第15話 新説・マッチ売りの少女

 世間はクリスマスイブ。街は華やかにきらめき、幸せそうな家族連れが歩く街並みの片隅で一人の少女が震えていました。身なりはみすぼらしく、篭にはマッチが沢山入っていましたが、誰一人買う人はいませんでした。

「ああ、ちっともマッチが売れない。どうしよう、おうちに帰れないわ」

 そっと窓から覗くとクリスマスパーティーが開かれていました。

 笑いさざめく室内、燃え盛る暖炉の炎、きらびやかなツリーに美味しそうなご馳走…全ては少女とは無縁のものでした。

 少女は座り直し、マッチの中から一つ取り出して火を付けました。せめてわずかな火でも付けてかじかんだ手を暖めたかったのです。

 火を付けるとどうでしょう、暖かな暖炉が見えるではありませんか。それはまるで少女の前にあるようでとても暖かです。でも、マッチの火が消えるとそれも消えてしまいました。

 このマッチは特別なのだ。

 そう気づいた少女は再び火を着けたら次に見えたのは湯気の立つ美味しそうなご馳走。いい匂いがこちらにまで漂ってくるようです。しかし、それもマッチの火が消えると同時に見えなくなりました。

 そうして再びマッチを付けていくと、優しかったおばあちゃんが現れました。もう亡くなっているおばあちゃん。ずっと会いたかったおばあちゃん。でも、火が消えると会えなくなってしまう、そう考えた少女は残りのマッチに火を着けたその時。

「おまわりさん、こっちです!」

 不意に遠くから声が聞こえてきました。警官がずかずかと少女に近づいてきた。

「放火の現行犯で逮捕する! ん? しかもこの匂いは…大麻入りのマッチか。大麻取締法違反も付くな」

 そうです、ただのマッチが風景を見せてくれるはずがありません。

 マッチの中に大麻が仕込まれており、その幻覚効果で幻を見ていたのでした。

 少女はそのまま牢屋に入れられましたが、とりあえず飢えと寒さはしのげたので、凍死することはありませんでした。

 ま、バッドエンド回避って意味ではめでたしめでたし。

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