第10話 返済計画を再検討することに

 年末になると、どこも慌ただしくなるものですが、それは葬儀社も変わりません。

 師走と言う言葉がありますが、こちらは本来の語源として、『師果す(しはす)』から来てるそうで、僧侶に限らず、師を務める人が一年の最後を締めくくる、仕事を果たす事から来てる意味で、僧侶がお経を唱えるために走り回る意味ではないそうです。

 こちらも諸説ありますが、寺院関係の方に取ったらもっとも師走にふさわしいのは、七月八月のお盆時期だそうです。

 師走に入り、仕事も忙しくなってきてる中、今までの不摂生がたたり、私は栄養失調になっていました。

 栄養失調と言っても、何も食べておらず餓死する寸前と言うわけではなく、ビタミン・ミネラル欠乏症です。野菜や果物、肉類を取ることが少なくなった事で、栄養に偏りが生じている状態です。

 栄養失調になると、鳩尾の周辺が痛んだり、指先に寒気が起きる、震える等の症状が現れます。私の場合はみぞおちの痛みと震えだけでしたが、この時は単なる低血糖だと思い、職場のコーヒーに砂糖を入れてしのいでいました。


 この時の私の収入は、仕事の忙しさもあり、例年より給料は多かった。

 基本給に手当がつき、保険が引かれて手取りで『18万』。以前の仕事に比べたら多くもらえていますが、仕事量に対して給料には不満を持っていましたが、以前よりもらえている手前文句は言いませんでした。

 そのうち2万1千は車のローン。煙草代に9千。携帯代に5千。ガソリン代に1万5千。家に食費代として3万。宿直や普段の生活費として余分に2万。

 合計で10万円が個人的に使ってる分です。

 煙草も辞めればよかったのにと思うかもしれませんが、職場との往復のみの生活で、家でも可能な限り電気を使わないようにし、趣味と言えるものもほとんど節制し、レンタルビデオやCDや本の購入、出かける事も極力控え、晩酌もしていなかったので、唯一のストレス解消である煙草を辞める事は出来ませんでした。

 そして、残った8万円は、すべて返済に回していましたが、一気に8万円返せるわけではありません。

 4社から借り入れしており、それぞれに金利が発生しています。

 金利18%ですので、簡単に考えると元金の約2割が金利となります。

 1万円返したら、凡そ2千円程が利息として持って行かれ、元金は8千円しか減りません。それがまず、30万借りている銀行が2社。

 次に90万借りてる2社ですが、最低でも毎月1万ずつ返済してほしいとの連絡があったので、まず1社には1万円ずつ。利息は凡そ7千円ですので、元金は3千円ずつしか減りません。そして残りの1社に、残りの5万すべてを返済額に当てると、利息として7千円持って行かれますが、元金は4万3千円ずつ減っていきます。

 1社ずつ、大きな金額のところから返済して行けば気持ち的に楽になると思い、1っ社に絞って返済を進めてきました。


 返済開始から凡そ5ヶ月が過ぎており、1社の元金が21万5千円減り、残り68万となっていたので、これを続ければ数年ですべて返せると思い、栄養失調の苦痛も気にならなくなっていました。

 ですがこの時、一つ失念していたことがありました…


 師走の忙しい中、銀行から電話が入りました。それは私が個人的に使っている銀行からで、パックカードローンの利息分の返済ができていないとの事でした。

 パックカードとは、銀行によって商品名は事なりますが、枠内であればいつでも自由にお金を使ってよいローンです。ですが半年に一度、使用された枠内の金額の利息が引かれます。

 この時私は30万の枠を持っていたので、凡そ1万5千円の利息を引かれないといけなかったのですが、残高不足で引かれなかったのです。

 そしてその返済の為に、返してきていた銀行から利息分を引き、パックカードの利息に当てることにしました。

 半年に一度の返済が必要だった事を忘れていた為、今後は気をつけようと思いました。

 もしこういったことが重なると、今後車などのローンを組む時に審査に通らない可能性も出てきますので、返済を遅らせる事は絶対に避けねばなりません。


 そして今年最後の返済を済ませ、師走も終わりに迫って来た時、遂に私は仕事中にふらついて倒れてしまいました。

 そして病院に行くように勧められましたが、手持ちが無かったために病院へ行くのを拒みました。途中で帰るかと聞かれましたが、手当が少なくなるのが嫌でそれも拒み、最後まで仕事は続けました。

 そしてその日、宿直が上司だったので、私は上司にこれまでの事や、これからの事を相談する決心をしました。


 つづく

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