こもれ話

第33話 双極性障害・躁鬱病について

 先に述べました通り、私は双極性障害、躁鬱病と言う精神疾患を患っています。

 他にも自律神経失調症に顔面神経痛、顔面麻痺に群発頭痛、あと糖尿病予備軍に入っています。

 糖尿病予備軍は、父と祖父、姉が糖尿病を患っているので、私も発症する可能性は十分にあるからです。


 躁鬱についてですが、正直に申し上げて、完治する可能性は半々に分かれます。

 ストレスの原因を根本から解消する事が完治の秘訣ではありますが、その原因が何にあるのかによってその道は分かれます。


 ストレスの原因が「仕事」の場合は、転職したらいいと大多数の人が思う事だと思いますが、現実問題そうもいかない事の方が多いです。

 まず一つに、家庭を持つ人は安易に転職出来ません。

 安定した収入が見込めなくなる事が別のストレスにもなりますし、新しい就職先になじむまでの時間も必要になり、これもまた別のストレスになってしまいます。

 さらに収入が増える場合は良いですが、初任給や研修期間が設けられていると、収入が不安定に、または減少してしまう事の心配も出てくるからです。

 次に、家庭を持っていなくても、社宅に住んでいる場合、転職を考える場合、引っ越しが必要になり、引っ越し費用が必要になる、または新しい転居も見つけなくてはいけない。

 部屋探しが楽しいのは、始めての独り暮らしまでです。

 それ以降の引っ越しは、納得のいく家賃と部屋、駐車場や駅までの道のり、周囲のお店事情なんかも関係してくるので、安易に決める事も出来ない。

 さらに荷造りや荷解き、健康な人間にはなんて事のない出来事が、鬱やパニック障害を患っている人にはただいな苦痛を与えます。

 また辞表を出すタイミングや会社の内情にも起因して、辞める事が出来ない場合、または辞めさせてくれず、その後の会社での以後事が悪くなるなどの心労もかかってくるのです。


 次に、ストレスの原因が「家庭」にある場合。

 これは離婚をすればいいと言う簡単な問題ではありません。

 子供がいる場合、親権の問題や慰謝料、養育費の有無に、場合によってはこちらも引っ越し、子供が学生なら転校手続きに戸籍の変更に住所登録の変更等と、手間も時間もお金もかかります。

 実家に戻る事が出来るなら気持ちも落ち着くのでは?と考えるかたもいらっしゃるかもしれませんが、そこもまた安易に安心できません。

 実家に戻る事が出来たとしても、まず自分たちの寝泊まりする部屋が空いている保証はありません。

 さらに子供は環境の変化に大変敏感で、新しい家に新しい家族、それが快く受け入れてくれる環境ならまだ救いはありますが、突然の出戻りに困惑した両親や兄弟姉妹がすんなり受け入れてくれる家庭と言うのは大変稀であり、大半は最初の数週間はよくしてくれますが、それ以降の対応は当たり前になるのか、あるいは上辺の対応をしていた場合家族の対応は180度変わったり、転校先の学校で子供が馴染めずいじめにあう、クラスメートの輪に入れず孤立する、引きこもりになる、そういったケースもあるのです。

 自分のこと以上に、子供の事になると心に痛みを感じるのです。

 子供なら大丈夫と安易に切り捨てて考えられない、そういった短絡的な思考に流れていけないのも鬱から抜け出せない要因の一つでもあります。


 そして次は、「お金」が原因の場合。

 借金によるストレスが大きな原因になる事は容易に想像できると思いますが、その借金の原因が、自信のギャンブルやお酒、豪遊代や覚せい剤であった場合は因果応報であり、鬱にまで追い込まれる事は少ないです。

 もっと別の方向、連帯保証人になっていたり、借金を肩代わりしてしまった場合の負担がとてつもなく大きいのです。

 今まで何も考えずにその日暮らしを続けられていた場合、急激に返済にまわさなくてはいけなくなったため、普段自分が使っていた分を節約しなくてはいけなくなる。

 今まで自分が抑えようとしていなかった出費を減らさなくては、またはしては行けなくなったら。しかもその場合、数週間や数カ月などではなく、年単位で制約が発生するのです。

 そして連帯保証人になってしまった場合、自己破産の申請が出来ない場合が多いのです。

 それまで安定して生活できていた為、すぐに自己破産をさせてもらえない、そして債務整理もさせてもらえないので、嫌が応なく追い込まれた生活を強いられてしまうのです。


 次は、「仕事と家庭、お金」の場合ですが、こうなったら絶望的です。

 どちらを切り捨てるでは解決できず、全てを見捨てると言う選択も出来ません。

 私はこれに該当したのではっきり言えますが、


 

 毎日が地獄です。

 



 朝起きる事も苦しく、歯を磨きに行くのも辛い、出勤途中も事故れば休めるとか、仕事中も誰の視界にも入りたくなくなり、会話が聞こえてきたら自分の事を話されているとか、お客さんの視線も不信に思え、休まる時間はありません。

 帰りも同じく事故ればと考え、帰って家の空気を吸う事も苦しく、家族の視線も居心地を悪くさせ、すぐさま部屋に戻っても、何をするでもなく呆けてみたりテレビを見たりゲームをしたり本を読んだりネットを見たりしていても、この電気代や本代、ネット料金や衣類に寝具、電球の一本にまで迷惑をかけている気がして、部屋にも安らぎを感じられなくなります。

 そして仕事を変えようにも転職先がなかなか見つからない、さらに今の収入から下げる事は許されない、研修期間もダメ、ひと月の猶予も与えられない、ならどうするか?

 諦めて今の仕事を続けて、針のむしろと知りながら居続けるしか出来ないのです。



 近年よく見かける、『新型鬱』等がマスメディアで取り上げられていましたが、正直に申し上げて、それこそ『甘え』です。

 楽しい時は楽しい、悲しい事は悲しい、嫌なものは嫌、これは正常な反応です。


 「鬱状態」と「鬱病」はまったく違います。

 わかりやすく言えば、「鬱状態」とは『落ち込んだ状態』を差します。

 これは健康な人間でも、極端に嫌な出来事に出くわした時に陥る精神状態を差しますが、鬱病の場合は、常にどんな事があっても『落ち込んだ状態』のままなのです。



 ここで改めて躁鬱病についてご説明いたします。

 人間には交感神経と副交感神経があり、交感神経が有意状態にあると緊張状態を維持し続け、すぐさま身体が反応出来る様に脳が身構えてる状態を差します。

 副交感神経が有意状態の場合は、脳がリラックスしている、休息を求める穏やかな状態を差します。

 人間は仕事をしている時、作業をしている時、話をしている時、車の運転をしている時、歩いている時、休んでいる時、常に交感神経と副交感神経のバランスを取りながら活動してるのです。

 普段の生活の中で、それらが上がったり下がったりを振り子のように繰り返し、身体の外からの刺激にも反応して生きています。

楽しい事は楽しく、悲しい事は悲しく、嬉しい事は嬉しく、怒りたい時には怒る。こういった感情の起伏も作用し、神経に働きかけるのです。


 ですが、躁鬱病の場合、そのバランスが崩れます。


 楽しめていた事が楽しくないなり、悲しいけどなにが悲しいのかわからない、怒りたいのに言葉も意欲もわいてこない、嬉しいのに気持ちが持ちあがらない。

 外からの刺激に鈍感になり、考える事も感じる事も少なくなり、外とのかかわりがストレスになってさらに刺激に鈍感になる悪循環に陥ります。

 ただしこれは、「鬱病」の場合です。「躁鬱病」の場合はこれに、逆の作用が働いてきます。

 楽しい事が楽しすぎて疲れ知らずになり動きすぎてしまう、悲しい出来事に出くわしても面白くてしかたなくなってくる、怒ったら手がつけられなくなる、嬉しい事も喜びの表現が行き過ぎてしまう事がある。

 一見、それほど苦痛ではないのでは?と思われますが、問題はここからなのです。

 楽しみ過ぎた、嬉し過ぎた反動で申し訳なさが強まり、周囲に罪悪感を抱くようになる。

 悲しめなかった自分に嫌気がさして自己嫌悪に陥る。

 怒り過ぎてしまった事の後悔と自責で自傷行為に及んでしまう。

 普段健康的な人なら、こういった事にもブレーキが存在し、行きすぎないように制御しながら動くため、自責も後悔も罪悪感もそれほど大きなことにはなりません。

 ですが躁鬱病の場合、その振り幅は自分の気持ちで抑える事も出来ず、突然気持ちが上がったり沈んだりを繰り返し、制御できずに悩むのです。

 この悩む思考もまたストレスとなり、症状を悪化させる事に繋がります。


 その感情の浮き沈みを抑えるのが私たちの体内にある『セロトニン』と言う、別名『幸せホルモン』と呼ばれる物質です。

 セロトニンが多く分泌されると、幸せな気持ちが高まり、体内のストレス因子を減らせる作用があります。

 逆に少なくなると、ストレス因子に対抗する事が出来なくなります。

 ですが常に多く分泌されている状態が正常と言うわけではありません。

 常に多く分泌されている場合、判断能力の低下につながり、集団生活の妨げになる場合もあるからです。

 でも多いに越した事はない、と考える方がいらっしゃったら、想像してみるとわかるかもしれません。

 大切な肉親が亡くなったとしても、厳粛な会議の途中であっても、自身の危機的状況になったとしても、それが幸せな事なんだと錯覚してしまう事は、はたして幸せなのでしょうか?


 さらに鬱病には、睡眠障害に味覚障害、身体的異常や幻聴、幻覚も起きます。

 甘え病ではなく、脳の病気なのです。


 つづく

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