『猫が焼きもち妬くので結婚できません2』
大輝
第1話Lapisの支店?
【天空路家母屋】
「遊ちゃん、ちょっと良い?」
「はい」
「パパがね、夢が丘温泉のレストランを閉めるって言うのよ」
「経営難だって聞いてるけど」
「あのお店はママの大切な思い出の場所なの」
「あそこで初めてパパと会ったんだよね?」
「その頃はお爺様のお店でね、新しいシェフが来たって言うから、どんなお料理を出すのか食べに行ってみたのよ。それでね…」
はいはい、オーナーの娘とは知らず挨拶に来たシェフの対応がとても良かった、って話しだよな。
知ってて気を使う感じじゃ無かったのが却って良かったみたいなんだけど…
もう耳にタコだよね。
そして母は時々そのレストランに通うようになって、父は母の事をオーナーの娘と知らないまま…
「それでね「シェフの気持ちです」って、ママのお誕生日にね、パパったらサプライズで猫のドルチェを作ってくれたのよ」
それが可愛くて可愛くてって話しだよね、いつも同じ話し何だけど、別にボケてるわけじゃ無くて、ただ何度も言いたいだけなんだよな。
親父は別に猫好きじゃ無かったんだけど、お母さんが猫好きだって知って作ったんだ。
それから急接近したらしいんだけど…
この超天然の母…
親父大変だっただろうな。
「ねえ、遊ちゃん。あのお店遊ちゃんが立て直しなさいよ」
「え?何で僕が?」
「嫌なの?パパとママの大切な場所が無くなっても良いの?」
「いやいや、そうじゃないけど」
「良かった。じゃあそういう事で」
「うん。って、いやいや、そういう事ってどういう事だよ?」
「別にレストランじゃなくても良いのよ。遊ちゃんのお店なんだから、遊ちゃんの好きにすれば良いの。天然石を置いても良いし…でもCafeのスペースだけは残しておいてほしいの。ママが時々思い出に浸れる場所を取っておいてね」
はあ、行っちゃった。
嬉しそうな顔してだけど…
あの店で天然石?
あそこでお客様来てくれるかな?
って、やるの?
僕が?
【夢が丘温泉駅近く】
〈ミッションスクール百花(ももか)女子学園から生徒達が下校する時刻。門から2人の生徒が出て来る〉
「麻里愛(マリア)今の家慣れた?」
「まあね」
「まあねって、引っ越したその日から近所の人に嫌がらせされてるんでしょう?」
「うん」
「家の中ジロジロ見て通ってたよね?見るって言うより睨みつけて」
「あ、そんなのいつもよ」
「あのお婆さん四柱見栄さんでしょう?あそこの孫が今年ウチの学校受験したんだけど面接で落とされたんだって」
「何でそんな事知ってるの?」
「PTA会長がウチに来た時ママと話してたの聞いちゃった。百花は、にわか成金は入れないもんね。ウチのパパも成り上がりだから言えないけどさ、にわか成金とは違うもん」
「またおじ様の事成り上がりだなんて言って」
「良いの良いの、本当の事だもん。それでさ、四柱見栄さんの孫、鬼百合学院に行ったんだって」
「ふーん」
「それにしても嫌よね、家の中睨みつけて歩くの」
「あの人が通った後は邪気が凄いのよ」
「麻里愛そういうの見えちゃうもんね」
「うん。何とかならないかな?あの淀んだ気」
「そう言えば駅前にパワーストーンショップが出来るみたいだよ」
「へー」
「金曜日オープンだって。浄化グッズとか探してみる?」
「そうだね」
【Lapis夢が丘店】
いよいよ今日オープンだけど…
僕一人で大丈夫かな?
麻友さんや春陽ちゃんが来てくれるって言ってくれたのに「一人で大丈夫!」なんて言っちゃったけど…
まあ、あの2人には本店を守ってもらわないといけないからね。
最近は、由良ちゃんもだいぶ慣れてくれたから、僕が居なくても大丈夫だな。
〈店の中を歩きカフェスペースのカウンターの前で足を止める遊〉
本店より、心配なのはこっちだよな。
石の方は良いとして…
どうしよう….(汗)
ま、まあ、何とかなるか。
「お茶ぐらい僕だって出せるよ…たぶん」
「遊ちゃん、おはよう」
「羊里君、何で?」
「オーナーに言われたんだよ「手伝ってやってくれ」って」
「え?手伝ってくれるの?」
「いつまでも、ってわけいかないけどな」
「でも、la merの方は大丈夫?」
「オーナーが良いって言うんだから良いんだよ。奥様に泣きつかれたみたいだぞ」
「ハ…」
お母さんが頼んでくれたのか。
まあ、親父がそう言うなら、しばらくの間羊里君借りとこ。
「カフェスペースは俺に任せろ」
「うん!助かったよ」
「任せろよ。ほらほら、開店の時間だぞ」
「うん!」
【麻里愛の家】
「あらあら、まただわ。麻里愛ちゃん、窓を閉めて頂戴」
「え?暑いのに閉めて良いの?」
「四柱さんが隣りの駐車場に除草剤を撒きに来てるから」
「ああ、なるほど。麻里愛、私も手伝う」
「悪いね、真理絵ちゃん「家の中に入って来るから」って言ったらね「ウチの土地なんだから兎や角言われる筋合い無い!」って怒鳴られたのよ」
「それって、逆ギレじゃない」
「富さん、エアコンつけるね」
「麻里愛ってお婆ちゃんの事相変わらず「富さん」て呼んでるよね」
「だって「お婆ちゃま」て呼ぶと嫌がるのよ」
「アハハ、変わってないね。それにしても、四柱見栄って人意地悪婆さんだね。あの家の人は皆んなそうらしいけどさ」
「この辺りでは有名ね。あそこの気は本当に淀んでる」
「ねえ、これからちょっと行ってみない?」
「どこ?」
「だから言ったじゃない。浄化グッズ探しに行くのよ」
【Lapis夢が丘店】
「お客様来ませんな」
「うーん、ここはリゾートだし、集客は大変なのは承知してたよ」
「まあ、店構えも、隠れ家的なレストランだったからな」
「レストランなら予約のお客様でやって行けたけど、天然石ショップだからね…お客様に足を運んで頂かない事には…」
「まあ、このイケメン執事ことイケメン羊里が居ればそのうち常連客も出来るさ」
そうだよな、美都さんが最初la merに来たのも、羊里君が居たからだもんな。
「おっ、入りにくいのか?」
〈外から店の中を見ている麻里愛と真理絵〉
【店の前】
「ここだよね?」
「うん。前はレストランだったよね?」
「何かカフェっぽいけど、パワーストーン有るの?」
「奥に有るみたいだよ」
〈扉が開く〉
「ようこそいらっしゃいませ。どうぞお入りください」
「あ、はい(ちょっとイケメンじゃない?)」
【店内】
「いらっしゃいませ」
〈羊里にエスコートされ店内を見回しながら入って来る2人〉
「どうぞごゆっくりご覧下さい」
〈そう言うと羊里はカウンターの中へ入って行く〉
「わー綺麗…」
「色々有るね」
「何が良いのかしら?私全然わからなくて」
「聞いてみようよ。すみません」
「はい」
「浄化に良い石ってどれですか?」
「浄化出来る石は沢山有りますよ。どこを浄化したいのですか?」
「この子のなんですけど」
「うーん…」
「もう一層の事、家丸ごと浄化したら?」
家を丸ごと浄化したいのか?
いったいどんなお悩みなんだろう?
それならオブシディアンが良いかな?
でも、あれは扱いが難しいか。
「水晶とかでも出来ますか?」
「出来ますよ。後はブラックトルマリンとか」
「大きな塊…これは何ですか?」
「水晶クラスターです」
「クラスター?」
「長い年月をかけて柱状に集合した物です」
〈麻里愛はクラスターに触れてみる〉
「(凄い強いエネルギー)」
〈持っていられなくて手を離す〉
「何だかちょっと怖い」
パワーストーンに慣れていないようだね。
あまり強い石や癖の有る物は避けた方が良いな。
「私、何を買ったら良いのかわからない」
「何となく気になる石があれば、それが今のあなたに必要な石かも知れません」
「何となく…」
「そんなもんなんですか?」
「例えばね、ここへ来る前に色々調べて「これを買おう」って決めて来たのに、違う石がどうしても気になって仕方が無い時は、その石が今必要な石だったりしますね」
「私、何の予備知識も無く来てしまいました」
「それで良いんですよ。とにかく惹かれる石を選べば良いんです」
「ねえ、麻里愛。ピンクの石可愛い!」
「あ、本当。可愛い」
「でも家の浄化って、水晶とか、そっちの黒いのか…」
「私…今日来てみて、お話を伺って、私に必要な石と運命的な出会いをしたいと思いました。だからすみません。また今度来ます(もう少し勉強してから来よう)」
「はい、お待ちしております」
〈麻里愛はペコリと頭を下げて戸口に向かう〉
「お客様。宜しければどうぞこれをお持ちください」
「え?」
「これ、貰っちゃって良いんですか?」
「こちらに石との付き合い方など書いて有りますので、どうぞ仲良くしてください」
「仲良く?」
「はい、石と仲良く」
「フフ、ありがとうございます。頂いて帰ります」
【麻里愛の家】
「あ、四柱さんが出て来た」
「あぁ…また盛大に邪気を撒き散らして歩いてるわね」
「こっちを見てる。本当凄い顔で睨んで通るよね」
「他の人は家の中見て通らないんだけど…」
「当たり前でしょ。それが普通よ。でもああいう人ってさ「見ないでください」なんて言おうもんならまた逆ギレして大変でしょう「見てません」て言い張るな、きっと」
「うん。前に怒鳴り込んで来たから、富さんが「前にも怒鳴られて」って少し言ったら「そんな事した覚えない!そういう事を言うんですか!」って、言いがかりだって言い張ってた」
「やっぱり、大きな魔よけグッズ買って来れば良かったね」
「あ、でも、この頂いたの置いてみる」
「私も開けてみよう。わぁー、小さいけどキラキラしてる」
「水晶のさざれ石。まずは…天然塩で洗うのね」
「私もここでやってって良い?」
「勿論よ」
「えーっと洗ったら、水を拭き取る」
「月浴びだって、何だかロマンチック」
「水晶だから、日光浴も良いのね」
「窓際に置いとくだけで良いんだぁ」
「夏場だから、すぐに乾きそうね」
「お喋りしてるうちに乾いちゃうよ」
「乾いたら、天然素材の物に入れるんだって」
「え?どんな?」
「お皿とか、木で出来た物とか、貝殻とか…」
「私、可愛いお皿に入れよう」
「私は…お気に入りのリモージュ」
「わー素敵!」
「私なんてキティちゃんとかそんなの考えてた」
「それも可愛いわね」
【Lapis夢が丘店】
「オーナーお疲れ様です」
「お疲れ様。本当に羊里君が来てくれて助かったよ」
「だろ、だろ?」
「アハハ。お茶ぐらいなら僕でも出来ると思ってだけど、ケーキとかは無理だもんね」
「今日は、la merから持って来たけど、明日はここで俺が仕込むか」
「羊里君にケーキの仕込みなんて心配だわ」
「麻友さん」
「麻友ぅー、俺に会いに来たのか?」
「違います。遊ちゃんが心配で、ううん、夢が丘店が気になって来てみたの」
〈羊里は麻友の腰に手を回す〉
「素直じゃないねえ。俺に会いたいならそう言えよ。俺と麻友の仲じゃないか」
「離して。あのね、私達はもうとっくに別れてるのよ。これだから来たくなかったんだわ」
はあ…麻友さんが来てくれるのは嬉しいけど、ベタベタされるのは見たくないよな。
さて、Lapis達が待ってるから帰ろう。
〈麻友はスルッと羊里の腕をすり抜けて遊の所へ。そして小声で〉
「また明日来ます」
え?
明日も来てくれるの?
【天空路家の玄関】
「ニャー(パパちゃん早く)」
「ミューミュー(早く抱っこして)」
「2人とも良い子たんちてまちたか?」
「(良い子にしてたわよ。だって私お姉ちゃんだもん)」
「ニャー(僕はちょっとだけ散らかしちゃった)」
〈遊はいつものようにLapisとrutileを抱っこしてリビングへ向かう〉
【リビング】
「うわぁ…」
〈そこには物が散乱していた〉
また2人で猛獣タイム?
随分派手にやったな。
「(パパちゃん怒るかな?)」
「元気なら良い良い。散らかすぐらい良いでしゅ。元気な子が一番良い子」
「(やっぱり怒らなかったわ。でも見てる時にやると時々怒るのよね)」
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