第17話 公務員の味方?3
ココは某役所。またも窓口で揉め事が起きていた。ホント、揉め事多いねこの役所。
「だから急げって言ってるだろっ!」
「ですから、何度も申し上げてますが順番通りにしておりますのでお待…」
「俺の仕事が回らなくなったらどうすんだよ!」
男は恫喝を続ける。しかし、面と向かっては言えないが、この男は詐欺師の疑いがあるとして役所内のブラックリストに載っていた。たびたびこういう申請をし、やれ早くしろと急かすのだが、非常に疑わしい書面ばかり出しているのだ。急げというのは発覚されないうちに受理させようとするのだろう。とはいえ、全て合法ギリギリのものばかりなので、警察に突き出すには証拠が無い。
この日はさらに恫喝された職員が「そんなに大きな声を上げなくても聞こえております。しかし、急ぐことは出来かねます」と答えてしまったため、さらに火に油を注ぐ結果となっているのであった。
「俺が外国人だから差別するのかぁ!」
「え? 外国人だったんすか?」
思わず若手職員が反応するが、男には聞こえていない。
「お前の名前は覚えたぞ! 苦情出して処分してもらうからなっ!」
「そこまで言うと来ちゃいますよ?」
「上司か! 上等だ、来い!」
「いえ、アレが来ちゃいます。まあ、これ以上はコメントできかねますが知らないっすよ」
「アレってなんだよ!」
「『アレ』…それは職員が名指しできない存在、それが私」
不意に声が割り込んできた。男が振り替えると全身白タイツにサングラス、白マントを付けた男が立っていた。胸には『公』をモチーフにしたと思われるエンブレム。役所というお堅い機関においてそれは異彩を放っていた。
「私は公務員仮面!国のために働く公務員に理不尽な要求を為すものを成敗するために現れた!」
「あ、来ちゃったよ。所長~、また
「そうだね~。ここ、老朽化激しいから他のお客様は係員の誘導に従って避難してね」
所長らしき人物が言うや否や、てきぱきと別の職員が他のギャラリーを外へ避難誘導していき、恫喝男を除いていなくなっていった。
あまりの急展開に恫喝男は戸惑ったが、怯まずに公務員仮面に食って掛かる。
「なんだ、てめえ!ざけた格好に恥ずかしいネーミングセンス満載の公務員仮面ってよ!」
「見たところ、全うなオーラが皆無だな。マスコミを賑わせたあの詐欺師軍団と同じ匂いがする。その書類も恐らくは強迫して書かせたものだろう。民法96条1項により無効になるぞ、知らんのか?」
「う、うっせえ!証拠があるのかよ!」
「さらにその書類、巧妙にできているが、表面を特殊な方法で削って改ざんか。私の目は誤魔化せんぞ!」
「何で見えるんだよ! こ、この野郎!」
恫喝男が殴りかかろうとしたその時、公務員仮面はそのパンチを素早く避け、恫喝男の足をガッチリとホールドした。
「今回は紛うことなき悪人っ! よって最大限のパワーを出す! ドラゴン・スクリュー懲戒免職version!」
「うわあああ!!」
今回は体を掴み、水平に投げたため、一階の自動ドアのみがマンガのような人形に空き、恫喝男の姿は消えていた。
「所長、やりましたね、ボロ自動ドアが全壊です」
「ああ、柱を狙ってくれれば庁舎全壊だろうと見込んで客を避難させたんだけどな~」
「何言ってるんですか、あの自動ドアいつも壊れるのに会計課は新調してくれないから、『手動で開けて下さい』の貼り紙するの恥ずかしかったんですから」
若手職員と所長のひそひそ話が続く中、公務員仮面はいつものスマイルで口上を述べる。
「フッ、わかっているぞ。君たちは人事評価があるから、私への賛辞は不当に評価を下げられるという理不尽さがあることを。故に表だって称賛できないことも! だから称賛は心の中にしかと受け取った! さらばだ!」
行け!公務員仮面!次なる行政への理不尽に立ち向かうのだ!
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