第31話 復帰からのまた災難復活

 休暇の一ヶ月を過ぎてからの復帰、仕事に戻った私を待っていたのは慌ただしい仕事の日々でした。

 休暇中に私を気遣って連絡をしてくれた直属の上司、さらには寺院関係の方から直接携帯に電話がかかってきたり、これまで担当した宗家(葬儀を行ったお客様)の方からも心配されました。過労でダウンした事になっていたようです。

元気になるからと野菜貰ったり惣菜を貰ったり、ドリンクをくれたりと、みなさん忙しい中仕事場に足を運んでくれました。

 職場の職員たちも、気遣って仕事を手伝ってくれましたが、正直言ったら私が弱ってる時に手伝うんじゃなく、弱らないために各々分担して作業をしてほしかったものです。

 ドライアイスの準備や届いた荷物の品だし、道具の整理に準備に清掃に物品発注、それらの大半を押しつけられる形になっていたのもあって仕事量が増えてたんですから、そこは今後も改善して行ってもらうように声掛けしていかなくてはと思いました。ブランクは一ヶ月ありましたが、2年のブランクがあった時の復帰に比べたらなんら問題なく仕事は進められました。


 そして復帰してからは、昼食もしっかり取るようになりました。

 相変わらず味は微妙ですが、上手い不味いは判別できるまでに回復はしています。

 ただ喉を手術していたので、声は今までよりも小さなものになっていましたが、発声練習も兼ねてカラオケに行く様にしています。

 普段から腹から声を出す様にしていたんですが、急激に痩せて体重を元に戻したので、筋力は落ちており思う様な声が出せずに、苛立ちを覚えましたが、これもそのうち元に戻るだろうと考えていました。


 家庭も家業も仕事も安定しており、あの頃必死だった返済に追われる生活からは想像も出来なかった今と言う生活に、安堵と安らぎを感じていました。


 そんなある日、父と母から相談があると電話が入りました。

 嫌な予感がしました。




 私はその日、宿直で会社に泊まる事になっていたので、帰ってからで良いか聞いたのですが、父が直接会社に出向いていくとの事でした。

 そして職員が返り、私だけになった時に父がやってきました。

 父は、綺麗な事務所だとか、仕事はどうか、体調は落ち着いているのかと聞いてきてなかなか本題に入りませんでしたが、私が何があったのか聞くと、新しいトラックを買うためにお金を貸してほしい、と切りだされました。

 債務整理をして、返済を全て元本で返す様にした事で、それ以上の借り入れをどこも引き受けてはくれない状態になり、現金一括払いで買う以外に手が無いとの事だった。

 無理に今増やさなくても、修理して乗ればいいのでは?と聞いたら、大本のエンジン部分が老朽化で使い物にならなくなってるらしく、エンジンを詰み替えると中古のトラックを買うのとでは金額に大差がないとの事でした。

 ただ、中古を買うと言うのもなかなかギャンブルなもので、だめなものは一年もしないうちに修理が必要になるものも多い。それなら多少費用がかかってもエンジンを積み変えた方が安く済む、と食い下がりましたが、他の部分もガタがきており、いつ壊れてもおかしくないとの事で、少しずつ出費が重なるぐらいなら中古を一台買った方が良いとの事。さらにその中古は、今会社を拾って仕事をくれている会社の車だそうで、そんなに年式も古くなく、十分修理無しで乗れる代物なのだそうだ。

 今後の追加費用の心配が少ないのであれば、仕方ないと思い、返済し終わっていた銀行の1社、90万の枠が残ってるカードと通帳、そして残りの10万はコンビニの銀行から下ろして、合わせて100万円を渡す事にしました。

 ただし、返済は会社でしてもらう事、私にもそ返せなくなったともって来ても、私は絶対に返さないからと釘を刺して渡した。

 父は申し訳なさそうにしていましたが、約束は必ず守ると言い、帰っていきました。


 私の中で不安は拭い切れませんでしたが、もし返せなかった時は、私が返すつもりで貸しました。

 その時には私の手もとの負債もほぼ終わっているはずだからです。

 ですがその心配は杞憂となり、無事に会社が全て返済を終わらせてくれてました。


 そして、これとは別の、また次の問題が我が家に振りかかったのです。

 その原因は、兄でした。


つづく

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