第7話 メデューサ化症候群
20××年、ある病が発見されたということで理研において記者会見が開かれていた。
正確には古代にあったと思われる病が現代に復活したとのことであり、マスコミは不安感を露にして取材に挑んでいた。
「えー、この病の大きな特徴は髪の毛が全て極細の蛇に変わることであります。正確には髪の毛に神経が通り、見た目が直径三ミリから五ミリくらいの蛇となって主の意思に反した動きをするものです。我々はこれをメデューサ化症候群と名付けました。由来はもちろんギリシャ神話のメデューサから来ています。もしかすると、メデューサも神話ではなくこの病に罹患した患者だったと考えられます。質問はございますか?」
「
「どうぞ」
「ウィルス性の病なのでしょうか?それとも遺伝性のものなのでしょうか?」
「それについてはまだハッキリとは断定できません。患者はギリシャにおいて遺跡発掘に従事していたことから、何らかの理由で感染し、発病した恐れも否定できません。そして家系を調べたところ、三代前にギリシャ人がいたと判明したため、先祖帰りとウィルスの両方の路線で調査中です。なぜ現代に蘇ったのかは現時点では原因不明であります」
「その患者は今、入院中なのでしょうか?」
理研のメンバーは咳払いして、顔を上げて衝撃の発言をした。
「隔離病棟に移し、検査入院中です。なお、本人の承諾を得てWeb中継で繋がっています。直接質問するならどうぞ」
マスコミ側が一気にどよめく中、係員が大きなモニターを出し、スイッチを付けると患者が写し出された。プライバシーの保護なのか、お笑い芸人を模したお面を着用している。しかし、髪の毛は細かく動き、確かに蛇のような動きだ。モニターの隅には髪の毛の拡大映像が並行して写し出されており、毛先は蛇の頭、胴体にあたる部分は鱗状の模様が認められ、極細の蛇のようであった。
『私がメデューサ化症候群と認定された患者です』
「質問は順番にお願いします」
係員の呼び掛けが終わるか終わらないかのうちに次々と質問が投げ掛けられる。
「テレビ日本海です。その髪の毛は本当に蛇なのでしょうか?」
『便宜上、私と医師は蛇と呼んでいます。生物学的な蛇なのかは私の口からは断言できません。ただ、通常の髪の毛ではない証拠にこれから一本抜きます。スタッフさん、髪にマイクを近づけてください』
そう言うと男は髪の毛を一本抜いた瞬間、蛇……髪の毛が叫び声を上げた。男のつまんだ指先でそれはじたばたと動き、やがてぐったりと動かなくなった。
モニターを目の当たりにした会場はさらにどよめく。
『ご覧の通り、髪の毛が意思を持っていますし、抜くと悲鳴を上げます。おかげで髪を洗う時は大変です』
「旭ヶ丘新聞です。その…、髪の毛を洗う時はどうされてるのですか?」
『はい、ぬるめのお湯で力を加減して洗っています。しかし、シャンプーが苦いと蛇達から苦情がくるので、合図をして洗う間は目と口を閉じてもらっています』
「ちょ、ちょっと待ってください。蛇…髪の毛がしゃべるのですか?!」
『はい。先ほど見せたように悲鳴をあげますし、私とは違う意思を持っているので。各自しゃべることもあれば一斉に発声することもあります』
何もかもが想定外の答えにマスコミはますますざわついた。しかし、伝説のメデューサはもうひとつの大きな特徴がある。誰もが気になった質問がついにあがった。
「雑誌『医療ラボメディカル』と申します。伝説のメデューサは見たものを石にするとありますが、あなたの目撃者も石になるのですか? いや、それならば私達も既に石にならないとおかしいですね」
その時、蛇達が一斉に声を合わせた。
『『『オーストリアの酔っぱらいやりまーす!うぃ~~ん!!』』』
次の瞬間、会場のマスコミ達が
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