ランナー

「えっ、いいんですか? こんなに」

「ああ、構わないよ。せっかくだからもらってほしい」


 私が航空機マニアだということを知って、先輩が組み立てた戦闘機や偵察機のプラモデルを十数個持ってきてくれた。

 どれをとっても、丁寧に組み立てられていて、塗装も細かなディティールまで見事に再現されていた。


「さすがに汚しは無理かな」

 と、頬を赤らめて謙遜してはいたが、ただひとつだけ汚しの入っていた零戦の二一型からは、戦地に実際に赴いたかのような雰囲気が漂っていた。


「しかし、とても綺麗ですね」

「いやあ、私なんてまだまだ…」


「このほかにもたくさん組み立ててるんですか?」


「ま、まあ、小さい頃からね。はじめは、お父さんがタイタニック号を組み立てているのを見て、私もやりたいと駄々をこねたみたいで…アニメのロボットのプラモデルを買ってもらったんだ。それをお父さんと一緒に組み立てたのが楽しかった。そのまま、今度は私が夢中になっていったんだ」


「へえ…」


「放りっぱなしだった大和を引っ張ってきて、ひとりで黙々と組み立ててたくらいだから…それからは艦艇を沢山組み立てたんだ…巡洋艦や駆逐艦も小さいながら魅力があって…同型艦がそろってくると余計に楽しくなるんだ…あっ、ごめん、君はあまり興味がないかな?」


 先輩は恥ずかしそうに微笑んだ。

 話が止まって気がついたが、私の表情がとても緩んでいた。彼女が目を輝かせているのに、見とれていた。


「いえ、それだけ楽しそうなのに、興味がないなんて、そんなことないです」


 とても愛着をもって接している。

 無機質な曲線からもにじみ出るほどに。


 ならば、お互いに好きなものの話を、


 過去に馳せる思いを、


 未来の想像を、


 飽きるまで語ろう。

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