第2話邪気祓いの石

【天空路家の母屋】


「お母さん」


「あら、どうしたの?もう出かける時間じゃないの?」


「うん、これからだよ。お母さんありがとう」


「何の事?」


「羊里君の事、パパに頼んでくれたでしょう?」


「ああその事ね、ウフフ」


「行って来ます」


【麻里愛の家】


「富さん、行って来ます」


「生ゴミ出しといてね」


「うん、持った」


〈生ゴミを持って学校に向かう麻里愛〉


【ゴミ置き場】


〈出勤途中の人達がゴミを出している〉


「おはようございます」


「おはよう」


〈向こうから不機嫌な顔で四柱が来る〉


「(出たわね、妖怪四柱)」


〈麻里愛は少し離れた所で足を止める〉


「あんた達!ここはうちの土地なのよ!あんた達のゴミも置かしてやってんだからね!」


「え?」


「はあ」


〈四柱見栄は凄い形相で怒鳴りつけると行ってしまう〉


「何今の?」


「ありゃ鬼婆だな」


「いつもああだよね」


「朝から疲れるな」


「おはようございます」


「ああ、麻里愛ちゃん。これから学校かい?」


「はい(ハァ、ここも凄い邪気だわ)」


【Lapis夢が丘店】


〈店内の時計は9時。遊は店の掃除をしている〉


羊里君は、9時半頃来るのかな?


「おはようございます」


「え?」


「何?そんなに驚いて」


「あれ?今日休みじゃなかった?」


「だから来たの。昨日言ったでしょう」


いや、そうだけど…


「休みの日はゆっくり身体を休めないと、明日はまた仕事なのに」


「家に居ても遊ちゃんが心配で、気が休まらないわ。だからこうして手伝いに来た方がまし」


〈そう言うと麻友はカウンターの中に入って行った〉


はあ…


僕ってそんなに頼りないかな?


〈遊は掃除を済ませてカウンターに向かう〉


【カウンター】


「何作ってるの?何だか美味しそうな匂いだね」


「フルーツタルトは3種類ぐらいで良いかしら?後はエッグタルトとチーズタルト」


「美味しそうだけど、そんなに作ってもお客様来てくれるかわからないよ」


「そうね、でも飲み物だけってわけにはいかないでしょう」


まあ、そうだけど…


「ちょっと味見してみて?」


〈麻友は遊の口にタルトを入れる〉


「どう?」


「うん、美味しい」


「良かったわ。はい、今度はチーズタルト」


〈また遊の口にタルトを入れる〉


「あー、二人で何やってんだ?」


「来たのね」


「来るさ、俺はla merのオーナーから言われて来てるんだからな」


「お、おはよう羊里君」


〈遊は口の中のタルトを飲み込んでそう言った〉


「おはよう遊ちゃん」


〈羊里はそう言うとタルトに手を伸ばす〉


「ダメよ」


〈麻友はお皿を引っ込める〉


「何でだよ?遊ちゃんには食べさせてたじゃないか?俺にもぉ。あーん」


「これはお客様のです」


そんな事をしている間に、もう開店時間だ。


〈遊は二人を気にしながらも鍵を開けに行く〉


まあ、仕事中はベタベタしないだろうし、良いか。


はあ…


【Lapis本店】


「(今日は麻友さんお休みだから、由良ちゃんが来るまで一人だわ。平日だから、そんなに忙しく無いと思うけど…)」


〈アクセサリーを綺麗に並べ直している〉


「(お兄ちゃんどうしてるかしら?私も夢が丘店に行きたいな。今度のお休みに行ってみようかしら?)」


〈観葉植物に水をやる〉


「あ、寿様。いらっしゃいませ」


「春陽ちゃん一人?」


「はい」


「天空路さんは?」


「夢が丘店に居ます」


「夢が丘店?」


「はい、夢が丘温泉駅のすぐ近くです」


「支店出したの?彼ずっとそっち?」


「はい、今はそうです」


「そうなんだ…」


「何か御用でしたか?」


「クリスタルの去勢の事で相談したかったのよ」


「お伝えしておきます」


「ありがとう。また来るわ」


【Lapis前】


〈寿宴が出て来る〉


「(何よ。じゃあ、もう一緒に帰ったり出来ないわけ?ああん、せっかくクリスタルの事相談するの口実にデート出来ると思ったのに)」


【百花女子学園】


「ハァ…」


「何よ麻里愛。ため息なんかついちゃって」


「朝から気分が悪くて」


「え?どこか具合でも悪いの?」


〈麻里愛は朝のゴミ置き場での事を話した〉


「何それ?信じられない」


「この前なんて、お爺さんの方が自転車で猫を追いかけ回してたのよ」


「え?猫好きの私としては聞き捨てならない話しだわ。それで?」


「その猫、急いで自分の家に逃げ込んだんだけどね、その時丁度家の人が玄関に居て、目の前まで自転車で突っ込んで来られてびっくりしてた」


「私なら怒ってやるのに」


「そのまま行っちゃったから、その家の人怒ってたわよ」


「鬼婆の婿も鬼?あの人マスオさんなんだって」


「もううちの辺り邪気が凄くて疲れるわ」


「邪気祓いの石でも買えば?」


【Lapis夢が丘店】


〈店内の時計は午後3時〉


「お客さん居ないし、ティータイムにしようよ。美味しいコーヒーを入れてあげるからさ」


「遊ちゃんはコーヒーダメなのよ」


「あ、そうだったか」


「私が紅茶を入れます」


「ダージリンだったよな、良し」


〈茶葉の入った入れ物を取る羊里。麻友はそれを取って〉


「はい、ありがとう。後は私がやります」


「何だよ、俺が紅茶入れちゃいけないのかぁ?」


「遊ちゃんの好みは私の方がわかってるから」


「ちぇっ、その言い方何だか恋人みたいだぞ。いつもは「弟みたいなものよ」なんて言ってるけど、本当は好きなんじゃないのか?」


はは…まさか。


麻友さんはいつも僕の事子供扱いして、本当に弟ぐらいにしか思ってないよ。


一つしか違わないのにな。


〈扉の開く音がする〉


「いらっしゃいませ」


麻友さんのそばに羊里君を置いて行くのは嫌だけど、お客様だからね。


「こんにちは」


「あ、こんにちは」


「お部屋の浄化は出来ましたか?」


「はい、家の中は良い感じなんですけど」


「邪気祓いの石有ります?」


「色々有りますよ。オニキスとか」


「あ、オニキスって聞いた事有る!確かパパのカフスがそんなのだった」


「ブラックオニキスは、髪にも良い効果が有るんですよ」


「それってハゲに効くとか?パパに教えてあげよう」


「おじ様まだハゲてないじゃない」


「薄くなってるんだもん。ハゲたら嫌よ」


「薄毛には遺伝的な物も有りますが、脂肪を多く摂り過ぎる食生活も良く有りません」


「そうなのよ!だから頭が凄い油なの」


「毛根に皮脂が詰まると、毛髪が成長出来なくて抜けてしまうんです」


「そうでしょう?そうだと思うわ。うちのパパこってりした物が好きなのよ」


「男性ホルモンのテストステロンが多くても薄毛になります。その場合はホルモンバランスを整える石を使います」


「ホルモンバランス?女性にも良さそうですね」


「はい、女性を美しくする石が多いですね」


あ、今二人の顔がパッと明るくなったぞ。


女の子だね。


「キャー可愛い」


「これも素敵」


あれからさんざんインカローズやローズクォーツ、ロードナイトなんかの石を夢中で見てるけど、邪気祓いは良いのかな?


まあ、少し自由に見てもらおうか。


石のエネルギーを感じれば、彼女達にも良い効果が有るしね。


【カウンター】


「遊ちゃん、お茶だけでも飲めば?」


〈そう言う羊里はカウンターの奥でコーヒーを飲んでいる〉


「麻友さん。お客様にケーキお願いします。女性の方が良いかも知れないから、お話し伺ってください」


「はい、承知しました」


「え?ここはタダでお茶とか出す店にするのか?」


「ご注文じゃないし、学生さんみたいだから今日はサービス」


「何だか楽しそうだな。ガールズトークか?」


やっぱり麻友さんに頼んで正解だったね。


楽しそうな笑い声が聞こえる。


【テーブル席】


「美味しい。これお姉さんが焼いたんですか?」


「はい、そうです」


「わあ、私作り方教えてもらいたいわ」


「私達何しに来たんだか。邪気祓いの石を探しに来たのに」


「だって、黒い石とかあんまりピンと来なくて」


「赤天眼石とか、ピンクタイガーアイなんかも有りますよ」


「タイガーアイって、良くオジサンが付けてるイメージ」


「でもピンク?」


「うちではマゼンタと言います」


「あれ?さっきのオジサンは?」


「お呼びしましょうか?オーナーお願いします」


「はい」


オジサンかぁ…


麻友さんの事は「お姉さん」て言ってたのにな。


「どうしたんですか?」


〈ちょっと変な顔した遊に麻友が聞いた〉


「あ、いや、さっきのオジサンです」


「アハハごめんなさい。オジサンだなんて」


「いえいえ、オジサンには違い無いですから」(汗)


「邪気祓いの石探さなきゃ」


「ピンクタイガーアイも可愛いね」


「痴漢やセクハラ、ストーカーなどには良いですね。悪霊とか霊的な物ならスモーキークォーツやアイアゲート」


「渋っ」


「アイアゲート?」


「天眼石です。模様が目のように見えるでしょう?」


「あら、本当」


「人間の悪意なんですけど、もう魂レベルの邪気なので」


「赤天眼石は?」


「良いと思いますよ。赤天眼石は生霊の邪気祓いに効果が有ると言われています」


〈麻里愛は赤天眼石一粒手に持ってみる〉


「利き腕と反対の手で握ってみてください」


「強いエネルギー」


「強過ぎると感じるなら、数を少なくした方が良いですね」


「じゃあ、ブレスレットはダメね」


「私エネルギーを感じやすいので、三つが限界です」


「じゃあ、ペンダントとかストラップ」


「そういうの有りますか?」


「Lapis夢が丘店では、全てオーダーメイドでお作りしています」


「だからあんまり商品が並んで無いんだ。見本ばっかりだもんね」


〈麻里愛は壁のポスターに目をやる〉


「アクセサリー制作講座?」


「え?受講料無料だって!本当ですか?」


「はい、材料費のみになりますが、そちらも割引きになります」


「作ってみたい!」


「あ、でも私時間が…明日また来ても良いですか?」


「はい、どうぞ。お待ちしております」


「真理絵帰ろう。間に合わない。あ、美味しいお茶とケーキご馳走様でした」


〈急いで店を出る二人〉


【店の前】


「びっくりだよ、もうこんな時間になってた」


「石を見てたら楽しくて、時間を忘れちゃったわ」


「うんうん」


「あの人のオーラ緑色だった」


「誰?」


「お姉さんがオーナーって言ってた人」


【天空路家の玄関】


「ただいま〜」


あれ?Lapis達が来ないぞ。


〈玄関に女物の靴〉


「Lapis〜rutile〜パパちゃん寂しいでしゅ」


【ダイニング】


「お帰りなさい」


「あ、美味しそう」


〈テーブルに料理が並んでいる〉


「凄い汗。先にお風呂に入って」


「え?お腹空いたよ」


「ダメです。Lapisもrutileも汗臭いお兄ちゃんなんて嫌よね?」


二人共春陽ちゃんに抱かれちゃってる。


だから迎えに来てくれないんだよな。


rutileはまだしも、Lapisまで来てくれないか…


しようがない、お風呂に入って来ますよ。


【脱衣所】


いつもならここで二人で待っててくれるのにな。


春陽ちゃんが居ると来てくれないし。


【お風呂場】


来てないよな。


鳴かないもん。


いつも「アーオン、アーオン」て寂しそうに無くんだよな。


だから僕は「待ってね」って言いながら急いで洗うんだけど…


ま、良いっか。


今日は、ゆっくり出来る。


ちょっと寂しいけどね。


本当春陽ちゃんだけには懐いてるんだよな。


他の女の子だとすぐ「シャー!」って言うのに。


ちょっとくっつこうものなら間に入って怒るし。


だから素子ちゃんとも別れちゃったんだよな。


「お兄ちゃん、着替えここに置いとくわよ」


「うん、ありがとう」


あ、そうか。


いつも通り入っちゃったけど、春陽ちゃんが居るんだった。


いくら妹みたいでも、バスタオルを巻いて出るわけいかないんだ。


【ダイニング】


〈トランクス一枚で髪を拭きながら遊が来る〉


「お兄ちゃん、エアコン付いてるんだから、早く着ないと良く無いわ。夏風邪なんかひいたら辛いわよ」


「ハイハイ、着ますよ」


はあ…

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