第17話 異変
彼女に電話をかけたのは、深夜0時前でした。
彼女も夜型の人間で、この時間でもレポートをやっていたり、サークルの軽音部のギターの練習をしたりしていました。
電話をかけ、私の声が暗い事を察して、何があったのか聞いてきましたが、別れて欲しいとだけ告げました。
彼女からしても意味がわからず、何があったのかだけ説明してほしいと告げられ、今まで隠していた家の借金を肩代わりしている事、さらに借金が増えた事、会いに行く費用を捻出する事も難しくなってきている事、仕事場に居場所が無い事も全て打ち明けました。
ネットやテレビでも、ダメ男の典型的な言い分だと自覚していたので、これで見事に嫌われて別れて借金返済に専念出来ると思っていたのですが、彼女は言ってくれて嬉しい。会いに来れないなら会いに行きます、外食はやめて、家でご飯を作るようにしましょう、そうすれば私と別れなくてもいいでしょと、言ってくれました。
大学生で遊びたい盛り、友人との付き合いもあり、家から学費を出してもらってる生活を送って余裕もないのにそう言ってくれて、初めて電話越しですが彼女の前で泣きました。
頑張るから、必ず完済して絶対に幸せにするからと告げ、これからも交際を続ける事にしました。
そして、このままではいつまでも彼女に甘えてしまうと思い、もう一度借金を返済する計画を立て直しました。
法テラスに電話をしましたが、そこではやはり債務整理が一番妥当ではないのか、と言う返事でした。
たしかに債務整理なら元金から返す手続きを踏む事で返済スピードもあがりますし、完済が無事終わればブラックリストにも載らない、デメリットは少ないのですが、その書類を準備するためにはやはり弁護士に相談して準備してもらう、その為には弁護士費用が必要になってくる。
その先立つものがない状態ではなかなか踏ん切りがつかなかった私は、さらに年債の方法はないか、インターネットで調べて見ました。
すると、以前聞いた『おまとめローン』で借金を返済したと言う体験談を記したホームページに行きつきました。
おまとめローンと言う言葉に一度騙されかけたので、軽く目を通すだけのつもりでしたが、そこには具体的な例と金額等が書かれており、まっとうな銀行でも取り扱っているとの情報を知る事が出来ました。
当時の情報では、一番有力だったのが『東京スター銀行』『みずほ銀行』『三菱東京UFJ銀行』『三井住友銀行』『オリックス銀行』の5社でした。
どこも大手の銀行でしたし、私の住んでる地域に無い銀行ばかりだったので、やはり無駄だと思われましたが、ネットでの申請で審査を受けれるとの事でした。
私は5社すべてに申請を出しました。
『東京スター銀行』『三菱東京UFJ銀行』『みずほ銀行』『オリックス銀行』はダメでしたが、『三井住友銀行』から、おまとめローンの審査に通りましたので借り入れ可能ですと返事をいただき、一気に救われる事になりました。
今借りてる銀行の金利は18%でしたが、三井住友銀行の金利は12%でした。
6%ぐらいではありません、6%も金利が下がるのです。
以前なら1万円の返済で2千円持っていかれていた利息が、千円前後で済むのです。
これで大きな金額の銀行の返済を移動出来れば、毎月2千円多く返せる、そしてその銀行を終わらせれば次の所と1社ずつ消していけば、数年で完済できる計算に行きつきました。
希望が見えた私は、生きる気力を見つけられました。
何より、協力してくれると言ってくれた彼女に、相談に乗ってくれた上司にすぐさま報告しました。二人ともよく頑張ったと褒めてくれました。
それが何より嬉しくて、また泣きました。
そして友人と一緒に出かけて、ご飯を食べる事になった時、異変に気付きました。
料理の味がわからなくなっていました。
つづく
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