第9話 告白
授業終わりの、休み時間に夏彦が俺に話しかけてきた。
「おい、悠希」と誰かが俺の後ろで呼んでいた。
「ん?なに?」と言って後ろを振り向いた。
「ちょっと、報告がある」
「ん?報告?なんだよ」とめんどくさそうに言った。
「あぁ、ついに、内田が告る日を決めた」と、俺の耳元で言ってきた。
「で?いつなんだ?」と、あまり興味なさそうに言った。
「体育祭が終わって告るって言ってた」
「ふーん、そうか。体育祭か、あと、一ヶ月とすこしだなぁ。その間に止めさせれば、いいんだよな?」
「あぁ、そうだな、頼んだ」
「うん、任せとけ」
「じゃあ」と言って、夏彦はいつものグループへ戻った。
放課後に俺は、いつものように花宮と部活へ行った。
「悠希、何かいい案見つかった?」と俺の耳元で言ってきた。
「まぁ、一応、案は二つある」と小さい声で言った。
「なになに?」と興味深々で聞いてきた。
「一つ目は、告白までに止める。二つ目は、俺が花宮に告白する。それで付き合えたら、諦めるだろ」
「一つ目の案には、賛成だけど、二つ目は、ちょっとなぁ、ずるいと思う。それに両方やって、だめなら、どうするの?」
「二つ目がなんでずるいんだよ。両方やってだめなら、その時考えるよ」
「横取りと言うか、告るから、取られたくないから告るみたいなのは、ずるいなぁって思った」と力なく言った。
琥御山は、今にも泣きそうな感じだった。とても悲しんでいるみたいだった。
「でも、それしかないだろ。夏彦だって、止めることを願ってた。ほかに何があるんだよ。俺が告って付き合えたら、さすがに諦めるだろ」
「それで、みんなから嫌われても?」
「ボッチだから、んなものに興味はない。今現在俺に興味ない奴・嫌ってる奴の方が多いし、本当にどうでもいいよ」と思ってもないことを口にした。
「たとえそれでも、私は嫌だ」と泣きそうなのをこらえて言ってきた。
「は?じゃあ、琥御山、何かいい案あるのかよ」
「今は、何もない」と申し訳なさそうに言った。
「ねぇなら、んなこと言うなよ。解決して、あいつらが気まずくならないようにできればそれでいいだろ。それに、俺たちは、依頼されて承諾したんだからやらないと」
「それは、わかってるけど、そのやり方は、保留だから」
「わかった、ただし、体育祭の時だから、それに間に合うように」
「うん、わかった」と茉莉は言って、俺はいつもの席に座った。
俺は、結局誰のこととは、一度も口にしなかった。してはいけないと思ったからだ。夏彦は俺たちに友達が告白するのを止めたいと言っていた。誰とは一度も口にはしなかった、だから勝手に俺は言ってはいけない、そう解釈した。俺の案が通れば、まず間違いなく、あの夏彦のグループには、嫌われる。ただ夏彦が俺を、嫌うかはわからない。嫌われた後は、クラス、学年、全校と広がっていくのだろう。俺は、最悪全校一の嫌われ者になる。本当は怖い。とても怖い。そんなのは嫌だと願っている自分がいるからだ。結局、俺は一体どうすればよかったのだろうか。
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