第25話 坑うつ剤の副作用
会社の再出発を決めて、少しずつ家の中の雰囲気も穏やかなものに変わってきましたが、それでもまだ心配の種は消えていませんでした。
母の抗がん剤治療の通院、兄弟と父は再就職し、各々の稼いだ給料を持ちより支払いに追われる日々。私は私で借金返済、そして月一回の精神病院への通院が続く日々。
そんななかでも、家族の支えになっていたのは兄の子供である、私からしたら姪の二人の存在でした。
それは私だけじゃなく、闘病生活を続ける母、父に兄弟にとっても同じ事でした。
子供が学校に行く時の「いってきます」、帰ってきた時の大きな「ただいま」、ご飯を食べる時の「いただきます」、食べた後の「ごちそうさま」、寝る前の「おやすみ」、朝の「おはよう」、大きく元気な声に励まされてきました。
子供は天からの授かりもの、そして天使です。
この子たちの為にも、私たち家族が壊れるわけにはいきません。その思いで、仕事もがんばれました。
お陰で私の抱えていた大きな金利の銀行も1社終わらせる事が出来、借金も返済スピードも少しずつ上がってきました。
さらに三井住友銀行から電話があり、借入金額を増やしてもらえるようになり、また大きな金利の銀行を1社完済出来、負債は合計で300万まで減らせる事が出来ました。
最初の負債額よりも大きくなっていましたが、それも今後の昇給や賞与で一気に金額を減らせる事が出来るので、心配するほどの事もありませんでした。
体調自体は正直、良いものではありませんでしたが、動く分には問題も無く、これまで100円使うのが精一杯だった昼食や宿直のご飯も、サラダを買ったりインスタントラーメンを買う事が出来るぐらいまでになりました。
味覚障害はまだ完治しておらず、相変わらず濃い味にしないと味も判別できませんでしたが、甘い辛いがわかるまでに落ち着いています。
坑うつ剤も量を減らせるぐらいにまでなり、睡眠導入剤も一時中断して良いと言われました。
ですが、坑うつ剤を飲み始めて、私はセックスに対する興味が急激に衰えていました。
快楽と言うものが感じる事が少なく、それでも日中に勃起したり、夜ムラムラする事もありましたが、AVを観ても不快に感じる事が多く、もっぱら二次創作の同人誌やアダルト雑誌を観る事が大半でした。
そしてここで大きな問題は、彼女と会い、手をつないだり抱き合ったりした時、勃起して制御不能に陥る事もありましたが、勃起時間が極端に短く、前戯を含めて10分前後しか保たず、それ以降は回復するまで行く文化の時間が必要になった事。
そして何より、射精出来なくなっていました。
坑うつ剤、坑精神薬の大半に含まれる副作用には『性欲減退』『勃起障害』『月経異常』が含まれています。
射精することが出来ず、セックス時の勃起時間も短く、硬化もされない状態でセックスしても気持ち良くなどありませんでした。
それでも艦所はまだ大学生、遠距離で滅多に会えないのもあり、二人でいる時間は可能な限り濃密なものにしたいとお互いに考えていました。
ですので私は彼女にバレないように、精力増強剤、バイアグラも病院で処方してもらっていました。
ですがバイアグラと坑うつ剤のバランス調整は難しく、坑うつ剤を服用する前に飲まなくてはバイアグラの効果は得られず、坑うつ剤を飲んでからバイアグラを飲んでも一切効果を得られなくなるのです。
そしてその薬の常用を繰り返すうち、バイアグラが効かなくなってきました。
これではだめだと思い、栄養ドリンクやエナジードリンクを試してみると、飲んですぐの時には効果を実感できましたが、それも長くは続きませんでした。
さらに睡眠障害もあった私は、彼女を駅に迎えに行く時、または私が彼女のところまで車を走らせている時でも容赦なく襲ってきます。
ですので常にエナジードリンクに入眠打破、メガシャキを車の中において運転していました。
そうした生活をまた続けてしまったが為に、カフェイン過剰摂取による偏頭痛に悩まされるようになりました。
そんなある日、私は仕事中の眠気を吹き飛ばそうとエナジードリンクを二本一気飲みして働いていました。
お昼を過ぎて午後からの仕事に取りかかろうとした時、眼球をえぐり取られる程の痛みに襲われ事務所で床にうずくまり、意識を失ったそうです。
気付いた時には、病院のベッドに寝かされていました。
ナースコールを押し、先生と看護師が集まって倒れた経緯を説明し、痛みの度合いを伝えると、脳の精密検査を勧められました。
つづく
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