第8話 2年ぶりの葬儀の仕事

 2年ぶりに葬儀の仕事に携わった私の一日目は、慌ただしい中終えることになりました。

 翌日、午前中に制服として着用するスーツをスラッグスを準備するため紳士服売り場に向かい、寸法を合わせてもらい、午後から出社することになった。

 その日は葬儀が終わり、次の遺族の通夜の準備の手伝いに入りました。

 その中で、宗旨の説明を受けましたが、すべて知ってる事ばかりでしたが、抜けてる説明もあったため、新人の私が補足するという事もありました。

 正直、葬儀社として古くからいた人たちは高齢の為退職されており、実務経験で言えば私よりも下の人たちばかりが先輩としていたため、立場が逆転していると言う不思議な状態になってしまいました。

 その後、道具の置かれている場所や説明を受け、それぞれの寺院で使われる道具の説明も受けました。

 中には、始めて見る道具もあったため、何に使う道具なのか、道具の由来等も聞きましたが、そこまではわからないと言う返事でした。

 おいおい仕事をする中で覚える事もあるので、その都度質問して下さいと言われ、個人的に調べる事も多々あります。

 これは教えて下さった方の知識が浅いのではなく、葬儀に関する事は現場で覚えるのが一番の近道と言う昔ながらの指導によるものです。

 そんなこんなで、あらかたの知識を再確認しました。



 葬儀の仕事に就き、数ヶ月が過ぎた頃、仕事を終えて家に帰ると、我が家の運送会社の経営が難しく、私たち兄弟が預けていた銀行の返済が滞っていると言う話を聞かされました。

 新会社で、お得意さんがいるわけでもないので、軌道に乗るまでに時間がかかるけどなんとかなると家で父と母も話していたのですが、その取引をしていた会社が倒産したのです。

 そのため、父が以前からお世話になっていた会社に仕事の紹介を依頼したりしていましたが、そこも不景気でなかなかまわせる仕事もない。

 そのため、元の取れない仕事をしたり、売り上げも微々たる仕事しか出来なくなっており、返済にまわす分の捻出が出来なくなっていました。

 そこで、外に働きに出てる私と姉の二人が、自分の分の銀行の返済を請け負うと告げ、少しでも会社にかかる負担を減らせる事にしました。

 両親は申し訳ない顔をしていましたが、仕事が軌道に乗ったら返してくれたらいいと明るく返しました。


 そこから、私の借金返済生活が始まりました。


 私が両親に渡していた借金の総額は、240万。

 姉が渡していた分は100万でした。

 そして姉は2社の銀行から借りており、私は4社の銀行から借りていました。

 当時の銀行は、高校生からでも通帳を作れたし、今後の就職に必要になってくるであろうと言う名目で、ローンを組む事も出来ました。

 今ではローンを組むには、仕事をしてからでないと難しいところもあるそうです。

 そして当時の金利は18%でした。

 銀行なら金利は安いと思われそうですが、教育ローンではなく、フリーローンで組むことを当時は進められていた為、一番金利のかかるフリーローンで組むことの方が多かったのです。

 そして2社は30万ずつ、残り2社は90万ずつです。

 この時、少しずつ返せばすぐに返せるだろうと考えていましたので、それほど大きなことだと思っていませんでしたが、この時を境に少しずつ私の精神が崩れていくことになったのです。


 つづく

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