激しい感情や、移り気な気持ちにかけて“女心と秋の空”何て言われるが、実はそれには反対語があって、それを知ったのはつい最近だ。
そのまま“男心と秋の空”で、意味としては、男の愛情は移り気で変わりやすいことを言うらしい。うーん、どっちもどっち。結局人の心とは移ろいやすいことを言うんだなぁと思う。
雨が降ったり、晴れたり、また降ったり曇ったり。今は大体の予想が出来る天気予報でも、昔はそうもいかなかったろうから、全く上手いこと言ったものである。
「こんにちは」
「わっ」
空を見上げながらぼんやりと歩いていた所に急に声を掛けられ、ビクリ、と肩を揺らす。いや、肩どころではない。買い出ししてきた荷物がバックから飛び出た。
「ミ、ミクリさん。驚かせないでください」
ドッドッドッドッ、と心臓が強めに血液を送り出している。呼吸が乱れた。
だって狭い路地の隙間から急に声を掛けてきたから。しかも黒づくめで。
「落とされましたよ」
いや、あんたに驚いたんだっつーの!
「ありがとうございます」
ミクリさんが拾ってくれた食器用スポンジを受け取ってバックに押し込む。ミクリさんはじっとこっちを見ている。視線に気づいたが、視線を合わせるのにちょっと躊躇いを感じる。だってミクリさん占い師なんだもん。
「え、と、なにか?」
無言で見られていることに耐えられなくてそう訊いた。まさかまた何かの暗示が出ていたりするのか? おいおい、勘弁してくれ。
「ミ、ミクリさん?」
ミクリさんはやっとその声に視線を合わしてくれる。こっちを見ていると思っていたのに、ミクリさんが見ていたのは俺じゃない。俺の後ろだった。
おいおいおいおいおい、何が見えてる? 怖いんだけど、早く何か言って。
「えっと、あの・・・」
困ったように笑うと、ミクリさんは表情を変えないまま小さく手を動かした。
「ちょっと今お時間いいですか?」
・・・嫌とは言えない。だってミクリさんの占いめっちゃ当たるもん。まだ開店まで時間はある。少しだけなら。
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