俄雪:1【音楽と勇気】
学校の体育館の中、警報が鳴った。
世界の終わりは、案外あっさりと来るみたいだ。
生まれてまだ十数年しか経っていない僕だが、これからはこの世界では生きられないらしい。
周りの人もきっと、まだやり残したことがある人ばっかりだろうけれど、その悔いは恐らくすぐに忘れてしまう。
この世の中は、生まれては消えての繰り返しでできているのだから、きっとこの星にも僕ら以外の何かが住むことになるのだろう。それも、いつかは消えるのだろうけれど。
暗い出来事の前では、人は暗いことしか考えられないようだ。
いつもは明るい、学級委員長のあの子だって、後ろの方の積まれたマットの上で座って、学校中の男子を惚れさせた、その顔をこれでもかというほど汚して泣いてしまっている。
最初のうちは、彼女は泣いている子供を見つけては慰めていたのだが、脅威と対抗していた巨大な人型の機械がバラバラに壊されると、彼女が泣き始めてしまった。
ただ、彼女が泣いたことによって子供は泣き止んだので、これも作戦だったのかもしれない。…そんなわけはないか。
彼女の近くに行っても、多分僕には何も出来ないということは分かっていた。だから近くに行かないのかと言うと、それも違う気がするが。
彼女と付き合っていると噂されていた夏輝は、ここにはいなかったが、彼ならどうにか出来ただろうとは思った。
彼女に気づいたようで、目の前にいる女の子が音楽を流し始めた。隣の地区の学校の制服を着ているため、年齢は近いようだ。
透明なピアノの音と、力強いボーカルが不思議ととてもマッチしていた。
彼女が流し始めたその音楽は、僕に勇気を与えた。
そして…
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