第四話【出会-1】
-A-
アラームの音で目が覚めた。
時刻は八時四〇分。いつも通りの出かける支度をし、家を出る。
歩道の雪は、案の定凍っていて歩きにくいから、転ばないようにゆっくりと歩いた。
喫茶店に着くと、すでに真村雪は着いていて、昨日と同じ席に座っていた。
「お待たせしてすみませんでした」
「いいえ、ぴったりですよ。私が早かっただけです」
一応彼女より遅く来たことを謝っておくと、彼女はそう言って、手をひらひらさせながら微笑んだ。
「早速だが、手袋は」
昨日彼女に彼の手袋を持ってくるように頼んだ理由は、彼のDNAを解析できるものさえあれば、現代の技術で彼のことを探すことが出来るかもしれないと思ったからであった。手袋ならば、手垢くらいは付いているだろう。
「これ、です」
彼女が鞄から取り出した手袋は、透明のジッパー袋に入っていた。
「少し、借りてもいいか」
彼女の同意を得て、持ってきていたコンピューターのセンサー上に置くと、彼のデータが出てきた。
彼女にも画面を見せながら、コンピューターを操作する。
「彼です。この、顔写真の」
彼女は画面上に並ぶ二つの顔写真のうち、男性の方を指差した。
顔写真をクリックし、データを表示させる。
「十三年前から、データが更新されていない」
「それじゃ、私は死人を見たって言うんですか」
私は、憤る彼女を
「それは、正直分かりません。ですが、見てもらっても分かるように、誕生日などの大きな出来事がなければ、データも更新されないんです」
「でも、彼の昨日の誕生日だって、更新されてないじゃないですか」
ついに泣き出してしまった彼女を見て、マスターがコーヒーを持ってこちらへ来た。
「まぁ、これでも飲んで」マスターは雪さんにコーヒーとハンカチを渡し、私に聞いた。「
初めて名前を呼ばれた事にも驚きつつ、マスターに操作盤を渡した。マスターは、いくつか記号を打ち込んだ後、私にそれを返した。
「これは――どういうことですか、マスター」
さっきより画面のデータが増えている。
「少しシステムを
「現在、雑貨屋で買い物中って、本当に今の状態を」
「行ってみたらどうだい」
マスターが微笑むと、そうしなければいけない気がして来た。
「――行きましょう、雪さん」
泣き止んだ雪さんを真っ直ぐに見て、私は言った。
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