第9話 友人からの頼み

 借金返済生活が始まり、これまで少しずつ貯めてたお金を先に借金の返済にまわしました。ただ貯金も数万しかなかったので焼け石に水でしたが、無いよりは良い。

 そしてこの日から、毎日買ってたコンビニでのパンやコーヒーはなくなりました。

 元々朝食を食べる生活をしていなかったので、元に戻ったと思って気にしないようにしました。

 そして仕事もそれなりに流れを理解し、特にストレスなく仕事は進めていました。

 入社して一ヶ月で宿直をこなすようになりました。

 ですが宿直に際して、夜食などは出ないので自腹で夜食を準備する必要がありましたので、お昼は家で作ってくれたお弁当を持参し、夜食は自宅からタッパーに入れて持ってきていたご飯をレンジで温め、スーパーの惣菜売り場で一個100円のクリームコロッケを買い過ごしていました。

 そして宿直明けの翌日も定時まで仕事なのですが、その際いつもはお弁当を買いに行っていたのですが、お弁当は当時も398円かかっていたので、これも自宅から持って生きていたご飯をレンジで温め、100円の惣菜を買って過ごしていました。

 正直、これだけではお腹を膨らませる事が出来ないので、会社のインスタントコーヒーをガブガブ飲んでました。一日に5杯程は飲んでました。

 そして宿直明けに通夜が入っていたら、定時で終わる事も出来ず最後まで出なくてはいけなかったのですが、この時も夜食などは出ません。

 空腹のまま通夜を終わらせ帰ります。この時に通夜の会食の準備があったら結構胃に来るものがあり、お腹が鳴ったりする事もしばしばでした。

 いつもは玄関や外灯に火が灯ってる我が家が、いつの日か電気を点けなくなりました。少しでも電気代を抑えるためでした。

 帰宅すると、鍵がかけられており、鍵を開けて入り、そのあとすぐ閉める。

 そして母が準備してくれていた晩ご飯を食べるのですが、冷めてるのもありますが、空腹の時間が長くなると、胃に物を入れる事が苦痛になってくるので多く食べる事が出来なくなってきました。


 そんな生活が一ヶ月が過ぎ、給料日の日、いつもより多く入金されており、上司に聞いてみたら、研修期間が終わって基本給扱いになり、通夜手当や宿直手当がつくようになったからそれで増えてるとの事でした。

 これで少しは多く返せるようになると思いました。

 ですがそう上手くいくものでもありませんでした。


 葬儀の仕事について半年と少しが過ぎたころ、高校時代の友人から数年ぶりに連絡が入りました。

 久しぶりに話がしたいからご飯を食べに行こうとの事でした。

 私も手元に余裕が無かったので断ったのですが、じゃあご飯はいいから久しぶりに話をしようとなり、電話じゃダメな事なんだと察した私はとりあえず会う事になりました。

 久しぶりに友人に会うと、奥さんと一緒に私を待っていました。

 挨拶もそこそこに、友人がローンを組みたいんだけど今自分の借り入れ額がいっぱいで借りられないから、代わりに借りてほしいとのことでした。

 昔から、お金の貸し借りは友人同士では絶対にしてはいけないと教わってきたので、もちろん断りました。ですが、奥さんのお腹の中に赤ちゃんがいて働く事が出来ず、そろそろ入院しなくちゃいけないのだが先立つものが無くて困ってるとの事でした。

 当時は、出産費用や入院費用の控除はありましたが、先払いですべて払ってからの払い戻しが主流だったのですが、その入院や出産費用が準備できなかったとの事でした。

 高校からの付き合いで、高校でも同じ悪さをした仲でもありましたが、人間性は悪くなかったし信用もしていたので、仕方なく名義貸しでローンを組むことになりました。


 借り先は銀行ではなく、アコムで組むことになりました。

 アコムでローンを組む際は、免許証と印鑑さえあれば誰でも組むことができます。

 今は法改正がされて難しくなってきてると思いますが、当時はATMの前ですべて行う事が出来ました。

 まずATMのパネルを操作して、その後書類が出てきて、必要事項を明記、印鑑を押した後、スキャナーに書類をセットし、上からのカメラでその書類を読み込む。

 そして本人確認の為に免許証も同じようにカメラから見えるところにセットし、本人である確認の為に正面のカメラにも顔を見せ、本人確認と書類に不備が無ければ、その場でカードが発行され、希望する金額を引き出すことが出来ます。

 そして10万のローンを組み、友人にそのお金とカードを渡し、友人のおごりでご飯を食べて帰りました。

 返済に関しては、友人が自分で返していき、完済したら私に連絡が来て解約の手続きを済ませると約束してもらいました。

 ここでもし私が強く断っておけば…安請け合いをしていなければ、これからの生活ももう少し早く終わらせる事も、私自身が後悔する事も無かったのかもしれません。


 つづく

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